配当金を年間30万円にするならいくら必要?年間30万円にするポートフォリオも解説

配当金を年間30万円にするならいくら必要?年間30万円にするポートフォリオも解説 株の基礎知識

年間30万円の配当金と聞くと「自分には無理…」と思う人もいるかもしれませんが、実はそんなに難しいことではありません。

それでは、どのような商品に投資すれば年間30万円の配当金をもらえるようになるでしょうか。年間に30万円の配当金があれば、時々プチ贅沢ができるようになるかもしれませんね。

複雑な取引手法などは使わずにできるだけ再現性が高い方法を紹介するので、これから投資を始めようとしている人も、すでに投資をしている人も参考にしてください。

配当金を年間30万円にするにはいくら必要?

実際に年間30万円の配当を得るには、投資資金は1,000万円あれば十分足ります。

「1,000万円なんて無理」

という人でも利回りが高い商品を選べば、投資資金はもっと少なくて済みます。ここでは利回りごとにどれくらい投資資金が必要なのか、どんな商品に投資すればよいのかを解説していきます。

投資資金は1,000万円あれば可能

年間の配当金を30万円もらいたければ1,000万円あれば十分です。実際には1,000万円の投資資金がなくてもかなりリスクの低い投資で年間配当30万円を実現できます。ただし、人によってはかなり面白みのない投資になりますが。。

利回りが高い商品を選べばさらに少ない資金で実現することもできます。商品により運用利回りは違いますが、2022年現在であれば4~5%程度の利回りならほぼノーリスクで実現可能です。

また、すぐに年間30万円を目指さずに、配当のリターンをさらに投資資金に組み込む「複利」の投資をすれば、徐々に投資資金が大きくなってくるので、得られる配当金も時間をかけずに大きくすることができます。

利回りごとの投資資金シミュレーション

実際に年間30万円をえるにはどれだけ投資資金があればよいのでしょうか?投資の利回りごとにシミュレーションしてみます。計算は簡単です。

年間利回り 計算式 必要投資額
3% 必要投資額 × 0.03(3%)=30万円 1,000万円
5% 必要投資額 × 0.05(5%)=30万円 600万円
7% 必要投資額 × 0.07(7%)=30万円 約430万円
10% 必要投資額 × 0.10(10%)=30万円 300万円

状況にもよりますが、年間利回り5%程度であればリスクが低い投資でも実現可能です。それ以上になると若干リスクが上がってくるイメージになります。つまり、投資資金が約600万円あれば安定して年間30万円の配当金をもらうことができます。

投資資金が600万円であれば、仮に年間50万円しか投資資金が準備できなくても5%の複利運用をすれば10年間で貯めることができます。つまり10年後からは配当金が毎年30万円になるわけです。

投資元本が多いほど複利の効果が上がってくるので、それ以降はさらに年間にもらえる配当金の金額が大きくなるスピードも上がります。

どの金融商品から始めればよいか

これはどれだけの資金があるかなどによっても変わりますが、少額から始めるのであれば国内の高配当株から始めるのが良いと考えています。

高配当株をすすめる理由はNISA制度が利用できるからです。NISAは配当も非課税にできるので、資産形成のスピードを速めることができます。NISA枠を使っていない、もしくはまだ枠が空いているのであればぜひ利用したい制度です。

ある程度資金があれば、債券も組入れたい資産の1つです。債券は極めてリスクが低い商品といえます。大きなリターンを狙わないのであれば利用したい投資商品です。

ただし、債券は積立投資するわけでもなく、価格の上げ下げを気にする必要がないので、人によっては退屈に感じるかもしれません。

株式投資で、株式市場や経済について興味をもったり知識を学んでから債券投資するほうが、楽しく投資ができるように感じます。

株式の配当利回りは3~5%程度

国内株式で、高配当株と言われている株式の配当利回りは3~5%程度です。株価が下落しているタイミングでは5%台くらいまでは許容範囲となりますが、それ以上になってくると高配当を維持し続けるのは難しくなると考えられます。

指標 内容 算出方法
配当利回り 購入した株価に対して1年間でどれだけの配当を受け取ることができるかの指標。 1株当たりの配当金÷株価
例)株価が1,000円の時に購入した銘柄が、1株当たり50円の配当を出す場合、配当利回りは5%

そのため、安定した配当を狙うにはだいたい利回りが5%台までの銘柄をターゲットにしたいところです。配当利回りが低すぎれば投資資金を大きくしないと配当金が大きくならないので、良い銘柄を探すようにします。

