移動平均線は、FXのテクニカル分析で、最もポピュラーなテクニカル指標の一つです。
非常に基本的なテクニカル指標ですが、その利用方法は多岐に渡り、利用方法次第では非常に有効なツールとなります。
今回は、移動平均線の種類や、移動平均線を利用したテクニカル分析、取引手法の実践について、詳しく解説します。
ぜひ一緒に、実際にチャート画面に移動平均線を表示させながら、確認していきましょう。
移動平均線とは
ある一定期間の価格を平均して線で結んだテクニカル指標で、相場状況が上昇トレンドなら右肩上がり、下降トレンドなら右肩下がり、トレンドレスなら横ばいになります。
トレンドの発生や終息を示唆するトレンド系のテクニカル指標です。
単純移動平均線(SMA)と指数平滑移動平均線(EMA)
移動平均線には、単純に一定期間の価格を平均した「単純移動平均線」と、現在と近い価格を重視して平均した「指数平滑移動平均線」があります。
それぞれ英語で「Simple Moving Average」、「Exponential Moving Average」となります。
それを略した「SMA」「EMA」という表記は、国内でも使用されていますので、覚えておくと良いでしょう。
「単純移動平均線」の方が値動きに対してゆったりと、「指数平滑移動平均線」の方が値動きに対して敏感に反応するのが特徴です。
移動平均線の設定期間
移動平均線の設定期間は任意で変更できます。
設定期間を短くすれば値動きに対して敏感に反応し、設定期間を長くすれば値動きに対してゆっくりと反応します。
短期、中期、長期の移動平均線を一つのチャートに表示させ、長期の移動平均線で長期的なトレンドを、短期的な移動平均線で短期的な値動きの初動を捉える活用方法が広く知られています。

出典:auじぶん銀行
短期、中期、長期の設定期間について、明確な定義はありません。取引ツールの初期設定で使う方もいますし、100や200といったキリの良い設定数値で使う方もいます。
またさまざまな時間足設定でテクニカル分析を行う際、時間足と移動平均線の設定値の関係性を覚えておくと良いでしょう。
ですから、5分足の10期間移動平均線を1分足に表示させたい場合、1分足チャートで50期間移動平均線を表示させれば良いのです。
このようにして、複数の時間足チャートと複数の移動平均線を表示させ、複合的な分析を行うのがテクニカル分析の基本となります。
それではここから、実践的な複数の移動平均線による分析手法を紹介します。
移動平均線を利用したテクニカル分析の解説
デッドクロス・ゴールデンクロス
複数の移動平均線を利用した分析手法の中で、最も広く知られているものの一つです。
設定期間の異なる移動平均線を2本使い、トレンド転換を捉えます。
上昇トレンド継続後、上向きの長期移動平均線を短期移動平均線がクロスし、下抜けたら下降トレンドに転換するシグナルです。
これをデッドクロス(DC)といいます。
青色の長期移動平均線は、長期的な値動きを反映しているため、価格が下がり始めても上向きのままです。
一方赤色の短期移動平均線は値動きに敏感に反応し、価格の下落に追従して下がり始めています。
この動きによって、短期的なトレンドの転換を捉える取引が可能です。
逆に、下降トレンド継続後、下向きの長期移動平均線を短期移動平均線がクロスし、上抜けたら上昇トレンドに転換するシグナルです。
これをゴールデンクロス(GC)といいます。
パーフェクトオーダー
パーフェクトオーダーが発生すると、短中長期の価格動向がすべて同一方向を向いたということを示唆しており、しばらくはその方向への値動きが続くと考えられます。
上の画像では、上昇トレンド方から一転して下降トレンドに転換しています。
その際、価格の下落に伴って、最初に青色の短期移動平均線が、次に緑色の中期移動平均線が下方向に動きます。
最後に赤色の長期移動平均線が下向きに変化して、すべての移動平均線の方向が揃い、パーフェクトオーダーが完成しています。
その後の価格動向は、下落です。
価格が上昇する際も、同様の現象が確認できます。
短期、中期、長期移動平均線すべてが上を向き、上昇トレンドが発生しています。
下向きのパーフェクトオーダーなら売り、上向きのパーフェクトオーダーなら買いのシグナルです。
