少額から始める賢い不動産投資とは?

不動産投資にも少額から始められる方法もあります。この記事では、不動産投資クラウドファンディングやREIT(不動産投資信託)、小口不動産投資、ソーシャルレンディングなどについて解説します。

そして、従来の不動産投資との違いや少額投資の魅力やリスク、損をしないための注意点についても見ていきます。不動産投資に興味がある人には、不動産投資を始めるきっかけとなるでしょう。

この記事の監修者

織瀬ゆり

不動産のプロ

元信託銀行員。AFP・2級FP技能士をはじめ、複数の金融・不動産資格を所持。 それらの知識をもとに、「初心者にもわかりやすい執筆」を心がけている。 2児の子育て中でもあり、子育て世帯向けの資産形成、女性向けのライフプラン記事を得意とする。
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少額から始められる不動産投資の種類は?

不動産投資は、まとまったお金が必要と思われがちですが、少額から始められる方法もあります。自己資金が少ない人や、運用の手間を省きたい人にとって、少額の不動産投資は選択肢のひとつになるでしょう。ここからは、少額で始める不動産投資の種類とそのメリットについて解説します​。

不動産投資クラウドファンディング

不動産クラウドファンディングとは、インターネット上で投資家たちが資金を出し合って、その資金で不動産を購入し、そして賃貸収入や売却益を分配する仕組みです。比較的少ない資金で投資できるので、個人で直接物件を購入しなくても不動産投資ができるという特徴があります。

従来の不動産投資では、最初の段階でまとまった資金が必要でしたが、この不動産投資クラウドファンディングを利用すれば、一般投資家も不動産市場に参入しやすくなるのです。

たとえば、オンラインプラットフォームを介すると、投資家は数千円の資金で物件への投資を始められ、その物件から得られる家賃収入などの収益の一部を受け取れます。アパートの改修プロジェクトや、新しいオフィスビルの建設プロジェクトに少額で投資する方法もあります。

不動産投資クラウドファンディングは、不動産投資を幅広く展開できるメリットがありますが、一方で注意点もあります。プラットフォームの信用やプロジェクトの選定、流動性などに注意しなければなりません。案件によっては応募が殺到してしまい、投資自体を受け付けてもらえないケースもあるので、事前に注意点を把握し、適切な対応をすることが大切です。

REIT

REIT(リート、Real Estate Investment Trust)とは、数万円程度の少額から投資できる不動産投資信託です。不動産投資会社が出資者から集めた資金で収益物件を運用し、家賃収入や売却益を出資者に分配します。物件の運用やリスク管理を専門家に任せられるため、出資者は運用の手間がかかりません​。

REITは、複数の不動産に分散投資やポートフォリオの構築を行います。そして、その売買は株式同様、証券会社の口座から取り引きが可能です。REITは高い利回りで配当されるため収益源になる場合もあるでしょう。

たとえば、商業用不動産に特化したREITに投資することで、ショッピングモールやオフィスビルの賃貸収入を原資とした配当を受け取ることができます。住宅用REITに関しては、マンションやアパートの賃貸経営によって家賃収入をもたらします。これらのREITは、出資者が不動産の管理や維持に携わることなく、利益を受けられる仕組みとなっています。

ただし、REITは不動産市場の変動の影響を受けやすいため、市場の低迷期にはその価値も減少します。また、REITは特定のセクター(=種別)に投資しているため、その影響を大きく受けることがあります。たとえば小売セクターに特化したREITであれば、オンラインショッピングの台頭によって価値が下がる可能性もあるでしょう。そのため、投資家は市場の動向を慎重に確認し、適切なリスク管理しなくてはなりません。

REITについては以下の記事で詳しく解説をしています。

REITってどんな商品?REITに投資する前に知っておきたいこと

2023.11.16

小口不動産投資

小口不動産投資とは、大規模の物件の所有権を分割し、複数の投資家が投資する方法です。それぞれが少額で出資し、持分の所有権を得ます。分散投資ができ、直接物件を保有することで利益を得られることもできますが、管理の手間や実物の不動産を持つリスクを考えなければなりません。

