これから投資を始めようとしている人には、とりあえず簡単にお試しをしてみたいと思っている人もいるのではないでしょうか。また、すでに投資をしている人でも、複雑な機能はいらないからシンプルに取引できればいいという人もいるかもしれません。
そのようなときにはスマホ証券は便利な証券会社といえます。スマホでの取引に特化しているため機能がシンプルで、ユーザーインターフェースもスマホに最適化されてとても見やすいものになっています。
その分、複雑な注文ができないといったデメリットもありますが、最初から複雑なことをしなくてよいと決めていればこのようなデメリットはなくなります。
この記事ではスマホ特化の証券会社として有名な「LINE証券」と「PayPay証券」を紹介します。どのようなサービスの違いがあるのか、そもそもスマホ証券をどのように利用していけばよいのかを簡単に紹介していきます。
これから投資を始めたい人、シンプルな取引だけできればよいと考えている人は是非ご覧ください。
LINE証券の基本情報

出典:LINE証券
LINE証券はLINE傘下の中間持株会社「LINE Financial」と「野村ホールディングス」の共同出資により設立され、2019年11月よりサービス開始したいわゆる「スマホ証券」です。
2021年10月末に口座開設数が100万件を超えたことがLINEのニュースリリースで発表されました。

出典:LINE証券
PayPay証券の基本情報

出典:PayPay証券
PayPay証券はソフトバンク株式会社の子会社の証券会社で2016年6月1日ネット証券事業に参入しました。当初は「One Tap BUY」という名称でサービス提供していましたが、2021年よりPayPay証券に商号が変更になっています。
PayPay証券の国内現物(単元未満株含む)は少し特殊で、1株といった購入ではなく1,000円といった金額指定で購入することが可能です。単元未満株と同様少額から株式の取引ができるのはメリットといえます。
また、PayPay証券では米国株への投資も可能です。スマホ取引で国内株も米国株も取引きができるのはLINE証券にはない特徴です。

出典:PayPay証券
PayPay証券は入出金するのにコストがかかるのがデメリットです。通常証券会社は入出金無料の方法があるものですが、2022年9月現在だとPayPay証券は方法がかなり限られています。
それに近いのが、おいたまま買付(銀行口座に余力があったらリアルタイム送金するような仕組み)で2万円以上の利用だと送金手数料が無料になりますが、スマホ証券では少額取引したいこともおおいので、少しちぐはぐしたイメージです。

出典:PayPay証券
LINE証券証券とPayPay証券の比較
LINE証券とPayPay証券の取引サービスの比較表です。
大きな違いは米国株の取扱有無とNISA(つみたてNISA)の取扱有無となります。米国株はPayPay証券のみ取扱っており、つみたてNISAはLINE証券のみ取り扱っています。
取扱サービス | LINE証券 | PayPay証券 |
---|---|---|
国内現物株 | 〇(約3,700銘柄) | 〇(約160銘柄) ※金額指定購入可能なため、単元未満株との区分けなし |
単元未満株 | 〇(いちかぶ) | 〇 |
投資信託 | 33銘柄 | 2銘柄 |
IPO | 11社(2021年実績) | 0社(2021年実績) |
米国株 | ×取扱なし | 〇(約180銘柄 ※ETF含む) |
NISA(つみたてNISA) | 9銘柄 ※つみたてNISAのみ | ×取扱なし |
ポイント | LINEポイント | PayPayポイント |
キャンペーン | 口座開設時キャンペーンあり セールキャンペーン随時 |
口座開設時キャンペーンあり 通常時はあまりなし |
その他 | LINEPay払いがお得 | PayPay払いがお得 |
※2022年9月4日現在
国内現物株の手数料ではLINE証券がお得
国内現物と単元未満株の手数料は以下のようになっています。
【LINE証券国内現物】
LINE証券の国内現物株は、ネット証券大手の約定代金事の取引手数料と同水準の手数料体系となっています。(LINE証券の手数料はSBI証券のスタンダードプランの手数料と同じ手数料です)
約定代金 | 手数料 |
---|---|
~5万円 | 55円 |
~10万円 | 99円 |
~20万円 | 115円 |
~50万円 | 275円 |
~100万円 | 535円 |
~150万円 | 640円 |
~3,000万円 | 1,013円 |
3,000万円超 | 1,070円 |
【LINE証券 単元未満株】
LINE証券の単元未満株は取引手数料ではなく基準価格にスプレッドを上乗せすることで取引コストが発生します。また、グループと取引時間によってスプレッドの率が変化します。

