退職金の運用方法は何がおすすめ?リスクが低い運用のやり方とおすすめ金融商品を紹介します

退職金の運用方法は何がおすすめ?リスクが低い運用のやり方とおすすめ金融商品を紹介します 株の基礎知識

老後2000万円問題という言葉を記憶している人も多いのではないでしょうか。

この話は、2019年に行われた金融庁の金融審議会の報告書で、「老後の30年間で約2,000万円が不足する」と発表されてかなり話題(問題?)になりました。

本当に老後に2000万円不足するのかが正しいかは別にして、「年金だけでなく、自分でもお金を貯めないとまずい」と感じる人は多かったはずです。

2000年頃から「貯蓄から投資へ」のスローガンが掲げられ、政府も国民の資産形成を後押ししようとしています。今まではなかなかうまく進んでこなかった印象ですが、「NISA」制度が作られてから徐々に投資への意識が高まってきていると感じます。

2022年8月23日の日経新聞夕刊で「NISA上限引き上げへ 金融庁、恒久化も検討 月内に税制改正要望」という見出しがありました。

今のNISA制度よりもさらに非課税投資枠を拡大させるなど、制度の拡充を図ろうとしています。それだけ国も投資への流れを加速させようとしています。
日経新聞

参考:日経新聞 8/23夕刊

さて、NISA制度が拡充されたとして、投資を日常的に行っている人は問題ないかもしれませんが、今まで投資をしてこなかった人がいきなり投資するといっても失敗してしまう可能性は高いです。

今まで投資をしてこなかった人が急に投資することになる1つの要因は退職金である程度まとまったお金ができるからということが考えられます。

この記事では、「退職金が出たら運用をしたほうがよいのか?」「どうやって運用をしたらよいのか?」といったことを簡単に説明していきます。

すでに退職金をもらってどうしようか迷っている、これから退職金をもらう予定という人も参考にしてください。

退職金の運用がなぜ必要なのか

「退職金の運用を必ずしないといけないのか?」というと、人によるというのが実際のところです。すでに多くの余剰資金をもっており、何もしなくても今後の生活に支障がなければ無理に運用する必要はありません

ただ、現実的には多くの人が少なからず将来に不安を持っているのではないでしょうか。

この記事は不安を煽りたいわけではありませんので、客観的な事実を紹介しつつ退職金を含めまとまったお金ができるのであれば運用を考えてみてはいかがでしょうかという理由を説明します。

日本の男性平均寿命は約81歳

厚生労働省が発表している「令和3年簡易生命表の概況」では、日本の男性平均寿命は約81歳、女性の平均寿命は約85歳でした。

徐々に平均寿命は延びてきており、医療の進化なども考えると今後もさらに伸びる可能性は高いと考えられます。

平均寿命の推移
西暦(年) 男性(歳) 女性(歳)
1980 73.35 78.76
1990 75.92 81.90
2000 77.72 84.60
2010 79.55 86.30
2020 81.56 87.71

※厚生労働省の令和3年簡易生命表の概況(参考資料2 主な年齢の平均余命の年次推移)を元に作成 

今後想定よりも長く生きる可能性が高くなるのであれば、余剰資金は多く持っておいたほうがより安全安心して暮らしていけるということです。

ゆとりある老後生活費は月36万円

公益財団法人生命保険文化センターによると、夫婦2人で老後生活をおくる平均日常生活費は約22万円となっています。旅行やレジャーを含めたゆとりある老後生活費は約36万円ということです。

生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/令和元年度

さすがに36万円は言い過ぎかもしれませんが、月36万円で計算してみましょう。

36万円 × 12カ月 = 432万円/年
82歳まで生きるとして60歳から82歳まで22年間
432 × 22 = 9504万円
60歳以降で約1億円のお金が必要になります。
一方、年金がいくらもらえるでしょうか。こちらも人によって異なりますが、厚生労働省年金局が作成した「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」では平均年金月額は以下のようになっています。
年齢 厚生年金(第1号)(円) 国民年金(円)
60~64歳 75,922 42,306
65~69歳 143,069 57,502
70~74歳 145,705 57,010

仮にもらえる年金額が平均20万円だとします。

20万円 × 12カ月 = 240万円/年
240万円 × 22 = 5280万円
単純に計算すると、約4000万円程度不足しそうです。
もちろん、60歳以降も働いたり、そこまでにお金を貯めれば問題ないかもしれませんが、退職金はこの不足分を補うために使いやすいお金であることは間違いありません。

早期退職や希望退職募集が増えている?