。ただし、小口不動産投資は特定の不動産プロジェクトや開発を対象としているため、そのプロジェクトの成功に大きく依存し、市場の変動や経済の不確実な動きに左右されやすい面もあります。

投資家は新しい住宅開発プロジェクトや商業施設のリノベーションに、数十万円程度から投資できます。このような投資はプロジェクトの収益を原資とした配当を出しますが、プロジェクトに予想外の問題が生じた場合に、想定していた配当を得られなリスクも潜んでいます。たとえば、建築コストの上昇や賃貸市場の低迷は、収益に大きな影響を与えるでしょう。

投資家はプロジェクトの選定を慎重に行い、プラットフォームの信頼性を保つとともに市場動向を把握しなくてはなりません。分散投資を行い、綿密なリサーチをしながら投資すれば、リスクの管理ができるでしょう。

小口不動産投資については以下の記事で詳しく解説をしています。

小口不動産投資とは?他の投資との違いやメリット・デメリットを解説

2023.11.30

ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングとは、インターネットなどを通じて複数の投資家から資金を集め、それを不動産開発などのプロジェクトに貸し付ける仕組みです。従来の伝統的な銀行の仕組みとは異なり、個人間の直接的な融資のプラットフォームを提供します。投資家は、貸し付けた資金から利息を得られます。とができます。少額で不動産投資に参加できることと、物件の運用に直接携わることがないのが特徴です。

ソーシャルレンディングでは、銀行を介せず個人投資家とつながるので、投資家には銀行預金よりも大きい収益をもたらし、借り手には低い金利で資金を提供できます。特に銀行から融資を受けにくい個人や中小企業にとっては、新たな資金調達の機会となるのです。

たとえば、小規模の企業が事業を拡大するための資金を必要としている場合に、ソーシャルレンディングのプラットフォームを利用すれば、個人投資家から小口資金を集めることができます。企業の成長に伴い、出資した個人投資家は一定の利率で利息収入を定期的に得られることができるでしょう。社会的なプロジェクトや環境に配慮した事業を展開する場合、特定のコンセプトに基づく融資が行われることもあります。

また、ソーシャルレンディングは借り手が返済不能になるリスクがあり、投資家は損失を被ることもあるため、信用リスクの管理が欠かせません。さらに、プロジェクトを綿密に調査し、自分の合った適切な融資先を選ぶことも大切です。 

従来の不動産投資とは?

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従来の不動産投資にも多くの魅力がありますが、重大なリスクも伴います。ここで従来の不動産投資の主な特徴について解説しましょう。

まとまった資金が必要で、運用期間が長くなるケースが多い

不動産投資のデメリットのひとつとして、初期投資が高額であることが挙げられます。また、賃料収入による初期投資を回収するまでには、一般的に長い時間がかかります。他にも市場の状況や変動次第で、資金を回収するのに、より多くの時間が要する可能性があり、不動産投資の収益性に悪影響を及ぼすでしょう。

リスクが大きい

不動産市場は予測不可な要素に左右されやすく、そこから生じる不動産価格の変動は投資家にリスクをもたらします。たとえば、経済の悪化や自然災害、地域の人口減少などによって、不動産価格が大幅に下落することがあります。また、物件に欠陥が見つかった場合や、予定外のメンテナンスが必要になった場合は、追加費用が発生するリスクもあります。

不動産投資のリスクについては以下の記事で詳しく解説をしています。

不動産投資で生じる5大リスクとは?リスクを下げる手法を徹底解説

2022.02.17

出口戦略が見えにくい

不動産は流動性が低いため、売却を急ぐ場合には市場価値を下回る価格で売却することになる可能性が高い可能性があります。また、市場が低迷しているときには、物件を希望する価格で売却することが難しいでしょう。そのため、計画よりもはるかに長い期間、不動産を保有するケースがあり、それによって収益が損なわれる場合もあるでしょう。さらに、大規模の投資物件の場合は、買い手を見つけること自体が難しい場合もあります。

