FXの自動売買とは、設定したルールに従ってシステムが自動で売買を繰り返す取引方法です。
一定のルールに従って取引を継続するため、安定して長期的な運用が可能で、FXの取引が初めての人も始めやすいといえます。
ただし、自動売買はシステムを稼働させたら放置して良いわけではありません。
運用上の注意点もありますので、取引を開始する前にしっかり確認しておきましょう。
FXの自動売買とは
システムを利用して取引するので、システムトレード(シストレ)とも呼ばれます。
一方、システムに任せず自分で取引を行うことを裁量取引といいます。
自分ですべての取引を行うため自由度は高いのですが、値動きを見て的確な取引を継続するための知識、経験、技術、メンタルが必要です。
自動売買はルールにしたがってシステムが取引を繰り返すので、相場を見なくてもチャンスを逃さず取引ができます。自動売買の大きな利点といえるでしょう。
自動売買の種類によって、「売買ルールを自分で決めてシステムを構築するもの」「あらかじめ構築されたシステムを選択するだけのもの」「取引プラットフォームにEAというシステムをインストールして取引するもの」などがあります。
次に、それぞれの自動売買の種類について詳しく解説します。一つずつ確認していきましょう。
FXの自動売買の種類
FXの自動売買の種類は、主に以下の3種類です。
- 設定型
- 選択型
- インストール型(EA)
それぞれ解説します。
設定型
設定型の自動売買は、自分で取引システムのルールを設定して取引を開始します。
設定するべきルールは、おおむね以下の通りです。
- 投資金額…取引口座資金のうち、自動売買で使用する投資金額
- 注文数量…一度の取引で注文する数量
- 通貨ペア…取引する通貨ペア
- 売買方向…買いか売りか
- 利確幅…利益を確定する値幅
- 損切り幅…損失を確定する値幅
- 想定変動幅…想定する価格の変動幅
(設定した変動幅の中で取引を繰り返すことになる)
少々大ざっぱですが、上記のような設定を自分で行うのが設定型の自動売買です。
自動売買を提供しているFX業者によっては、トレンド転換を一定のルール内で察知し、自動で売買方向を変更したり、トレンドを追従するか一定のレンジ内で売買を繰り返すか指示ができたりするものもあります。
選択型
選択型のFXの自動売買では、あらかじめ自動売買の取引ルールが設定された「ストラテジー」を選択するだけで、取引を開始できます。
自分で取引ルールを設定しなければいけない設定型に比べて手間が省けますし、簡単に自動売買を始められるという点で、比較的初心者向けといえるでしょう。
ストラテジーの選択は、パフォーマンスランキングや通貨ペア、売買方向、おすすめなど、タイプに絞って検索ができます。
自動売買を提供しているFX業者の取引ページから、さまざまなストラテジーを検索してみましょう。
インストール型(EA)
自分で作ったストラテジーを、取引プラットフォームにインストールして稼働させるタイプの自動売買です。
EAとはエキスパートアドバイザーの略で、作成したストラテジーのことを指します。
自分でストラテジーを作成するので、自作型・開発型とも呼ばれます。
ストラテジーを作成するのは、専門のプログラミング知識が必要だったり、専門業者に依頼したりする必要があるため、初めて自動売買に取り組む方にはハードルが高いかもしれません。
FX業者によってはEAを無料配布している業者もありますので、EAによる自動売買に興味がある方は、EAを配布している業者で口座開設すると良いでしょう。
また現在日本国内で利用されるEAのほとんどは、MT4にインストールして利用します。
その歴史や開発が繰り返されてきた経緯から、多くのEAが世界中のトレーダー、プログラマーによって開発され、公開されています。
FXの自動売買のメリット4つ
自動売買のメリットはすでにいくつか伝えましたが、あらためてまとめますので確認しておきましょう。
FXの自動売買のメリットは、以下の4つです。
- 難しいテクニカル分析が不要
- 落ち着いて相場を見られなくても取引できる
- パフォーマンスの良い自動売買を選択できる
- 常に一定のルールで取引を継続できる
それぞれ解説します。
①難しいテクニカル分析が不要
自動売買では、設定したシステムに従って取引を行うので、裁量取引のような難しいテクニカル分析は不要です。
特にFXの取引を始めたばかりで、テクニカル分析の知識や経験が浅い方は、自動売買から取引を始めるという方法もあります。
選択型の自動売買で取引を開始し、相場の動きと合わせて観察・検証していくことで、パフォーマンスの上がりやすい取引につながる材料が見つかるでしょう。
②落ち着いて相場を見られなくても取引できる
自動売買は、相場を見ていなくてもシステムが自動で取引を繰り返してくれます。
相場に張りついて観察し続ける必要はありません。
システムによっては、トレンド転換を察知するものや一定のレンジ内での取引を得意とするもの、継続するトレンドでの取引が得意なものなどさまざまな特徴があります。
