投資ブームが到来した昨今において、外国の金融商品に興味を抱く人が増えています。
そのなかで、海外投資初心者の注目を集めるのがVTI・VOOと呼ばれる金融商品です。VTI・VOOはいずれも米国ETFの一種ですが、耳慣れない専門用語が多く、また、メインコンテンツが英語ばかりなので、なかなか深い理解に至らないという問題が存在します。
そこで、今回は、米国ETFの一種であるVTI・VOOの基本事項やVTIとVOOはどっちがおすすめかについて詳しく解説します。あわせて、VTI・VOOの現状における相場状況や詳細データも紹介するので、最後までご一読ください。
VTIとVOOはどっちも米国ETF(米国上場投資信託)
VTIやVOOなどの金融商品について理解する際には、当該商品が全体像のなかでどのような位置付け・分類なのかを理解することから始めましょう。
最終的に理解するべきなのは「VTIとVOOはどちらも米国ETFに分類される投資信託商品のことを指す」ということです。
ETFとは上場している投資信託のこと
国内籍ETFの指数 | 外国籍ETFの指数 |
---|---|
国内・海外株式 | |
国内・海外債券 | |
J-REIT(リート)・海外REIT(リート) | |
コモディティ(商品) | |
レバレッジ型・インバース型 |
「ETF(Exchange Traded Funds)」とは、証券取引所に上場しており、かつ、株価指標などに代表される指標への連動を目指す投資信託のこと。上場しているため、株式と同じようにリアルタイムでの取引が可能です。
このように、ETFには株式と同じような側面があるものの、国内株式指数だけではなく、外国株式・債券・REIT・商品(コモディティ)など、さまざまな指標によって構成されているという特殊性を見逃すべきではないでしょう。
さらに、他にも、規模別・テーマ別・業種別などの区分でも投資可能なので、ユーザーの関心の高いものを選りすぐって効率的な投資活動が行えるのも魅力のひとつに挙げられます。
投資信託とはファンド運用型の金融商品のこと
そして、そもそも「投資信託」とは、投資家から出資されたお金をひとつの大きな資金として取りまとめ、投資信託(ファンド)に所属する運用の専門家が、それぞれ独自の指標や考え方に基づいて株式・債券デリバティブなどに投資・運用する金融商品のことです。
さまざまな商品への運用後に得られた成果は、初期投資額に応じて投資家に分配される仕組みとなっています。
米国ETFとはアメリカの証券取引所に上場している投資信託のこと
つまり、このような投資信託のうち、証券取引所に上場しているものが「ETF」に分類されるという構造です。
したがって、投資信託のうち米国の証券取引所に上場しているものが「米国ETF」であり、VTI・VOOはどっちもその米国ETFに分類される金融商品だとまとめることができます。
米国ETFの種類
今回フォーカスするのはVTI・VOOですが、米国ETFには他にも次のような商品が多数存在します。
コード | 銘柄名 | 市場 |
---|---|---|
BND | バンガード米国トータル債券市場ETF | NASDAQ |
BSV | バンガード米国短期債券ETF | NYSE Arca |
EDV | バンガード超長期米国債ETF | NYSE Arca |
FXI | iシェアーズ中国大型株ETF | NYSE Arca |
GXTG | グローバルXマルチテーマ成長株ETF | NASDAQ |
LQD | iシェアーズiBoxx米ドル建て投資適格社債ETF | NYSE Arca |
VT | バンガードトータルワールドストックインデックスETF | NYSE Arca |
XLE | エネルギーセレクトセクターSPDRファンド | NYSE Arca |
米国ETFについては「米国ETFとは?投資するメリットやデメリット・手数料や税金なども解説」でも詳しく解説しています。国内金融商品にはない投資メリットが多数存在するので、ぜひこの機会にご一読ください。
VTIとはバンガード トータル ストック マーケット EFTのこと
VTIとは「バンガード トータル ストック マーケットEFT(Vanguard Total Stock Market ETF)」のティッカー・シンボルのことです。
バンガード社(The Vanguard Group, Inc.)が運営・管理をする上場投資信託で、NYSE Arcaにて取引できます。