これらのリスクを踏まえたうえで、不動産投資は慎重に検討し、できる限りリスクを抑えることを考えていきましょう。

 少額での不動産投資をおすすめする理由

不動産のこれまでのイメージを変える、少額で始めやすい不動産投資の魅力を解説します。

リスクを最小限に抑えて不動産投資を始められる

従来の不動産投資と比べると、少額の不動産投資ではリスクを大幅に減らせます。多くの資金を投じる必要がないため、損失が発生した場合でもロスを抑えられるといわれています。少額から不動産投資を始めることで、不動産市場の動向や不動産経営を学びつつ、少しずつ投資額を増やせるでしょう。

赤字が出ても節税効果が出る場合がある

不動産投資では、赤字が出たとしても他の所得から赤字分を控除できるケースがあります。これを損益通算といい、たとえば給与所得や事業所得の黒字などから不動産所得の赤字を控除し、税の負担を軽減できます。また、物件の減価償却費などを経費(損金)として計上すると課税所得が減るため、節税効果がより高まるでしょう。

副収入を期待できる

少額の不動産投資でも賃料収入という形で毎月副収入を得られるため、安定した収益源となるでしょう。また、不動産価値の上昇による「キャピタルゲイン(=保有する資産を売却で得られる売買差益)」を期待できます。

管理の手間が少ないケースが多い

小規模の物件や共同投資などの形態を選ぶと、物件管理の手間が少なくなります。そのため、本業などで忙しい人でも不動産投資を行うことができます。

リスクを抑えられる

少額での不動産投資は、不動産市場が不安定になってもリスクを抑えられるといわれています。まとまった資金を投じることなく、不動産市場に参入できるため、損失が生じたとしても影響少ないでしょう。特に初心者にとっては、少額で不動産投資をやってみることは、リスクを抑えながら不動産市場の仕組みを学べる機会となるでしょう。

投資の多様性が高まる

投資の多様性も少額で行う不動産投資のおすすめのポイントです。なぜなら、複数の物件やプロジェクトに分散投資を行うことで、リスクを分散できるからです。

たとえば、特定の地域の不動産価格が下落した場合でも、ポートフォリオ全体への影響を最小限に抑えられます。

学習の機会を得られる

実際の少額不動産投資で経験を積むことは、仮に失敗しても損失が少ないといわれているため、次の投資にチャレンジしやすく、有益な学習の機会が得られるでしょう。

資金の流動性が高まる

投資額が少ない不動産投資は、手元の資金に余裕ができるといわれています。そのため、急に資金が必要になっても、迅速に対応でき,

柔軟な資金管理につながるでしょう。

追加投資が容易になる

追加投資があった場合でも、少額で不動産投資をしていれば、段階的に追加で投資ができるでしょう。たとえば、不動産市場のトレンドに応じた追加投資も可能です。

手軽な投資機会を得られる

不動産投資信託(REIT)や不動産クラウドファンディングプラットフォームを利用すれば、簡単に多様な不動産投資を行えます。たとえば、物理的な物件を所有することなく、不動産市場の成長に連動した収益を受け取れるでしょう。

少額での不動産投資をおすすめしないと言われる理由とは?

不動産投資は魅力的な資産形成の手段ですが、少額で行う際には注意が必要です。リスクを抑えながら不動産市場に参入できる手段に見えますが、少額での不動産投資にはいくつかのデメリットがあります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

投資先が限られる

少額での不動産投資における最大のデメリットは、投資先が限られることです。少額投資の場合は、市場に出ている物件の中から選べるものが必然的に少なくなります。そのため、良質の物件や利益率が高い物件を見つけるのが困難になることがあります。また、地理的な制約も受けやすくなるため、投資先の多様性が損なわれることもあるでしょう。多様性が失われると自然災害といった地域特有のリスクに弱くなり、投資資産全体のリスクが高まることにつながります。