パーフェクトオーダーによる取引を行う際は、移動平均線の期間設定に注意しましょう。
あまり近い数値を設定してしまうと、移動平均線が同じような動きをしてしまい、うまく短中長期の相場状況を反映できません。
明確な定義はないものの、ある程度離れた数値で設定すべきでしょう。
上の画像内の移動平均線は、短期=21、中期=54、長期=200の設定です。
自分自身が最も分析しやすく、信頼できる設定値を見つけてみてください。
移動平均線乖離
移動平均線は、一定期間の価格の平均値を示し続けるテクニカル指標なので、移動平均線と価格には近づく力が発生します。
そのため、価格が移動平均線から大きく離れると、次は移動平均線に近づこうとする動きが発生しやすくなります。
価格が移動平均線から大きく離れた時に、移動平均線方向に戻る値動きを狙った取引になるため、いわゆる「逆張り」手法といえるでしょう。
強く、大きな値動きに対して「逆張り」を行う際は、タイミングが非常に重要です。
移動平均線だけでなく、オシレーターを併用するなどして、慎重に取引することをおすすめします。
移動平均線からの乖離率を測るテクニカル指標や、相場の過熱感を示すオシレーターが良いでしょう。
【移動平均乖離率】

出典:FXブロードネット
また、移動平均線からの乖離による取引を行う場合、短期移動平均線は値動きに追従するため、乖離が発生しづらく不向きです。
乖離の基準とする移動平均線は、比較的長期的な設定の方が良いでしょう。
グランビルの法則
グランビルの法則も、移動平均線を利用した非常に有名なテクニカル分析の一つです。

出典:外為オンライン
買いパターン、売りパターンそれぞれ4つずつです。
パターンを覚えることも大事ですが、その理屈を頭に入れておくと、さまざまな場面で応用できます。
ゴールデンクロス・デッドクロス、パーフェクトオーダー、移動平均からの乖離など、これまで紹介した移動平均線を使った分析方法を思い出しながら、一つずつ確認していきましょう。
買いパターン①
横ばいまたは上向きに転じた移動平均線を、価格が上抜いたときです。
先に紹介したゴールデンクロスと同じような考え方です。
移動平均線は値動きに追従するため、常に値動きが先行し、移動平均線がそれについていくように動きます。
グランビルの法則による買いパターン①は、価格そのものが移動平均線を上抜けたタイミングで買いを入れるので、移動平均線同士のクロスを確認するよりも早く買うことが可能です。
ただし、移動平均線が横ばいのタイミングは、トレンドのない相場状況ともいえます。
トレンドのない相場状況では、移動平均線を跨いで価格が推移することがよくあるため、より慎重に取引を行うのなら、移動平均線も上向きである方が良いといえるでしょう。
買いパターン②
上向きの移動平均線を下抜いたタイミングです。
これは、デッドクロスのような動きになるため、買うのは難しいと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし移動平均線が上向きを保っていれば、相場状況は上昇トレンドであると考えられます。その中で価格が一時的に下がった時に買います。
中期移動平均線を下抜きながらも、上向きを保っている長期移動平均線に支えられているなど、複数期間の移動平均線を組み合わせて分析してみましょう。
買いパターン③
上向きの移動平均線まで価格が下落してきたときに買います。
これも、買いパターン②と考え方は似ています。
移動平均線が上向きである以上、相場状況は上昇トレンドであると考え、価格が一時的に下落したタイミングで再上昇するという想定です。
このように、上昇トレンドの中で一時的に価格が下落したタイミングで買うことを「押し目買い」といい、トレンドに乗った取引手法として広く知られています。
また移動平均線は多くのトレーダーが注目するテクニカル指標で、買い支える「支持線」として機能することがよくあります。
買いパターン④
下向きの移動平均線から、価格が下方向に大きく離れたタイミングで買います。
移動平均線が下向きということは、相場状況は下降トレンドであると考えられます。
その中で買うということに疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、これは先に紹介した、移動平均線から価格が大きく離れると、価格は移動平均線に戻ろうとするという、乖離を利用した取引です。