バンガード社は、1975年創業のアメリカに拠点を置く世界最大規模の資産運用会社。世界で初めて個人向けのインデックス(指標)ファンドを売り出した。現在では、投資信託及び上場投資信託を中心に、証券サービス・教育資金サービス・各種アドバイザりーサービスなどを提供している。
VTIの対象指数はCRSP US トータル マーケット インデックス(CRSP US TOTAL MARKET INDEX)
VTIの対象指数(ベンチマーク)は「CRSP US トータル マーケット インデックス(CRSP US TOTAL MARKET INDEX」です。
CRSPは「Center for Research in Security Prices(シカゴ大学証券価格調査センター)」のことで、シカゴ大学の研究機関のひとつ。
つまり、“CRSP US トータル マーケット インデックス”を対象指数とするVTIは、シカゴ大学直轄の経済指標研究所で開発されたベンチマークにしたがって値動きをするということです。
CRSP US トータル マーケット インデックス(CRSP US TOTAL MARKET INDEX)の特徴
CRSP US トータル マーケット インデックス(CRSP US TOTAL MARKET INDEX)は、次のような特徴を有するインデックス指数です。
- 大型株式から小型株式に至るまで米国株式市場で取引できる銘柄のほぼ100%を網羅している
- インデックス指数作成の根拠となる株式数は約4,000銘柄
- 株価指数は「時価総額加重平均型株価指数」を採用
まず、時価総額加重平均型株式指数(Value-Weighted Stock Index)は、「構成銘柄の時価総額の合計値 ÷ 基準時点における時価総額合計値」という計算式に基づく株価指数のことです。「時価総額の合計値」が問題とされるので、株式分割などによる株式単価への影響を受けない点がメリットとして挙げられます。
また、CRSP US トータル マーケット インデックス(CRSP US TOTAL MARKET INDEX)では米国株式市場ほぼ全体の銘柄を算定根拠としている点もあわせると、VTIに投資をすれば米国株式市場全体に分散投資をしたのと同様の効果が得られると考えられるでしょう。
VTIの構成銘柄上位10社と占有率
VTIは米国株式市場のほぼ全体を網羅するETFですが、その構成比率上位10社は次の通りです。
順位 | 企業名・グループ名 | 占有率 |
---|---|---|
1位 | Apple Inc. | 5.6% |
2位 | Microsoft Corp. | 5.1% |
3位 | Alphabet Inc. | 3.3% |
4位 | Amazon.com Inc. | 2.4% |
5位 | Tesla Inc. | 1.6% |
6位 | UnitedHealth Group Inc. | 1.3% |
7位 | Berkshire Hathaway Inc. | 1.3% |
8位 | Johnson & Johnson | 1.2% |
9位 | Meta Platforms Inc. | 1.2% |
10位 | Exxon Mobil Corp. | 1.0% |
上位10社合計 | 23.8% |
先ほど紹介したように、VTIの対象指数であるCRSP US トータル マーケット インデックスは時価総額加重平均型株式指数を採用しているため、対象銘柄すべてが均等な投資対象になるのではなく、時価総額の大きさを基準に占有率が変わってくるという特徴があります。
したがって、「いわゆる”GAFAM”などの巨大企業の業績だけに運命を委ねたくない」という志向が強い人にVTIはおすすめだといえるでしょう。
VTIのセクター比率
VTIのセクター比率(投資対象の業種割合)の上位は次のようなラインナップになっています。
順位 | セクター | 占有率 |
---|---|---|
1位 | Technology(情報技術) | 25.8% |
2位 | Health Care(ヘルスケア) | 14.3% |
3位 | Consumer Discretionary(一般消費財) | 13.8% |
4位 | Industrials(資本財) | 12.7% |
5位 | Financials(金融) | 11.2% |
6位 | Consumer Staples(生活必需品) | 5.8% |
7位 | Energy(エネルギー) | 4.5% |
8位 | Real Estate(不動産) | 3.7% |
9位 | Utilities(公益事業) | 3.4% |