自分の気に入ったシステムを利用しましょう。
③パフォーマンスの良い自動売買を選択できる
自動売買を提供しているFX業者の多くは、運用成績ランキングを掲示しています。
相場に合わせてパフォーマンスの良いシステムを選択することで、自身の運用成績を向上させることも可能です。
また選択型の自動売買の設定をアレンジして、設定型のシステムを作成もできます。
選択型の良い部分のみ真似て、相場に合わせてアレンジできるため、パフォーマンスの良い選択型自動売買を組み合わせたオリジナルのシステムも作成可能です。
④常に一定のルールで取引を継続できる
FXの取引は、一定のルールで取引を行うことが重要ですが、これは非常に難しいことです。
保有したポジションに利益が乗ると、すぐに利確したくなったり、さらに利益が欲しいと考えて保有した結果、損失になったりすることが頻繁に起こります。
為替の価格はさまざまな需要によって変動する上に、損失を招く恐怖や利益を求める欲が生まれ、自身で定めたルールを守ることが非常に難しいのです。
自動売買であれば、一定のルールで取引を自動的に繰り返すため、トレーダーのメンタルに左右されることはありません。
常に一定のルールに従って取引を継続できます。
FXの自動売買のデメリット3つ
FXの自動売買のデメリットは以下の3つです。
- 手数料がかかる
- スワップポイントが小さい
- 設定の調整が必要
それぞれ解説します。
①手数料がかかる
自動売買取引では、手数料がかかるケースがあります。
通常のFXの取引では、多くの業者が手数料を無料としていて、最初から設定されている買値と売値の差である「スプレッド」が実質的な手数料です。
自動売買の場合、手数料がかかる上に、裁量取引よりもスプレッドが大きいケースもありますので、必ず確認しておきましょう。
②スワップポイントが小さい
すべての業者ではありませんが、裁量取引に比べて自動売買のスワップポイントを小さく設定している業者もあります。
一方マイナススワップは大きくなっているケースもありますので、長期的なポジションの保有を前提に自動売買取引を行う際は、スワップポイントも必ず確認しておきましょう。
注文数が大きくなり、保有期間が長くなるほど、スワップポイントが収支に与える影響は大きくなります。
③設定の調整が必要
FXの自動売買は、難しいテクニカル分析が不要で初心者でも始めやすい点がメリットですが、システムを稼働させたあとは、放置して良いわけではありません。
一定のルールを設定したシステムが、現在の相場に合っているのか、運用成績を確認しながら調整する必要があります。
設定した取引値幅を超えて相場が動き始めたら、設定を変更したりシステム自体を入れ替えたりするべきです。
そのためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
FXの自動売買がおすすめな人
FXの自動売買は、これからFXの取引を始める人におすすめです。
難しいプログラミングやテクニカル分析知識、経験が必要ないため、裁量取引よりも手軽に始めやすいからです。
また、仕事が忙しい社会人の方や、子育てで相場を見る時間が取れない主婦の方など、時間を確保することが難しい方にもおすすめです。
FXの取引を行っていると、損失が出る恐怖や利益を求める欲を抱くことがあります。
常に落ち着いて相場を観察し、適切な取引を継続するというのは難しく、結果的に大きな損失を招くケースは少なくありません。
FXをやりたいけど取引が怖い方や、どうしても利益を欲しがってしまって落ち着いて取引できないという方も、FXの取引に慣れるまで、自動売買で多くの取引や金額の変動を経験しておくのも良いでしょう。
FXの自動売買をおすすめできない人
自動売買は、裁量取引に比べて自由度が低いです。
自分のタイミングで取引したい方には、自動売買はおすすめできません。
また自動売買の場合、資金量に対して一度の注文数量が小さくなる傾向があります。
利益が出るとしても少額なので、長期的なトレードが必要になり、爆発力はありません。
少額の資金から短期間で大きな利益を得たいと考えている人にも、自動売買はおすすめできません。
FXの自動売買で注意する点
FXの自動売買は、初心者や忙しい人でもトレードができるのがメリットですが、気を付けなければいけないこともあります。
自動売買による取引を始める前に、思わぬトラブルを招かないために、あらかじめ注意点を確認しておきましょう。
システムのメンテナンスは定期的に行う
FXの自動売買で最も注意しなければいけない点は、システムのメンテナンスです。
最初のシステム選択、設定の時点でも同様ですが、必ず相場状況に合わせたシステムを稼働させましょう。
また最初に設定したシステムが思い通りに稼働し、良いパフォーマンスだとしても、相場の状況は常に変化しますので、定期的な運用の見直しが必要です。
相場の状況を判断するために、レンジ、上昇トレンド、下降トレンドの区別はつけられるようにしておきましょう。
レンジとは、一定値幅をいったり来たりする相場状況のことです。