出典:LINE証券
【PayPay証券 国内現物手数料】
PayPay証券の国内現物株もLINE証券の単元未満株のようにスプレッド方式を採用しています。
時間帯 | スプレッド |
---|---|
東京証券取引所の立会時間内 ※午前立会(前場)は午前9時から午前11時30分まで、午後立会(後場)は午後0時30分から午後3時 |
「基準価格」に0.5%を乗じた価格 |
上記以外の時間帯 | 「基準価格」に1.0%を乗じた価格 |
こちらもLINE証券と同様に時間帯によってコストが変わる点に注意してください。LINE証券と同じく東京証券取引所の立会時間内に取引するようにしましょう。
■単元株(100株)を購入した場合
LINE証券の現物取引では、1,100円×100(1単元)=11万円が約定代金となります。この場合、取引手数料は115円(税込)です。
PayPay証券で株価1,100円の銘柄を100株購入した場合、同様に11万円の購入なので11万円×0.5%となり、手数料は550円(税込)です。
■単元未満株で1株だけ購入した場合
LINE証券の場合、1,000円×0.35%=3.5円(スプレッドを含めると1004円での取引)
PayPay証券の場合、1,000円×0.5%=5円(スプレッドを含めると1005円での取引)
わずかな差ですが、こちらもLINE証券のほうがお得に取引できます。
※どちらも東京証券取引所立会時間内での取引で計算しています。
国内現物株はLINE証券のほうがよいが、PayPay証券は金額指定ができる
国内現物株についてですが、まず取扱銘柄数に大きな差があります。PayPay証券は約160銘柄で、国内有力企業しか取引できないのはかなりのデメリットといえます。

出典:PayPay証券 取扱銘柄の一部
LINE証券は東京証券取引所上場銘柄約3,700銘柄が取引可能ですので、取引可能な銘柄が多いという点でLINE証券での取引のほうがおすすめです。
ただし、PayPay証券は金額指定で購入可能という特徴があります。PayPay証券で取引可能な銘柄で少額だけ取引したいということであればPayPay証券での取引でもよいかもしれません。
単元未満株はLINE証券のほうがお得になることが多い
単元未満株に関してもLINE証券のほうがお得になる可能性が高いです。
LINE証券の単元未満株のコストとPayPay証券の国内現物株のコストはどちらもスプレッド方式を採用していますが、東京証券取引所の立会時間内であれば、コストはLINE証券は「0.35%」、PayPay証券は「0.5%」です。
取扱銘柄数、取引コストともにLINE証券のほうが有利です。さらに、LINE証券ではアフタヌーンセールやナイトセールなどのキャンペーンが開催されることも多く、取引手数料無料で買付できることもあります。
米国株を取引するならPayPay証券でしかできない
米国株を取引したいのであればPayPay証券を選びましょう。LINE証券は2022年9月現在では米国株の取扱はありません。
IPOならLINE証券だが、他の証券会社も利用する
過去の実績からもIPO申込で利用するならLINE証券です。
LINE証券は野村証券主幹事のIPO銘柄を取り扱っていることがあるようです。2021年実績は11社、2022年9月時点では2022年は6社となっています。
PayPay証券はIPOも少額から投資可能なのがメリットだと紹介されていることがあります。仕組み上はそうですが、過去の取扱実績は1社だけですので、PayPay証券をIPOで利用することは現実的ではありません。
ただし、LINE証券でIPOを申し込む場合でも、LINE証券1社ではなく複数の証券会社で申し込むほうが当選の確率があがります。他の証券会社の口座開設もしておき、申し込みできる証券会社を増やしておくことをおすすめします。
投資信託はどちらも取扱数が少ない
投資信託を利用するならLINE証券です。
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
といった購入しても良い投資信託はいくつか準備されています。
一方、PayPay証券は以下の2銘柄しか購入することができません。
- One グローバルバランス
- グローバルESGハイクオリティ 成長株式ファンド(為替ヘッジなし)
どちらも信託報酬が1%を超えており、購入を控えたほうが良い投資信託です。
ただし、投資信託をあえてLINE証券やPayPay証券で購入する必要はなく、こちらもSBI証券や楽天証券、マネックス証券といった大手ネット証券で購入することをおすすめします。
LINE証券ならつみたてNISAが利用できる(ただし非推奨)
2022年2月9日にLINE証券でつみたてNISAサービスが提供開始されるニュースリリースが発表されました。現在はLINE証券でつみたてNISAが利用できます。
つみたてNISA対象の商品は、2022年9月4日現在では以下の9銘柄です。
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
- eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
- ひふみプラス
- コモンズ30
- 野村スリーゼロ先進国株式投信
eMAXISシリーズのメインどころの投資信託がそろっていますので、LINE証券でつみたてNISAを利用するのは必ずしも悪いわけではありません。ただし、NISA口座への切り替えができないこと、そもそも投資信託の商品数が少ないことなどからあまりおすすめはできません。
NISA口座はできるだけ総合的なサービスに優れた証券会社(SBI証券や楽天証券など)で開設したほうが取引の幅は広がります。
口座開設キャンペーンを利用したいならLINE証券
口座開設キャンペーンはLINE証券が非常に優れています。
2022年9月現在、口座開設をするとクイズに正解すれば1,000円分の株がもらえるキャンペーンと、口座開設翌月までに1取引で1万円以上のいちかぶ取引をすれば3,000円がもらえるキャンペーンを実施しています。
口座開設後取引開始が早いのはLINE証券
LINE証券の口座開設は最短申込翌日から取引が可能です。(オンライン上で本人確認可能な「かんたん本人確認」を利用した場合)