10位 | Telecommunications(通信) | 2.7% |
11位 | Basic Materials(素材) | 2.1% |
Technology(情報技術)部門に属する企業には、構成銘柄上位のApple Inc.やMicrosoft Corp.が含まれるため、自ずとセクター比率も高い傾向が見られます。
次いで、UnitedHealth Group Inc.やJohnson & Johnsonなどが構成員となっているHealth Care(ヘルスケア)部門が上位に成長しているのは、近年の動向を踏まえた結果といえるでしょう。
セクターとは、「世界産業分類基準(Global Industry Classification Standard)」(GICS)のこと。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスとMSCIが1999年に共同開発しました。産業を11分類して経済界における占有状況を判断する指標として活用されています。
その他VTIの特徴
その他、VTIの特徴をまとめると次の通りです。
Benchmark(対象指数) | CRSP US Total Market Index |
---|---|
Expense ratio(経費率) | 0.03% |
Dividend schedule(配当スケジュール) | Quarterly(3月、6月、9月、12月の四半期) |
ETF total net assets(ETF純資産総額) | $244,501 million |
Fund total net assets(ファンド純資産総額) | $1,110,346 million |
Exchange(取引所) | NYSE Arca |
ここまでのVTIに関する数値・内容は「VTI(Vanguard Total Stock Market ETF)」(Vanguard公式HP)に基づきます。ご覧いただいたタイミングではデータに変動がある可能性が高いので、あくまでも参考程度にご活用ください。
VOOとはバンガードS&P500ETFのこと
VOOとは「バンガードS&P500ETF(Vanguard S&P 500 ETF)」のティッカーシンボルのことです。VTIと同じように、バンガード社が運営・管理をする上場投資信託で、NYSE Arcaにて取引できます。
VOOの対象指数はS&P 500 Index(Standard & Poor’s 500 Stock Index)
VOOの対象指数(ベンチマーク)は「S&P 500 Index(Standard & Poor’s 500 Stock Index)」です。
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出している株価指数で、ニューヨーク証券取引所・NYSE MKT NASDAQから約500社のアメリカ企業をピックアップして算出されます。
S&P 500 Indexの特徴
S&P 500 Index(Standard & Poor’s 500 Stock Index)は、次のような特徴を有するインデックス指数です。
- 米国株式市場で存在感を発揮する主要500社の大型株をターゲットにしている
- 当該500社の時価総額は米国株式市場の約80%を占める
- VTIと同じように「時価総額加重平均型株式指数(Value-Weighted Stock Index)」を採用している
VTIのベンチマーク「CRSP US トータル マーケット インデックス(CRSP US TOTAL MARKET INDEX)」が全株式市場約4,000社を対象としているのに対して、500銘柄しか対象にしていない「S&P 500 INDEX」は少し物足りないように感じるかもしれません。
ただ、大型株500銘柄だけでも米国株式市場の約80%の時価総額を占めますし、また、大型株の動向が経済全体を左右する傾向が強いという意味においても、VOOが採用する「S&P 500 INDEX」はシンプルに上位企業の動向を反映したベンチマークだと評価できるでしょう。
したがって、VOOへの投資は米国株式市場上位500社への分散投資と同義であると考えられます。
なお、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社では、大型株500銘柄を対象にした「S&P 500 INDEX」だけではなく、特に時価総額の大きい超大型株100銘柄で構成された「S&P 100 INDEX」、中型株400銘柄を対象とする「S&P 400 INDEX」や小型株600銘柄用の「S&P 600 INDEX」なども提供しています。