その他にも以下のような項目や指標をチェックしておきましょう。

指標など 概要 算出方法
減配がないか 業績に応じて減配があるのか、過去の実績をチェック。減配がある場合、業績が落ちないかが重要。
PER 株価が割安かを測る指標。割安のタイミングで購入できれば配当利回りが上がる。 株価÷EPS(1株あたりの純利益)
または
時価総額÷当期純利益
配当性向 配当性向は当期純利益のうち、どれだけの割合を配当に回したかの指標。配当性向が一定の場合、業績によって減配の可能性が高くなる。 配当金支払金額÷当期純利益
または
配当金÷1株当たりの当期純利益
業績や過去の株価チャート 配当性向が一定の場合、業績がおちないかどうか。株価のチャートはボックス圏内を動いているかどうかなど(現在が割安の水準なのか)

高配当の銘柄探しについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

配当株はいつ買うべき?高配当株の買い時や選び方のコツを解説
この記事では配当株の基本的な知識や、いつ高配当株はいつ買うべきかといったポイントを紹介していきます。

債券はリスクが少ない金融資産

債券はかなりリスクが低い金融資産です。債券には格付けが設定されていますが、投資適格債(S&Pの格付けならBBB以上)を選択すれば、ほぼ安全といえます。

債券は人気のある金融資産とは言えませんが、特性を活かせばとても優れた金融商品です。償還(満期のようなもの)まで保有すればリターンが確定しており、最終的な利回りが計算しやすい点は大きなメリットといえます。

以下の表は「S&Pグローバルレーティング」という機関がだしている債券の格付けとデフォルトの発生確率を示した表です。2010年以降ではBBB以上の格付けはほぼデフォルトがありません(ゼロではありません)。この10年でA以上に関して言えばデフォルトはありません。

2022年に関しては、米国の利上げが継続的に行われた背景があり、債券利回りも上昇しました。2022年12月現在では米ドル建ての債券は3%後半~5%の利回りで購入が可能です。つまり、格付けが高く債券利回りが5%の債券を600万円分購入するだけで年間30万円の配当を実現できます。ほぼノーリスクというのはこういったポートフォリオを組む場合です。

SBI証券

出典:SBI証券

年間30万円にするポートフォリオ

年間30万円を得るのはどのようなポートフォリオでも構いません。それぞれメリットやデメリットがあるので自分に合ったポートフォリオを作りましょう。

株式を中心としたポートフォリオ

株式を中心としたポートフォリオの場合、いくつかの銘柄を組み合わせたほうがリスクの分散になります。また、株式の場合株価の上下があるので、株価が上がればキャピタルゲインを得ることができますが、株価が下がれば配当の利回りが小さくなる(場合によっては損失が出る)点については注意してください。

株式を中心としたポートフォリオ1

ものすごく簡単な例がこのポートフォリオです。

コード 銘柄 株価 配当利回り 投資資金 年間配当金
9104 商船三井 3340 16.58% 334万円(@1000株) 約55万円

※2022/12/21時点

このポートフォリオは高配当銘柄である商船三井(9104)1銘柄だけで構成しています。配当利回りが高いため投資資金は334万円(2022/12/21時点)で年間配当金が55万円になります。

このポートフォリオの注意点は、株価の下落があり得ることと、今後減配の可能性が高いことです。おそらく2023年か、長くても2024年までしか使えない手法です。

また、決算期は3月なので、配当金をもらえるのが3月9月のみとなります。

株式を中心としたポートフォリオ2

先ほどよりも構成銘柄を増やしたポートフォリオです。

コード 銘柄 株価 配当利回り 投資資金 年間配当金
2914 日本たばこ産業 2795 5.86% 280万円(@1000株) 約16.5万円
8309 三井住友FG 5179 4.44% 155万円(@300株) 約7万円
8593 三菱HCキャピタル 635 4.88% 160万円(@2500株) 約8万円
合計 約600万円 約31.5万円

※2022/12/21時点

こちらは高配当銘柄を3つ組み入れたポートフォリオです。連続増配で有名な三菱HCキャピタル(8593)や、銀行系の三井住友FG(8309)などを組み入れています。

バリュー株や長期金利上昇に強い銀行株を組み入れているので、日本株式市場全体が下落してもある程度株価の下落が小さく済む銘柄です。また、減配の心配があまりなく長期で保有できるメリットがあります。

この銘柄だと決算期が同じ3月決算なので、配当の月を増やしたければ、決算月が異なる銘柄を組み入れるのもよいでしょう。

毎月一定の配当金がでるポートフォリオ

毎月の配当金が欲しい場合は債券を組み入れるポートフォリオがおすすめです。

債券を中心としたポートフォリオ

債券 利回り 利払い日 投資資金 配当金
トヨタ モーター ファイナンス (ネザーランズ) 2024/11/13満期 米ドル建社債 (R6465A001) 4.525% 毎年5/13,11/13 15,000ドル 約9万円
三井住友フィナンシャルグループ 2026/10/19満期 米ドル建債券 (R7066A001) 4.738% 毎年4/19,10/19 15,000ドル 約9万円
アメリカ合衆国国債 2026/8/31トレジャリーボンド (L0415A001) 3.781% 毎年2/末,8/31 15,000ドル 約7.5万円
合計 45,000ドル
約585万円
約25.5万円

