投資信託とETFは何が違う?結局どっちを選べばいいのか解説します

投資信託とETFは何が違う?結局どっちを選べばいいのか解説します 株の基礎知識

投資信託ETF投資家から資金を集め、運用のプロが株や債券などの資産に投資・運用することに違いはありません。実際に投資信託とETFには同じインデックスに連動する商品もたくさんあります。

「じゃあ結局どっちに投資すればいいの?」

投資初心者の方がこのような疑問を持つことは当然です。実際に投資信託やETFに投資している人でも細かく検討して決めている人は少ないのではないでしょうか。

この記事では投資信託とETFの違いを説明しつつ、結局どちらのほうがおすすめなのかを考えます。

投資信託とETFの違い

結論からすると投資信託とETF(上場投資信託)の違いは、上場のしているかどうかです。ただ、これだと何が違うのかわかりにくいですね。実際には上場の有無によっていくつか違いが出てきます。

項目 投資信託 ETF
上場の有無 上場していない 上場している
価格変動のタイミング 1日1回更新 リアルタイム更新
注文方法 金額買付・口数買付 成行や指値が可能
銘柄(種類)の多さ 多い
※良い商品が多いわけではない
少ない
※米国ETFなどは種類豊富
コスト
高め 低め
つみたてNISA
(つみたて投資枠)
利用可能 利用不可
コストの違いは、同一のインデックスを対象とした商品で比較した場合の一般的な結果です。かならず投資信託のほうがコストが高いというわけではありません。

上場の有無

投資信託は上場していませんが、ETF(上場投資信託)は証券取引所に上場しています。証券取引所に上場しているということは株式と同じような取引ができるということです。

実際に証券取引所に上場しているかによって次に説明するような違いが出てきます。

価格変動タイミング

投資信託の価格が決まる(価格が変動する)のは、1日に1回だけです。これは当日の市場が閉まった後に決まります。そのため、投資信託の購入は価格が決まっていない状態で取引することになります。これはブラインド方式と呼ばれる方法で、既存投資家の利益を阻害しない目的で実施されています。

参考:一般財団法人 投資信託協会「投資信託の基礎知識

一方、ETFは株式と同様にリアルタイムで需給が発生することになるので、市場価格もリアルタイムで更新されていきます。(厳密にいうと基準価額は投資信託と同様に1日1回の更新)

ETFの場合、JPX(日本取引所グループ)から「インディカティブNAV」というETF基準価額の推定理論値がほぼリアルタイムで公表されています。このインディカティブNAVと市場価格、基準価額を比較することで割安かどうかを判断します。

価格種類 更新タイミング 概要
基準価格 1日1回(日々開示) ETFが保有する資産等を前日終値に基づき算出した価格
インディカティブNAV 取引時間中15秒毎 ETFが保有する資産等を現在値に基づき算出した推定価格
市場価格 リアルタイム 市場で取引する際の価格
JPX日本取引所グループ

出典:JPX日本取引所グループ

参考:JPX日本取引所グループ「インディカティブNAV・PCF情報

注文方法

投資信託の注文方法は基本的に「金額買付」か「口数買付」を選択することになります。多くのネット証券では最低買付金額100円から1円単位で購入することが可能です。

証券会社によって「積立買付」や「つみたてNISA口座」を選択できる場合もあります。

ETFの場合、株式と同様なので「成行注文」や「指値注文」などを利用することも可能です。株式では原則として100株を1つの単位(単元)として購入しますが、ETFの場合は売買単位があります。そのため、購入金額は「価格の現在値×(売買単位に応じた)口数となります。

売買単位は商品によって異なり、同じインデックスでも売買単位は異なります。

銘柄名(銘柄コード) 株価 売買単位
上場インデックスファンド225(1330) 27,115 10
MAXIS 日経225上場投信 (1346) 27,240 1
上場インデックスファンド米国株式(S&P500)(1547) 5,621 10
SPDR S&P500 ETF(1557) 51,040 1