「アメリカ株式市場の階層ごとの景気トレンドをチェックしたい」という場合にはぜひご活用ください。
VOOの構成銘柄上位10社と占有率
米国株式市場における大型株500銘柄のうち、VOOにおける占有率が高い上位10社は次の通りです。
順位 | 企業名・グループ名 | 占有率 |
---|---|---|
1位 | Apple Inc. | 6.6% |
2位 | Microsoft Corp. | 6.0% |
3位 | Alphabet Inc. | 3.9% |
4位 | Amazon.com Inc. | 2.9% |
5位 | Tesla Inc. | 1.8% |
6位 | Berkshire Hathaway Inc. | 1.5% |
7位 | UnitedHealth Group Inc. | 1.5% |
8位 | Johnson & Johnson | 1.5% |
9位 | NVIDIA Corp. | 1.2% |
10位 | Meta Platforms Inc. | 1.2% |
上位10社合計 | 28.1% |
VTIの箇所で紹介したように、S&P 500 INDEXでも時価総額加重平均型株式指数が採用されているため、当該企業の時価総額によって取り込み率が変動することになります。
そして、VTIと同じく、VOOでもアップルやマイクロソフトの占めるウエイトが重いことが分かります。
VOOのセクター比率
VOOのセクター比率(投資対象の業種割合)は次のような序列となっています。
順位 | セクター | 占有率 |
---|---|---|
1位 | Information Technology(情報技術) | 26.8% |
2位 | Health Care(ヘルスケア) | 15.2% |
3位 | Financials(金融) | 10.8% |
4位 | Consumer Discretionary(一般消費財) | 10.5% |
5位 | Communication Services(通信) | 8.9% |
6位 | Industrials(資本財) | 7.8% |
7位 | Consumer Staples(生活必需品) | 7.0% |
8位 | Energy(エネルギー) | 4.4% |
9位 | Utilities(公益事業) | 3.1% |
10位 | Real Estate(不動産) | 2.9% |
11位 | Materials(素材) | 2.6% |
その他VOOの特徴
その他、VOOの特徴をまとめると次の通りです。
Benchmark(対象指数) | S&P 500 Index |
---|---|
Expense ratio(経費率) | 0.03% |
Dividend schedule(配当スケジュール) | Quarterly(3月、6月、9月、12月の四半期) |
ETF total net assets(ETF純資産総額) | $244,635 million |
Fund total net assets(ファンド純資産総額) | $709,659 million |
Exchange(取引所) | NYSE Arca |
ここまでのVTIに関する数値・内容は「VOO(Vanguard S&P 500 ETF)」(Vanguard公式HP)に基づきます。ご覧いただいたタイミングではデータに変動がある可能性が高いので、あくまでも参考程度にご活用ください。
VTI・VOOはどっちがおすすめ?7項目を比較しよう
VTIとVOOのどっちがおすすめかを判断するには、それぞれの相違点を比較するのがポイントです。ここまで紹介したことを参考に、以下の7つの観点からVTIとVOOを比較していきましょう。
- 構成銘柄数の違い
- 構成銘柄の内容・分布・比率の違い
- 構成銘柄のセクター分布から読み解ける違い
- インデックスの違い
- 経費率の違い
- 分配金利回り(配当利回り)
- パフォーマンス推移
1:構成銘柄数
VTIがインデックスに採用している「CRSP US トータル マーケット インデックス」は米国株式市場のほぼ全体である約4,000銘柄をカバーしています。
これに対して、VOOが連動している「S&P 500 Index」は米国株式市場の大型株式約500銘柄が対象です。