※2022/12/21時点 1ドル=130円で換算

こちらは債券だけを組み入れたポートフォリオです。年間配当金が少し30万円に届いていませんが、投資資金を増やせばもちろん配当は30万円以上になります。

このポートフォリオの利点は格付けA以上の債券を選んでいるので、償還まで保有すればほぼノーリスクというところです。また、この3つの債券だけでも1年の内で6回配当がもらえることになります。

上の債券は米ドル建て債券なのですが、外貨建て債券の場合は為替の動きには注意が必要です。購入時よりも償還時に円高になっていた場合、為替差損が発生することがあります。特に円貨決済で購入した場合、為替の影響を受けてしまいます。

決済方法 内容
円貨決済 自分で外貨を準備せず、外貨建て債券の買付代金の支払い、または売却代金の受け取りを日本円で行う決済方法です。証券会社がドルの仲介してくれるイメージです。
外貨決済 外貨決済は自分で現地通貨(この場合は米ドル)を準備して、外貨で取引を行います。最終的に円に交換するタイミングは任意となるため、為替の影響が小さくなります。

複数資産で構成するポートフォリオ

例えば上で紹介した高配当株と債券を組み合せばさらに様々な月で配当を得ることができます。他にも不動産投資型クラウドファンディングなどを利用すると、比較的高い利回りで安定したリターンを得つつ、分散投資になります。

複数資産を組み入れたポートフォリオ

投資資産 利回り 利払い日 投資資金 配当金
株式 5% 3月、9月 200万円 10万円
債券 4.5% 様々な月 100万円を3種類 13.5万円
不動産投資型クラウドファンディング 6% 12月(償還時) 100万円 6万円

こちらは架空の銘柄になりますが、複数の資産を組み合わせた例です。上で紹介した高配当株や債券を組み合わせればほとんど毎月配当をもらうことも可能です。上の例では投資資金600万円で配当金が29.5万円のポートフォリオです。

半分を債券にしているのでかなりリスクを抑えたポートフォリオですが、もっとリスクの高い攻めのポートフォリオであれば、リターンを大きくすることができます。(もしくは投資資金を小さくしつつ30万円を狙うこともできます)

配当を目的とした投資の注意点

ここまでは年間30万円の配当をもらうのはそんなに難しいことではないと説明してきましたが、実際には注意しなくてはいけない点もあるので、きちんと理解しておいてください。

税金がかかることに注意する

配当には税金がかかります。株式の配当でも投資信託やETFでも同じです。源泉徴収ありにしている場合、自動で税金を引いてくれているので意識することがありませんが、20.315%(復興特別所得税含む)課税されています。

この記事で、年間配当金30万円としていますが、実際にはこれに20.315%の課税がされるので、約6万円手取りとしては減ることになるのには注意してください。

NISA制度を利用すれば、配当の税金も非課税となるため、枠が空いているなら利用しておきたいですね。

外国株は余計な手間が増えてしまう

近年は米国株や米国ETFが人気です。国内証券会社でも米国株へ投資できる環境が整ってきたからだと思います。

米国の株式はもちろん、ETFでもVYMのような王道の高配当ETFや、QYLDのようなリスクがかなり高い高配当ETFなど様々な商品があります。興味があればいろいろ調べてみると面白いです。

ETF銘柄 概要
バンガード米国高配当株式ETF(VYM) 米国の成熟した高配当銘柄約400で構成されているETF。年配当利回りは約3%
グローバルX NASDAQ100 カバード コールETF(QYLD) カバードコール戦略(オプション取引を利用した手法)を利用したETF。年配当利回りが非常に高く年10%以上。

米国株の配当は、一度米国で課税(10%)されてから、日本でさらに課税(20.315%)されるので、二重課税されていることになります。

これに対応するには、確定申告で外国税額控除を行う必要がありますが、正直に言えばかなり面倒です。米国株取引をしている人は多いと思いますが、どれだけの人が外国税額控除の確定申告をしているかはわかりません。

銘柄の調査なども含め、配当を狙うだけであれば日本株での取引のほうが簡単なのでおすすめです。米ドル建て債券に関しては二重課税にはならないので米ドル建て債券を組み入れても問題ありません。