手数料が高くつく

少額での不動産投資は、従来の不動産投資に比べて手数料が高くつく傾向があります。不動産取引ではさまざまな手数料が発生しますが、投資額が少ないと利益に対する手数料の割合が高くなるからです。たとえば仲介手数料や登記費用、修繕費などは投資額に関わらず金額が一定であるケースが多いため、少額投資の場合はこれらが利益率を大きく下げる原因となります。また、不動産投資では想定外の出費が生じることも多く、少額投資の場合はその影響が大きくなります。

価値の増加が限定的

少額での不動産投資では、必然的に価値の増加が限られます。投資額が小さいため、まとまった資金を投じた場合に比べると価値の増加が小さくなるからです。物件の価値が上がったとしても投資額が少ないため、得られる利益額は限定的です。このように、少額での不動産投資の収益額は、従来の不動産投資よりも小さくなります。

これらのデメリットがあるため、「少額での不動産投資はやめておけ」と言われることがあります。少ない資本で始められるというメリットがある一方で、リスクや手数料の割合が高くなるといったデメリットがあることも理解しなければなりません。

少額不動産投資で損しないための注意点

不動産投資を少額で投資するメリットもありますが、損をしないためのの注意点を押さえておく必要があります。それぞれについて見ていきましょう。

市場調査を徹底する

不動産市場は、地域によって大きく異なります。優良な投資先を見極めるためには、地域の経済状況や物件価格の動向、賃貸市場の需要など、色々な角度からな市場調査が必要です。少額での不動産投資では投資できる物件が限られるため、市場調査を必ず行うことが大切です。

隠れたコストを見積もる

将来発生する可能性がある修繕費用や空室リスクなど、隠れたコストも見積もることも忘れてはなりません。少額での不動産投資において、これらのコストが収益によって与えるインパクトが大きいので、コスト管理を徹底しましょう。

継続的なキャッシュフローを確認する

不動産投資において資産価値の上昇だけでなく、キャッシュフローが継続的に発生するかどうかも確認しておきましょう。

投資策に多様性を持たせる

少額での不動産投資に着手する場合、複数の投資先を考えておくと、物件固有のリスクを分散することができます。

長期的な視野を持つ

不動産投資は、短期的な利益を期待できるものではありません。特に少額から始める不動産投資の場合は、得た収益を別の投資先に投じる場面もあるため、長期的な視野を持って、資産を増やしていくスタンスで構えておくと良いでしょう。

専門家の意見を参考にする

不動産投資は必ずしも簡単に儲かるものではありません。そのため、自身の知識や経験を過信せず、できるだけ多くの専門家の意見に耳を傾けて、客観的な情報に基づいた適切な判断をしてから動きましょう。

不動産投資はまず少額から始めよう

少額から始められる不動産投資の選択肢として、不動産投資クラウドファンディングやREIT、小口不動産投資、ソーシャルレンディングがありあります。それぞれ独自のメリットと特徴があり、初めの段階でまとまった資金を必要とする従来の不動産投資とは異なる仕組みとなっています。

また、これらの投資は初心者が低リスクで不動産投資を始めることができ、管理の手間を省きながら副収入を得られるチャンスを提供します。一方で投資の選択肢が限られることや、比較的高い手数料がかかることなど、いくつかの考慮点もあります。

少額不動産投資を始める際は、自身の財務状況や目標に合った手法を選ぶことが大切です。リスクを分散させることが、少額での不動産投資で成功するためのカギとなることでしょう。

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この記事を書いた人

笠 崇司

投資歴20年超の兼業トレーダー。財務・不動産系コンサルティング会社、生命保険会社を経て、現在は小売業のWebマーケティング業務に従事。金融・投資・不動産・保険・節税・副業・Webマーケティング・アフィリエイトなど、幅広い知識と経験があります。 ■保有資格 ・日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト(CMTA) ・証券外務員一種 ・日商簿記検定2級 ・生命保険外交員(生命保険協会 一般課程試験合格) ・ライフコンサルタント(生命保険協会 専門課程試験合格)

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