つまり、米国株式市場全体に分散投資したい人にはVTIがおすすめ、米国株式市場における大型株式のみに分散投資したい人にはVOOがおすすめだと考えられます。
2:構成銘柄の内容・分布・比率
VTIの構成銘柄上位10社とVOOの構成銘柄上位10社を見比べると、VTIとVOOでは構成銘柄上位10社の内実について大きな違いはないことが分かります。
ただし、全体に対する上位10社の占有率には微妙な差があり、VTIでは23.8%、VOOでは28.1%となっています。これは、VOOよりもVTIの方が構成銘柄数が多いことが原因です。
したがって、大型株式だけに投資の運命を託したくないのならVTIがおすすめですし、米国株式市場で存在感を誇る主要銘柄だけに投資をしたいのならVOOがおすすめだと考えられます。
大型株式約500社に限定する「S&P 500 Index」では、四半期ごとに構成銘柄が変動するのが特徴です(「CRSP US トータル マーケット インデックス」は常に全体株式を対象にするので入れ替えをする必要がありません)。たとえば、2020年にテスラが構成銘柄に採用されたのは記憶に新しい話でしょう。なお、構成銘柄の入れ替えは「カバー率約80%」が目安で行われるため、基本的には入れ替えによって大きな相場変動が生じることはありません(ただし、S&Pに採用されたり除外されたりするニュースは個別銘柄の株価に大きな影響をもたらす可能性が高いです)。
3:構成セクターの傾向
VTIのセクター比率とVOOのセクター比率を見比べると、VTIもVOOもTechnology(情報技術)が存在感を誇っているという傾向がうかがえます。これは、Apple Inc.やMicrosoft Corp.が米国経済界で大きな役割を担っているためです。
したがって、VTI・VOOのどちらに投資するかを決するときに構成セクターの分布状況は大きな価値をもたないと考えられます。
4:インデックス
投資業界におけるインデックスとは「指標」のことです。VTI・VOOをはじめとするETF(上場投資信託)では、投資商品の価額がインデックスに連動する仕組みが採用されています。
VTIのインデックスは「CRSP US トータル マーケット インデックス(CRSP US TOTAL MARKET INDEX)」です。そして、VOOのインデックスは「S&P 500 Index(Standard & Poor’s 500 Stock Index)」とされています。
繰り返しになりますが、CRSP US トータル マーケット インデックス(CRSP US TOTAL MARKET INDEX)では全米株式市場に属する約4,000銘柄が、S&P 500 Index(Standard & Poor’s 500 Stock Index)では大型株式約500銘柄が指標算定の根拠に取り込まれています。
したがって、「約4,000銘柄に分散投資したい」と考えるならCRSP US トータル マーケット インデックスを採用しているVTIに、「大型株式銘柄のみに集中しつつ分散投資でリスクヘッジしたい」と希望するならS&P 500 Indexに連動するVOOがおすすめです。
5:経費率
経費率(expense ratio)とは、ファンドにおけるETFの純資産総額に対する必要経費等の割合のことです。いわゆる「コスト」に相当するもので、経費率が高いほどユーザーは損をする(経費率が小さい金融商品を選んだ方が得)という構造になっています。
経費率に含まれるのは、ファンドの運用費や信託報酬、有価証券の売買委託手数料、保管費用などです。
そして、VTI・VOOではどちらも経費率0.03%に設定されています。これは、全米ETFの単純平均経費率が0.4%~0.5%程度であることと比較すると、かなり低いレートです。
したがって、バンガード社が管理・運用するVTI・VOOはどちらも経費率の点で優れたETFであるため、「投資家サイドのコスト負担割合を軽減したい」と希望するユーザーにおすすめだと考えられます。
6:分配金利回り(配当利回り)
分配金利回り(配当利回り)とは、投資資金に対して1年間でいくらの分配金・配当が得られたかを示す指標のことです(コンテンツによって分配金・配当の用語がさまざまですが、「投資によっていくら利益が出ているのか」を知るツールだと理解すれば問題ありません)。
VTIとVOOの分配金利回り等のデータは次の通りです(2022年9月27日段階)。
直近配当額 | 直近配当利回り | 3カ月トータルリターン | 3年トータルリターン | 5年トータルリターン | |