出典:OANDA Japan
レンジでは、価格が上がれば売り、下がれば買うような一定値幅の中で売り買いを繰り返すシステムが好成績をあげやすいと考えられます。
上昇トレンドは、高値安値を切り上げて、価格が継続して上昇していく相場状況です。

出典:OANDA Japan
また下降トレンドは高値安値を切り下げて、価格が継続して下降する相場状況です。

出典:OANDA Japan
このようにトレンドが出ている相場では、トレンドに追従してポジションを保有しつつ買い増す、もしくは売り増すシステムが利益を最大化しやすいです。
もしレンジに強いシステムを稼働させているときに上昇トレンドが発生した場合、システムは価格が上がれば売ってしまうので、機会損失になります。
そのようなことにならないために、常に相場状況と運用成績をチェックし、稼働させているシステムを相場状況に合わせるためのメンテナンスが必要なのです。
自動売買の詐欺に注意
自動売買を商品にした詐欺事件が発生しています。
特に自動売買を稼働させるために、海外FX口座の開設を求めるものには注意しましょう。
また初期投資として多額の費用を求めるものや、極端な高勝率の誇大広告も要注意です。
入金したけど出金できないなどの被害報告も挙げられています。取引を行う前に金融商品取引法にもとづく登録を受けている業者か、金融庁のHPで確認しましょう。
手数料やスワップポイントも要確認
自動売買取引と裁量取引では取引手数料が異なる業者があります。自動売買では手数料が上乗せされたり、スプレッドに含まれたりします。
またスワップポイントも裁量取引の設定と異なることがあります。
スプレッド、手数料、スワップポイントは一度の取引では大きな数字ではないと感じるかもしれませんが、取引回数と取引数量が増え、取引期間が長くなれば、収支を圧迫するほどの負担となります。
収支の管理はトレーダーにとって非常に重要ですから、必ず取引前に確認しておきましょう。
初心者でも簡単!FXの自動売買ができるおすすめのFX業者3選
ここでは、初心者でも比較的簡単にFXの自動売買ができる、FX業者を3つ紹介します。
外為オンライン「iサイクル2取引」
外為オンラインの「iサイクル2取引」は、システムがトレンドの発生やトレンドの転換を察知し、売買方向を自動で変更してくれる自動売買です。

出典:外為オンライン
システム稼働前に設定した変動幅で、相場の上昇または下落に合わせて追従していくので、レンジ相場からトレンド相場への転換も対応できます。
システムは一部設定型ですが、売買方向、通貨ペアなどを簡単に選択できる仕様になっているため、自動売買に初めて取り組む方でもすぐに取引を開始できます。
システムの選択方法は「ランキング方式」「マトリクス方式」「ボラティリティ方式」の3種類です。

出典:外為オンライン
トレンドの転換を察知する指標などの変更もできるので、利用に慣れてきたら相場に合わせてアレンジしましょう。
多いとはいっても、売買方向、過去の価格変動幅、対象資産(投資金額)の3つです。設定に悩む方は、他のシステムの設定を真似ても良いでしょう。
売買方向の設定で、「トレンドで切り替える」を選択すると、トレンド転換を察知する指標を選択し、選択したルールに従って、トレンド転換を捉える取引が可能です。
外為オンラインの自動売買は、1,000通貨の取引につき20円の取引手数料がかかります。
新規手数料と決済手数料が発生するため、往復取引にかかる取引手数料は40円です。
取引手数料は、新規注文が成立するごとに新規手数料と決済手数料を合わせて、口座資産から差し引かれます。
なお外為オンラインでは、2021年12月6日現在、新規口座開設完了日から90日間、iサイクル2取引・サイクル2取引の手数料を無料にするキャンペーンを行っています。
外為オンラインのスプレッドは以下の通りです。
通貨ペア | スプレッド |
---|---|
米ドル/円 | 0.9銭 |
ユーロ/円 | 1.9銭 |
ポンド/円 | 3.4銭 |
豪ドル/円 | 3.2銭 |
ポンド/米ドル | 2.8pips |
ユーロ/米ドル | 1.4pips |
豪ドル/米ドル | 2.6pips |
※2021/12/06時点
インヴァスト証券「シストレ24」「トライオートFX」