下降トレンドの中で買うのであれば「逆張り」となります。
勢いよく下落する相場状況の中で買う行為は、相場の世界では「落ちてくるナイフを素手で掴むようなものだ」といわれるほど、危険なトレードとされています。
このタイミングで買うことを考えるのであれば、複数の移動平均線やオシレーターの組み合わせによる分析が必要です。
売りパターン⑤
ここからは、売りパターンです。
買いパターンの逆を考えましょう。
横ばいまたは下向きに転じた移動平均線を、価格が下抜いたときに売ります。デッドクロスと同じような考え方です。
移動平均線には、買いパターン①で説明したように、値動きに追従するという特性があり、常に値動きが先行します。
グランビルの法則による売りパターン⑤は、価格そのものが移動平均線を下抜けたタイミングで売りを入れるので、移動平均線同士のクロスを確認するよりも早く売ることが可能です。
ただし、移動平均線が横ばいのタイミングは、トレンドのない相場状況ともいえます。
より慎重に取引を行うのなら、移動平均線も下向きである方が良いでしょう。
また、価格が移動平均線を下抜いたと思ったら、すぐにまた戻ってきてしまうという「ダマし」といわれる現象もよくありますので、注意が必要です。
売りパターン⑥
下向きの移動平均線を上抜いたタイミングです。
これは、ゴールデンクロスのような動きになるため、売るのは難しいと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし移動平均線が下向きを保っていれば、相場状況は下降トレンドであると考えられます。その中で価格が一時的に上がった時に売ります。
中期移動平均線を上抜きながらも、下向きを保っている長期移動平均線に価格の上昇を抑えられているなど、複数期間の移動平均線を組み合わせて分析してみましょう。
売りパターン⑦
下向きの移動平均線まで価格が上昇してきたときに売ります。
売りパターン⑥と考え方は似ています。
移動平均線が下向きである以上、相場状況は下降トレンドであると考え、価格が一時的に上昇したタイミングで再下降するという想定です。
このように、下降トレンドの中で一時的に価格が上昇したタイミングで売ることを「戻り売り」といいます。
この時、下向きの移動平均線は、価格の上昇を抑える「抵抗線」として機能します。
売りパターン⑧
上向きの移動平均線から価格が大きく上に離れたタイミングで売ります。
移動平均線が上向きということは、相場状況は上昇トレンドであると考えられます。
これも、移動平均線からの乖離を利用した取引です。価格は移動平均線の元に戻る力が働くと想定できます。
また上昇トレンドの中で売るので、「逆張り」です。
買いパターン④で伝えた通り、勢いのある相場に対して逆方向に取引するので、大きな損失を被る可能性が伴います。
複数の移動平均線や、オシレーターを併用するなどして、慎重に取引しましょう。
移動平均線使用上の注意点
移動平均線は、相場状況を視覚的に捉えられるので、とても有効なテクニカル指標です。
ただし、細かい売買タイミングを示すわけではありませんので、オシレーターなどのタイミングを示唆するテクニカル指標と併用するなどの工夫が必要です。
ゴールデンクロス・デッドクロスや、乖離による取引と相場の過熱感を示すオシレーターの組み合わせは比較的相性が良いといえます。
短中長期の移動平均線や複数時間足チャートの観察をしながら、長期のトレンドに沿って、短期的な「押し目買い」「戻り売り」のタイミングをオシレーターで測ってみましょう。
テクニカル指標が豊富なおすすめのFX業者
移動平均線は、ほとんどのFX業者の取引ツールに標準搭載されています。
しかし、同時に表示できる移動平均線の数や、設定値の上限は取引ツールによって異なります。
ここでは、移動平均線のカスタマイズ性が高く、豊富なテクニカル指標を取りそろえたFX業者を紹介します。
OANDA Japan

出典:OANDA Japan
OANDA Japanは世界7都市に拠点を構え、それぞれの国の金融ライセンスを取得し運営しているグローバルなFX業者です。