投資信託は避ける

投資信託でも分配金がでるものがありますが、これはおすすめしません。投資信託は日々の運用コスト(信託報酬など)や分配金が総資産から差し引かれていきます。

投資信託の基準価額は純資産総額(総資産からコストなどを差し引いたもの)から計算するので、分配金が発生する投資信託は基準価額が上がりにくい(つまり損失が出やすい)仕組みになっています。

投資信託は分配金を目的とするよりも、基準価額自体が将来的に上がっていく(成長していく)銘柄を選ぶことをおすすめします。

外国債券の場合は為替にも注意

債権のポートフォリオでも簡単に説明しましたが、外国債券(外国株でも同様)の場合、為替の動きにも注意してください。

為替変動による資産価値の変化

2022/12/21現在は1ドル=約130円です。このタイミングで10,000ドル分の資産を購入した場合、日本円では130万円分の資産を保有していることになります。

ここから1ドル=100円(円高)になれば、ドルの資産は10,000ドルで変わっていないのに日本円換算では100万円分なので、30万円損失が発生しているのと同じことになります。

逆に1ドル=150円になれば、150万円分の資産を保有していることになるので相対的に利益が大きくなります。

決済方法によっても変わる

米ドル建て資産を購入するときには、決済方法を選ぶことができる場合があります。(証券会社によっては円貨決済しか選択できない場合もあります)

円貨決済の場合、売却時の代金も円で受け取ることになるので、為替レートのいいタイミングで取引することができません。可能であれば外貨決済を利用することで為替レートの影響を減らすことをおすすめします。

利用者が多いSBI証券の場合、住信SBIネット銀行を利用すれば簡単に、かつコストを抑えて外貨を準備することができます。(通常1ドルあたり6銭の為替コストで両替可能)

よくあるQ/A

最後に配当関連のよくある質問について回答します。

高配当の銘柄を1つに絞って投資したほうがいいですか?

これは難しい問題ですが、投資を始めて間もない人はあまり1つの銘柄に集中させないほうがよいです。銘柄を絞るほど何かあった時の影響が大きくなってしまいます。(プラスに働く場合もありますが)

仮に投資資金が500~1000万円程度あれば、最低でも3~5銘柄程度は分散させることをおすすめします。

株式にこだわらず債券などの他の資産と組み合わせるのであれば、株式は1銘柄というのは悪いことではありません。ただし、銘柄の分析はきちんと行ってリスクが小さい銘柄を選ぶようにしましょう。

利回りを上げる方法はありますか?

まず、株式や債券は購入タイミングによって利回りが変わる点は理解しておきましょう。購入価格が下がれば利回りが上がります。つまり株価が低いタイミングや債券価格が下がっているタイミングで購入したほうが良いわけです。

株価が下がっているかどうかは株価チャートやPERなどの指標を利用します。テクニカル分析のオシレーター系の指標を使って買われすぎ、売られすぎを判断するのも良いでしょう。債権の場合、長期金利が上昇すると債券価格が下がり、運用利回りは上昇します。

また、NISA制度を利用すれば、配当も非課税になるので実質的な利回りは向上します。

確定申告はしなくていいですか?

特定口座の源泉徴収ありを利用していれば確定申告をする必要はありません。「申告不要制度」といいます。

手間がかかりますが、確定申告をすれば税率を下げることもできます。特定口座の源泉徴収ありの場合、「分離課税」となりますが、配当は「総合課税」(給与所得など他の所得と合算して計算する)を選ぶことができます。

課税総所得額で1,000万円を超えない部分に関しては、配当の10%が控除対象となります。また、最終的な税率も所得金額が一定以下であればお得になります。

配当に関しては、その人の収入や配当金額などによっても変わってくるので、各証券会社のHPや税務署などで確認するのがよいでしょう。

参考:国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)

キャピタルゲインだけでなくインカムゲイン狙いの長期投資もあり

この記事で具体的なポートフォリオを紹介したように、年間30万円の配当金をもらうのはそれほど難しいわけではありません。

この記事では以下のようなポイントについて解説しました。

  • 年間30万円の配当金を得るには、投資資金は600万円程度あれば達成できる
  • 高配当株や債券であればおよそ5%程度の利回りを上限の目安に
  • ポートフォリオを工夫して、配当月やリスクをコントロールする
  • 配当狙いの投資にも注意点があるので理解しておく

投資と聞くと、株価が何倍にも上がるような会社の株を購入するようなイメージがありますが、安定的に配当を狙う長期投資はリスクも低く投資初心者の方にもおすすめできる手法です。

あなたもこれならできそうだと感じませんか。まだ投資を始めていない人も、投資を始めてうまくいかないなと思っている人も配当狙いの投資にチャレンジしてみて下さい。

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