出典:インヴァスト証券
インヴァスト証券は、選択型自動売買の「シストレ24」と設定型自動売買の「トライオートFX」を提供していますが、「シストレ24」は2021年3月11日をもってサービスの提供を停止すると発表されています。
ただ「トライオートFX」にも初心者向けの選択型自動売買機能が備えられていますので、選択型で取引をする方も安心して開始できます。
「トライオートFX」の最大の特徴は、上級者向けの「ビルダー機能」です。
難しいプログラミング知識がなくても、レンジ幅の設定・エントリー価格・数量・利確幅・損切幅など、細かな設定が可能で、自分だけのシステムを構築し、自動売買取引ができます。
作成したシステムはシミュレーションでパフォーマンスを確認してから本番の運用ができるので、納得がいくまで設定をカスタマイズできます。
また複数のシステムを組み合わせたポートフォリオを組んで運用できるため、工夫次第でリスクヘッジしながら安定的な運用を目指したり、リスクを負って高いパフォーマンスを目指したり、自分の運用目的に合わせた取引が可能です。
トライオートFXでかかる取引手数料は以下の通りです。取引数量に応じて手数料が異なります。
1回の取引数量が多くなるほど、手数料が割安になります。
取引数量 | 新規 | 決済 | 1,000通貨あたり |
---|---|---|---|
1万通貨未満 | 2.0pips | 2.0pips | 片道20円(対外貨は0.2外貨) |
1万通貨以上10万通貨未満 | 1.0pips | 1.0pips | 片道10円(対外貨は0.1外貨) |
10万通貨以上50万通貨未満 | 0.5pips | 0.5pips | 片道5円(対外貨は0.05外貨) |
50万通貨以上 |
※2021/12/06時点
なお取引の成立時に上記の手数料が含まれるので、手数料として別途徴収されることはありません。
スプレッドは以下の通りです。
通貨ペア | スプレッド |
---|---|
米ドル/円 | 0.3銭 |
ユーロ/円 | 0.5銭 |
ポンド/円 | 1.0銭 |
豪ドル/円 | 0.6銭 |
ポンド/米ドル | 1.4pips |
ユーロ/米ドル | 0.3pips |
豪ドル/米ドル | 1.4pips |
(対象期間:2021年11月1日~2021年11月26日)
取引手数料を加味しても、自動売買としては最低水準の取引コストといえます。取引コストを極力抑えたいトレーダーにおすすめです。
OANDA Japan「MT4」

出典:OANDA Japan
OANDA Japanは、MT4を利用した自動売買システムEA(エキスパートアドバイザー)が利用できるFX業者です。
口座開設をすると、OANDA Japan公式サイトで配布されているEAをダウンロードできるので、これをMT4にインストールして稼働させれば、取引ができます。
日本国内では、MT4を利用できるFX業者が限られているため、OANDA Japanの存在は貴重です。
OANDA Japanでは、MT4が利用できるほか、エデュケーションやOANDA Labなど公式サイトで非常に有益な情報を提供しています。
口座開設をしなくても一部を利用できるので、一度利用してみても良いでしょう。
MT4にEAをインストールして稼働させる方法も詳しく解説されています。
なお、OANDA Japanのベーシックコースでは、自動売買が利用できません。
自動売買の利用を希望される方は、「プロコース」もしくは「OANDA Japan FX(東京サーバー)」を利用しましょう。
「プロコース」「OANDA Japan FX(東京サーバー)」のスプレッドは以下の通りです。取引手数料はいずれのコースも無料です。
通貨ペア | プロコース | OANDA Japan FX(東京サーバー) |
---|---|---|
米ドル/円 | 0.8銭 | 0.3銭~0.4銭 |
ユーロ/円 | 1.3銭 | 0.5銭 |
ポンド/円 | 2.8銭 | 0.9銭~1.2銭 |
豪ドル/円 | 1.6銭 | 0.6銭~0.7銭 |
ポンド/米ドル | 1.3pips | 0.8 pips~1.1pips |
ユーロ/米ドル | 0.8pips | 0.5pips |
豪ドル/米ドル | 1.4pips | 0.9pips |
※2021/12/06時点
プロコースは、一度に取引できる最大注文数量が300万通貨、OANDA Japan FX(東京サーバー)で一度に取引できる最大注文数量は50~100万通貨です。
大口取引を希望している人はプロコースでも良いのですが、スプレッドが大きいので最初はOANDA Japan FX(東京サーバー)から始めることをおすすめします。