---|---|---|---|---|---|
VTI | 0.7955 | 1.75% | -6.08% | 8.26% | 8.97% |
VOO | 1.4692 | 1.75% | -6.10% | 8.90% | 9.67% |
ここから分かるように、利回りやトータルリターンについて、VTIとVOOでは大きな差はありません。これは、VTIもVOOも、結局は米国株式市場の大型株式銘柄の影響を共通して受けるものだからです。
したがって、VTIとVOOのどっちに投資すべきか判断する際に、配当金やトータルリターンの差を特に重視する必要はないと考えられます。
7:パフォーマンス推移
さいごに、VTIとVOOそれぞれのパフォーマンス推移を見ていきましょう。
まずは、VTIの過去5年のパフォーマンス推移です。

引用:Bloomberg
次に、VOOの過去5年幅のパフォーマンス推移はこちらのようになります。

引用:Bloomberg
さいごに、VTIとVOOのパフォーマンス推移を合わせて表記したものがこちらです(青:VTI、赤:VOO)。

引用:Bloomberg
ここからも明らかなように、VTI・VOOのパフォーマンス推移はかなり近似しています。対象指数の観点からも、両者がまったく別の値動きをすることは想定しにくいでしょう。
したがって、VTI・VOOどっちに投資すべきかを迷ったとしても、過去チャートの推移を決定打にするのは難しいと考えられます。
VTI・VOOのどっちがおすすめか判断するときにチェックするべき注意点6つ
さいごに、VTIとVOOのどっちに投資するべきか迷っている人が抱くよくある疑問・注意点を紹介します。
- VOO・VTIと一般投資信託の違い
- VOO・VTIと株式の違い
- VTI・VOOを両方買うメリット・意義
- VTI・VOOで配当金生活を目指す可能性
- VTI・VOOに投資するメリット・デメリット
- VTI・VOOと税金の問題
VTI・VOOなどのETFと一般の投資信託は何が違いますか?
ETFと一般投資信託の主な違いは「上場の有無」ですが、その他にも次のような相違点が見られます。
比較項目 | ETF | 一般投資信託 |
---|---|---|
上場の有無 | あり | なし |
取引のタイミング | 取引所の営業時間内 | 1日1回 |
価格変動 | リアルタイムで刻一刻と | 1日1回基準価格が決定される |
最低取引金額 | 1単元 | 金融機関ごとに最低額を指定 |
このように、ETFには一般投資信託にはない上場株式的な要素が存在すると考えられます。
VTI・VOOなどのETFと株式は何が違いますか?
確かに、一般投資信託と比較をすると、ETFには”上場株式的”な要素が含まれます。
しかし、株式は特定企業の業績等によって株価が左右されるのに対して、ETFはターゲット企業群全体の動向が損益に関わるものです。
つまり、「特定企業の業績に左右される」という意味で株式はリスクが大きいのに対して、ETFなら分散投資によるリスクヘッジが可能だと考えられます。
したがって、「リスクをとってでも特定企業にベットしたい」という人に株式投資はおすすめですし、「分散投資で堅実な投資行動をとりたい」という人にETFは向いているといえるでしょう。
VTIとVOOを両方買うのはありですか?
VTIとVOOのどっちに投資するかを迷っている人のなかには、「選ぶのに悩むくらいなら両方買うのが賢い方法では?」と考え至る人も少なくはないでしょう。
確かに、VTIとVOOは二者択一の関係にあるわけではないので、両方買うという選択肢は間違いではありません。
ただし、VOOのターゲット銘柄はすべてVTIに含まれていることを前提にすると、「わざわざ投資対象を狭めるVOOを選択する理由は少ない」というのもひとつの考え方です(逆に、大型株式銘柄以外の米国株への投資を避けたいのならVOOを選択するという決断に至るはずです)。
そもそも、VTI・VOOなどの米国ETFは、各金融商品それ自体が「分散投資によるリスクヘッジ」というメリットを備えたものであるということを思い出してください。
にもかかわらず、すでにリスクヘッジが成功している投資商品についてさらに投資対象を分散しても、そこに何かしらのメリットを見出すのは難しいでしょう。
したがって、VTI・VOOを両方買うのは間違いではありませんが、基本的にはVTI・VOOのどっちかに投資対象を絞って取引することをおすすめします。
VTIやVOOで配当金生活は送れますか?