OANDA Japanが提供している取引ツール「MT4」は、ロシアで発足したMetaQuotes社が開発した取引ツールで、発表された2005年以来、多くのトレーダーに親しまれています。
MT4は標準でも非常に多くのテクニカル指標を搭載していますが、カスタマイズ性の高い取引ツールで、自作したテクニカル指標をインストールして利用できるのが大きな特徴です。
OANDA Japanの公式サイトでもテクニカル指標(インジケーターと呼ばれています)を配布していて、口座開設者は無料でダウンロードできるものも多数あります。
移動平均線の表示数について、上限は確認できませんが、非常に多くの表示が可能です。
移動平均線の設定期間も自由に設定できます。上の画像内に表示させている移動平均線の設定は、4000、3000、2000、1000、500、400、300、200、100の9種類です。
移動平均線のプロパティから単純移動平均線(Simple)や指数平滑移動平均線(Exponential)などの選択もできます。
また、選択した移動平均線をどの時間足チャートに表示させるかも選択できるため、設定を工夫すれば、複数の移動平均線が表示されて混乱してしまうことを避けられるでしょう。
移動平均線の表示は、チャート画面左上の「挿入」から「インディケーター」⇒「トレンド」⇒「Moving Average」で可能です。
OANDA Japanには無料デモ口座もありますので、まずはデモ口座で使用感を確かめてみても良いでしょう。
DMM FX

出典:DMM FX
DMM FXはDMM.com証券が運営しているFX業者で、同グループ内の「外為ジャパンFX」と合わせた総口座開設数は2020年8月31日時点で80万口座を突破し、国内1位となる人気FX業者です。
DMM FXのオリジナル取引ツール「DMM FX PLUS」は、20種類のテクニカル指標を搭載し、レイアウトを自由に変更できるカスタマイズ性に優れたプラットフォームです。
表示可能な移動平均線の上限は確認できていませんが、非常に多くの移動平均線を一つのチャートに同時に表示できます。
設定期間の上限は400で、上の画像内に表示させている移動平均線は、設定期間の異なる16種類です。
単純移動平均線と指数平滑移動平均を選択できます。
移動平均線の表示は、チャート画面上部の「テクニカル指標追加・編集」アイコンから可能です。
表示されるテクニカル指標一覧から利用したいテクニカル指標を選択し、「追加」をクリックしましょう。
右側にある「選択テクニカル指標設定」で、期間設定や線の色、太さなどを変更できます。
DMM FXにも無料デモ口座がありますので、気になる方はデモ口座で使用感を確かめてみましょう。
登録は最短1分で完了し、完了と同時にすべての取引ツールを無料で利用できます。
また、DMM FXは不定期でデモ取引キャンペーンを開催しています。
2020年12月8日まで開催されていたデモ取引キャンペーンは、仮想資金500万円を元手に取引し、ランキング上位1,000名を対象に現金やAmazonギフト券をプレゼントするものでした。
次の開催があれば、参加してみてはいかがでしょうか。
GMOクリック証券

出典:GMOクリック証券
2021年1月時点で口座開設数約70万の、世界でも有数の口座数を誇るFX業者です。
GMOクリック証券が提供している無料取引ツール「プラチナチャート」は、38種類のテクニカル指標を搭載しています。
トレンド系、オシレーター系のテクニカル指標をバランスよく取りそろえているため、高度なテクニカル分析が可能で、さまざまな取引スタイルに対応しています。
同時に表示できるチャートの数は16枚で、複数の通貨ペアや時間軸のチャートを表示させ、複合的な判断が可能です。
また操作性が高く、初心者にも利用しやすい取引ツールといえます。
単純移動平均線と指数平滑移動平均線をどちらも搭載していて、同時に5種類ずつ合計10本の移動平均線を表示できます。
設定期間の上限は、200です。
チャート画面右上の「テクニカル指標設定」アイコンから表示できます。
表示させたいテクニカル指標のチェックボックスをクリックしてチェックを入れれば表示され、設定値や色、線の太さの変更も簡単です。
GMOクリック証券にも無料デモ口座があるので、まずはデモ口座で使用感を確かめるのも良いでしょう。