出典:LINE証券
利用しやすい決済方法の証券会社を選んでもよい
LINE証券ではLINEPay、PayPay証券ではPayPay払いが便利です。
LINE証券でつみたてNISAを利用するのであれば、LINEPayは必須です。
PayPay証券ではPayPay払い以外の決済方法だとコストが余計にかかるため、実質PayPay払い一択といっても過言ではありません。
どちらも購入が可能な銘柄で、どちらの証券会社を利用してもよいということであれば、新しい決済方法を登録するのは手間なので、LINEPayかPayPay払いの利用しやすい決済(すでに利用しているなど)で選ぶというのも悪くありません。
ポイント投資が可能なのはLINE証券
LINE証券ではLINEポイント、PayPay証券ではPayPayポイントが関連するポイントになります。
LINE証券ではLINEポイントを実際に投資資金の変わりに利用することができます。(1ポイント=1円で入金可能)
PayPay証券のPayPayポイントは実際に投資資金として利用できるわけではありません。
増減したポイントを引き出すことで、またお買い物に利用することも可能です。
PPSCインベストメントサービスーPayPayポイント運用とは
どちらの決済方法が使いやすいかを優先したほうがよいですが、実際に投資資金として利用できるのはLINE証券となります。
スマホ証券での取引に向いている人
スマホ証券の取引に向いているのは基本的には以下のような人になります。
- これから投資を開始しようとしており、投資を簡単に試してみたい人
- 単元未満株の取引のみ考えている人
- 投資は国内現物のみ(単元未満株含む)で、複雑な注文などが不要な人
- 外出先などでスマホで簡単に取引したい人
LINE証券やPayPay証券などのスマホ証券に向いているのは、基本的に投資初心者や少額で取引したい人ということになります。
また、PCではなくスマホで取引したい人には適しています。スマホ証券はスマホに特化したインターフェースをしているので、複雑なことは不要でシンプルに取引したい人にはおすすめです。
スマホ証券での取引に向いていない人
逆にスマホ証券の取引をおすすめしない人はこのような人です。
- 様々な金融資産を試してみたい人
- 取引のコストを抑えたい人
- 米国株を含む外国株へ投資したい人
- NISA(つみたてNISA)を利用したい人
スマホ証券は全体的なサービスが優れているというわけではありません。特定のサービスやスマホの取引といったものに特化しています。
そのため、本格的に投資をしたいという人にはスマホ証券は物足りなくなる可能性が高くなります。また、LINE証券ではつみたてNISAを利用できますが、NISA口座は1人1口座しか利用できず複数の証券会社で開設することができませんので、スマホ証券でNISA口座を利用しないほうがよいと考えます。
LINE証券とPayPay証券の併用はあまり意味がない
LINE証券とPayPay証券は取扱サービスも少し違いますが、スマホ証券の併用はあまり意味がないといえます。
スマホ証券と併用するのであれば、「SBI証券」や「楽天証券」などのサービスが充実した証券会社をメインに利用して、スマホで取引するときにはスマホ証券を利用するという併用の仕方のほうが利用しやすくなります。
サービスは若干ちがうが、LINE証券のほうが使いやすい
LINE証券とPayPay証券を比較するとLINE証券のほうが使いやすい印象があります。
LINE証券とPayPay証券の特徴をまとめると以下のようになります。
- スマホ証券はこれから投資を考えている投資初心者が利用するのに適している
- 国内現物(単元未満株含む)はLINE証券のほうが使いやすい
- 米国株はPayPay証券でしか利用できないが、PayPay証券の取引銘柄は約160銘柄
- つみたてNISAはLINE証券で利用できるが、大手ネット証券で利用したほうがよい
- スマホ証券は取扱サービスが少ないため、投資初心者以外には物足りない
LINE証券は口座開設時のキャンペーンなども利用しやすいため、投資初心者が投資をまず試してみたいという人にはおすすめな証券会社といえます。
とはいえ、PayPay証券も少額取引はしやすい証券会社なので、PayPay払いを普段から利用しており、まずは投資のイメージを知りたいという人にはPayPay証券を利用するのも悪くありません。
ただし、最終的に投資を本格的に実施したい場合にはスマホ証券では足りなくなってくる可能性が高いです。基本的にスマホ証券はメイン取引で利用するのではなくサブ取引として利用するほうがよいでしょう。
スマホ証券の口座開設と並行して、「SBI証券」や「楽天証券」などのサービスが充実した証券会社も口座開設しておくことをおすすめします。