VTIやVOOで配当金生活を送るのは不可能ではありません。ただし、両者の直近配当利回りが1.75%であることを踏まえると、VTI・VOOで配当金生活をするための必要資金はかなり高額になる点に注意が必要です。
人によって生活水準は異なりますが、たとえば、「毎月10万円ペースで配当金があればそれだけで暮らせる」というケースについて考えてみましょう。
「1カ月で10万円」ということは、「1年で120万円」の配当金が必要だということ。つまり、以下の計算式が成立することになります。
※配当に対する税金のみ考慮
すると、VTI・VOOで手取り年120万円を達成するには、約8,600万円の必要資金を用意しなければいけないということが分かります。
数千万円単位の自己資金を多いと感じるか少ないと考えるかは投資家それぞれの経済力次第ですが、基本的に「これからVTI・VOOを始める」という段階の人にとっては非現実的な数字でしょう。
したがって、VTI・VOOで配当金生活を狙うのは相当の資金が出来てからの話で、まずは1ステップずつ取引経験を積みながら、米国ETFについてしっかりと知識を得ることを第一目標にすることをおすすめします。
VTI・VOOなどの米国ETFに投資するメリット・デメリットは何ですか?
米国ETFにもさまざまな投資商品があるので一概には言えませんが、一般的にVTI・VOOに代表される米国ETFには次のようなメリット・デメリットがあると考えられています。
- 米国ETFに投資するメリット
- ・リアルタイムで投資できる(日本時間で23時30分~翌6時00分、サマータイムなら22時30分〜翌5時00分)
・最低1口から投資できる(日本株のように単元株制度が存在しない)
・リスクヘッジしやすい(少額分散投資の効果)
・経費率が低いので低コストで投資できる
・アメリカは投資が盛んなので成長見込みが強い - 米国ETFに投資するデメリット
- ・情報量が少ない(情報収集に手間がかかる)
・満足する取引のためには英語力は必須
・リアルタイムで投資できるが取引時間帯は深夜~早朝
・米国への投資によって海外に資金が流出する
・為替リスクと隣り合わせ
VTI・VOOに投資した場合の税金はどうなりますか?
VTI・VOOの配当金・分配金にかかる税金には注意が必要です。
というのも、VTI・VOOの配当金・分配金に対しては、日米租税条約に基づいて米国内で税率10%分が源泉徴収され、その残価について日本国内で税率20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、地方税5%)の割合でさらに源泉徴収されるからです。つまり、米国ETFは常に二重課税状態にあるということを意味します。
なお、外国税額控除制度を利用すれば、米国にて源泉徴収された金額を国内課税分から減額することができます。ただし、外国税額控除制度を利用するには確定申告が必要となる点についてご注意ください。
VTI・VOOはどっちも優秀なETF
バンガード社が運用・管理するVTI・VOOはどっちも優秀な米国上場投資信託です。
短期的なスパンで見ると相場の下落機会に見舞われた時期も散見されますが、VTI・VOOは中長期スパンなら基本的には成長トレンドの渦中にあるといえるでしょう。
外国金融商品に挑戦するなら、できるだけリスクを排除しながら低コストで投資できる商品を選択するのがポイントです。その点で、VTI・VOOは投資初心者にもなじみやすいものなので、ご興味の方はぜひ投資をご検討ください。