※2023/1/10現在

銘柄数(種類)の多さ

一般的には投資信託のほうが銘柄数(種類)が多いと言われています。実際に大手ネット証券であるSBI証券で購入可能な投資信託数は2,658本で、ETFの銘柄数は308本(いずれも2022/1/10時点)でした。

ただし、この本数は気にする必要はありません。投資信託でもETFでも購入するときにはコスト(信託報酬手数料)が低い商品を選ぶのが鉄則ですが、投資に値するインデックスは数個しかありません。(同じインデックスに連動する商品は複数あるので銘柄数はそれよりも多いです)

米国ETFには投資に値するETFの種類が豊富にあります。単純な銘柄数としては投資信託のほうが多いですが、投資してもよいインデックスの種類の豊富さではむしろ(米国)ETFのほうが優れていると感じます。

信託報酬などのコスト

同じインデックスに連動する商品の場合、信託報酬手数料などのコストは投資信託よりもETFのほうが低い傾向にあります。

以下の2つはどちらもS&P500に連動した銘柄ですが、コストはETF商品のほうが小さいことがわかります。

種類 銘柄 信託報酬
投資信託 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 0.0968%
ETF MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558) 0.07%

実際には売買時のコストなども関係してきますが、長期保有するほど保有期間中に発生する信託報酬手数料の差が大きくなります。コストと手数料の具体的な比較はこの後説明します。

信託報酬は直接支払うものではなく間接的なコストなので、支払っている感覚がありませんが、実際には資産総額から引かれています。基準価額(株価)は純資産額と口数から計算するため、信託報酬が大きいほど基準価額(株価)が上がりにくくなることに注意してください。

つみたてNISA(つみたて投資枠)の利用有無

つみたてNISAは長期投資に適した投資信託銘柄(金融庁に届け出された銘柄)が対象となっており、原則ETFでは利用できません。

投資信託やETFは長期投資を前提とした金融商品であるため、運用益が非課税になるつみたてNISAを利用できるのは大きなメリットでした。

ただし、2024年からNISA制度が大きく変更になり、つみたて投資枠(つみたてNISA)と成長投資枠(一般NISA)の制度が併用可能になります。成長投資枠でも非課税期間が無期限になるため、現行の(つみたて)NISA制度ほどのメリットはなくなります。

ただし、成長投資枠は最大1,200万円までしか利用できません。つみたて投資枠であれば1,800万円分の生涯非課税投資枠を使い切ることができます。つみたて投資枠の年間投資上限は120万円なので、使い切るまでに時間はかかります。

S&P500のETFと投資信託どっちがお得?

S&P500のインデックスに連動するETFと投資信託で実際にコストと利益を比べてみます。

投資信託とETFのコストの違い

以下の2商品でコストの比較をします。仮に100万円購入して20年保有すると、どれだけ違いがでるでしょうか。

種類 銘柄 信託報酬
投資信託 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 0.0968%
ETF MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558) 0.07%

購入時、保有期間、売却時のそれぞれで考えてみます。

銘柄 購入時 保有期間 売却時
【投資信託】eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 0円 100万円×0.000968×20(年)
19,360円
0円
【ETF】MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558) 0円 100万円×0.0007×20(年)
14,000円
0円

投資信託の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は購入時手数料と売却時の信託財産留保額はありません。そのため、信託報酬手数料がトータルのコストになると考えます。

ETFの「MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558)」は購入及び売却時には証券会社によっては手数料が発生します。SBI証券の場合、この銘柄は取引手数料無料ETFに指定されているため、ここでは0円としました。

よって保有期間中のコストをそのまま比較します。100万円で20年間保有した場合のコストの違いは約5,000円です。(厳密には保有コストは常に変動します)

結論から言えば、100万円レベルであれば保有コストにほとんど差はないといえます。1,000万円分の資産を保有していればコストもこの10倍かかります。上でも説明した通り、信託報酬は間接的なコストです。直接支払うのではなく資産総額から引かれていることを理解しておきましょう。

この2商品は売買手数料がありませんでしたが、購入手数料信託財産留保額などが発生する場合はコスト差が大きくなることもあります。

投資信託とETFの分配金や利益の違い

次に投資信託とETFの利益の違いを見ていきます。先ほどと同じ2種類で比較します。

基準価額の上昇幅は2020年1月から2022年12月末までの基準価額の上昇幅を利用しています。

項目 【投資信託】
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
【ETF】
MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558)
基準価額の上昇幅 約5775円×100≒58万円 約4500円×100≒45万円
分配金 なし 100×0.0119×3≒3.5万円
合計リターン 58万円 48.5万円
課税額 58万円×20.315%≒約12万円 48.5万円×20.315%≒約10万円
手取りリターン 58万円ー12万円=46万円 48.5万円ー10万円=38.5万円

この結果は2020年~2022年の結果から概算で出したものなので、これだけを見て投資信託のほうが優れているということではありません。

注目してほしいのは課税額の部分です。現行のつみたてNISA新NISAのつみたて投資枠を利用すれば運用益は非課税になるので合計リターンと手取りのリターンが同じになります。

これだと100万円の運用額でも大きな差となっていることが感じられるのではないでしょうか。コストを小さくすることはかなり難しいですが、リターンはつみたてNISAを利用すれば比較的簡単に大きくすることができます。

新NISAではつみたて投資枠成長投資枠が併用できますので、ETFを成長投資枠で購入することは可能です。ただし、成長投資枠は個別株のような短~中期で比較的リターンが大きい銘柄に利用したほうがメリットを活かすことができます。

米国ETFが人気だが投資したほうがいい?

おそらくETFは国内ETFよりも米国ETFのほうが人気があると思います。米国ETFはおすすめできる銘柄も多いですが、注意すべき点もあるので投資に慣れてきてから始めても遅くありません。

米国ETFとは、米国株式市場で購入できるETFのことを指しています。国内市場で購入できる米国インデックスに連動する商品のことではありません。

また、米国株へ投資するときには、証券会社の口座開設以外に「外国株式取引口座」も開設しておく必要があります。

米国ETFは種類が豊富

米国ETFは種類が豊富です。

東証に上場している外国インデックスに連動する商品はほとんどが「S&P500」や米国債券ですが、米国ETFにはS&P500のようなインデックスに連動するETF以外にも、セクターETF(セクターは業種のようなもの)や高配当ETFレバレッジETFなど日本でも人気がある銘柄がたくさんあります。

特に高配当ETFは長期投資に適しており、セクターETFはディフェンシブな銘柄といった特徴が出やすいため、景気循環のサイクルによって購入タイミングを計りやすいメリットがあります。

日本でも人気があるETFを一部紹介します。すべてがおすすめの銘柄というわけではなく、特殊なインデックスのETFもあるのでよく調べてから投資するようにしてください。

銘柄 特徴 概要 経費率 分配利回り
バンガード S&P 500 ETF(VOO) 主要指標 S&P500に連動するETF。米国の経済に連動しやすい。 0.03% 1.67%
バンガード トータルストックマーケットETF(VTI) 主要指標 NY証券取引所とナスダックで取り扱われている約4000銘柄を対象とするETF。動きはVOOとほぼ同様。 0.03% 1.64%
バンガード 米国高配当株式ETF(VYM) 高配当 約400の銘柄で構成されている高配当ETF。配当型なので比較的ディフェンシブなETF。 0.06% 2.96%
インベスコ QQQ トラスト シリーズ1 (QQQ) 成長型 NASDAQ100指数の値動きに連動するETF。金融機関を除いた時価総額が上位の100社に絞られている。好景気に上昇しやすいが、不景気には下落しやすい。 0.20% 0.79%
バンガード 米国情報技術セクター ETF(VGT) セクター 情報技術セクターのセクターETF。成長型なので好景気時に上昇しやすい。QQQに似た動き。 0.10% 0.90%
バンガード 米国ヘルスケア セクター ETF(VHT) セクター ヘルスケアセクターのセクターETF。ディフェンシブな側面と成長面を兼ね備えたETF。 0.10% 1.35%
Direxion デイリーS&P500ブル3倍 ETF(SPXL) レバレッジ S&P500のレバレッジETF。日々の変動率の3倍の動きをする。長期投資には不向きなので注意。 0.90% 0.31%
Direxionデイリー半導体株ブル3倍ETF(SOXL) レバレッジ 半導体の指標であるSOX指数に連動するETF。変動率3倍のレバレッジETF。長期投資には不向き。 0.82% 0.87%
グローバルX NASDAQ100 カバード コールETF(QYLD) 特殊 カバードコール戦略のETF。ほとんど株価が上昇しない代わりに分配利回りが高い。初心者には不向き。 0.60% 13.54%

※2023/1/11時点

また、米国ETFは日本国内のETFよりも保有期間中のコスト(信託報酬手数料)が低めに設定されていることが多いです。例えばS&P500に関連する日米のETFを比較するとこうなります。

市場 銘柄 信託報酬手数料率
(経費率)
分配利回り
日本 MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558) 0.07% 1.19%
米国 バンガード S&P 500 ETF(VOO) 0.03% 1.67%

※2023/1/11時点

各銘柄の特徴をよく理解できれば、米国ETFはとてもよい投資先といえます。

分配金の二重課税には確定申告が必要

米国ETFが投資初心者の方に不向きな最大の理由は分配金が二重課税されてしまうことです。二重課税に対処するには確定申告で「外国税額控除」申請する必要があります。

外国税額控除は必須ではありませんが、申請しないとリターンが小さくなってしまいます。

一般的には会社員の方は通常確定申告をすることがないと思うので、かなりの手間になることは間違いありません。

また、NISA口座を米国ETFで利用する場合、外国税額控除ができなくなります。これはNISA口座だと国内が非課税になるので二重課税ではなくなるからです。

参考:国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除

結局、、、投資信託とETFはどっちがおすすめですか?

結論からいえば、これから投資を始める人や手間をかけたくない人には投資信託のほうがおすすめだと考えています。ただし正解はありませんのでよく検討してから決めてください。

投資初心者には投資信託のほうがおすすめ

上で述べた通り、投資初心者の方には投資信託をおすすめします。その理由はETFと比較してもコストに大きな差が出にくいのですが、つみたてNISA(つみたて投資枠)を利用すればリターンを大きくしやすいからです。

つみたてNISA(つみたて投資枠)の対象が一定の条件を満たした投資信託のみというのは、投資信託の大きなメリットです。

投資信託もETFも「長期・分散・積立」に適した商品ですが、投資信託のほうがクレカ積立など、積立投資(定期購入)しやすいサービスが充実していると感じます。

こちらも人によってはメリットが大きく、最初に設定をしておけばほったらかしにしておいても自動で積立投資できます。

ほったらかし投資が可能といっても、定期的なチェックやリバランスは必要です。

NISAなどを利用せずに長期投資するならETFでもいい

NISA口座を利用せずに長期積立するのであれば、ETFのほうがコストが小さくなることが多いので、ETFを選ぶ選択肢も悪くありません。

外国税額控除の手間を許容できるのであれば、米国ETFもおすすめです。キャピタルゲイン(株価の値上がり)を狙える銘柄もあればインカムゲイン(分配金)を狙える銘柄もあるので、投資スタイルによって投資商品を選ぶことができます。

それぞれの特徴を活かして利用しましょう

投資信託とETFは商品の特性はほとんど同じですが、細かい部分が少し変わってきます。国内市場の投資信託、ETF、さらに米国市場の米国ETFの特徴を理解して、それぞれの特徴を活かした投資をしていきましょう。

投資初心者の方であればまずは投資信託から始めることをおすすめします。

この記事のポイントをまとめました。

  • 投資信託とETFは上場有無によって価格決定タイミングなどが異なる
  • ETFのほうがコストが低い傾向にある
  • 投資信託はつみたてNISAが利用できるのでリターンを大きくしやすい
  • 米国ETFは種類が豊富でおすすめ
  • ただし二重課税になるので「外国税額控除」申請が必要。NISA口座だと利用できない
  • 投資初心者には投資信託のほうがおすすめ
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