個人的には悪いことではないと思っていますが、転職も一般的になり、以前よりも1つの会社に勤め続ける人が減ってきています。最近では企業も早期退職者や希望退職者を募集することがあります。こうすることで企業としてはコスト削減を測れるからです。

早期退職や希望退職はプラスの印象が少ないかもしれませんが、うまく使うことができれば効率よく資産を殖やすことができます。

希望退職者などを募集する場合、退職金が通常よりも上乗せされることも多いです。

希望退職などで早めに退職する場合、次の会社で働き続けるという人も多いと思います。そうなれば、働き続けつつもまとまったお金が手に入ります。まだ働くつもりなのであればある程度リターンを狙いつつリスクをとった投資をするのも悪くありません。

ある程度長期間投資の時間をとれ、リスクもとることができるという点では、早期退職や希望退職なども悪いばかりではありません。

インフレや円安で資産が目減りする

退職金だけに関わらず、投資をせずに預貯金や現金だけで資金を保有していると、元本は減りません。ただし、「インフレ」や「円安」が発生すると、実質的に資金が目減りしてしまいます。

2022年は為替レートが「1ドル=115円」程度から「1ドル=140円」近くまで円安に動いたことは頻繁にニュースにもなりました。

「インフレ」に関しては、米国の利上げの要因にもなっており、海外ではインフレが起きている認識があると思いますが、実は日本でもインフレは発生しています。

財務省統計局のデータでは、日本でも2%程度のインフレは起こっていることが発表されています。

仮に年2%のインフレが発生すれば、今年1万円で購入できたものでも来年には1万円では購入できなくなるかもしれません。少なくともインフレ率以上の運用をしないと資産が目減りすることになります。

また、ドル円で円安が発生すれば、ドル資産の価値が高まるため、米国株への投資などをしていれば資産が効率よく殖えていきます。

下のTwitterのように、2022年は米株式などで運用している投資家は株価の増加以上に資産が大きくなっていることを実感しています。

退職金の運用方法は?

ここまでは、退職金は運用したほうがいいということを説明しましたが、実際の運用はどのようにするのが良いのでしょうか。

ここでは一般的な定年退職で退職金がもらえた前提で解説していきます。

定年退職で退職金をもらえた場合、一番気をつけたいのは投資資金を減らさないことです。
そのためには以下の点は守るようにしましょう。

  • ローリスク・ローリターンの商品で運用する
  • できる限りコストを抑える
  • 分散投資をする
  • NISAを利用する

運用するならネット証券を利用しましょう

この記事を読んでくれている方であれば問題ないかもしれませんが、運用するのであればネット証券を利用しましょう。

「SBI証券」や「楽天証券」、「マネックス証券」のような大手ネット証券会社であればどの証券会社でもサービスが充実しています。

ネット証券では口座を保有していれば利用できるサービスもあり、お得に取引できる金融商品が違う場合もあるので、複数証券会社の口座を保有しておくと便利に使えます。

一方、銀行などでも投資信託やファンドラップなどの金融商品を購入することができますが、これはあまりおすすめできません。上でも説明した通り、コストを抑えることが投資を成功させる要因の1つですが、銀行で購入する金融商品はコストがかなり高くなります。

仕方ないことですが、銀行の営業マンなどは金融商品などを進めてくることもあります。残念ながらほとんどの場合、コストが高く最適な投資とは言えないものが多いです。

まずは老後に必要な資金を確認しましょう

投資をするときには目的なく投資をするよりも、「いつまでに」「どのくらいの」お金が必要なのか整理しておくと、アセットアロケーション(資産配分)やどの程度のリスクをとるかを決める参考になります。

先ほど平均日常生活費は月に約22万円、ゆとりある老後生活は月に約36万円という説明をしましたが、人によってこの金額は異なるので、自分の状況に合わせてもう少し細かく確認するようにしましょう。

  1. 日常生活で使うお金
  2. 近い将来で使うことが決まっているお金
  3. 当面使う予定のないお金

 

退職金で投資に回すのは③のお金になります。①②は現金か預貯金で持っておいても良いでしょう。

日常的に使うお金や、今後使うことが決まっているお金を無理のない範囲で抑えていくことも資産形成の上では重要です。
①②から今後必要になりそうなお金を計算した結果と、現在の余裕資金や退職金がいくらくらいもらえるかの割合により、投資のリターン目標を決めるようにしましょう。

リスクを大きくとらないようにしましょう

退職金の運用で一番気をつけたいのは投資資金を減らさないことだと言いましたが、これは定年退職を60歳程度とした場合、投資に失敗した時に取り戻す時間が短いからです。早期退職などで早めにまとまったお金が手に入るのであれば、もう少しリスクをとっても大丈夫です。

リスクを大きく取らずに運用していくコツを紹介していきます。

低リスク低リターンの商品を中心に運用する

投資は原則として「ハイリスク・ハイリターン」「低リスク・低リターン」です。日本証券業協会では金融商品のリスクとリターンをこのようなイメージで紹介しています。

投資のリスクとは、暴落する可能性があるということではなく、「リターンが予測できない(振れ幅が大きい)」ことを指します。

例えば来年確実に10%株価が下落する銘柄はリスクがあるということにはなりません(当然投資先としては適さないですが)

債券は償還期限まで保有すれば額面で償還されるため、リスクが少ない(リターンが予測しやすい)金融商品に分類されています。

投資信託は1銘柄の中で資産が分散されていたり、銘柄が分散されていたり、投資先の地域が分散されていたりするので組み入れられている1つの資産が大きく下落しても銘柄全体としての下落は限定的となります。

退職金で運用する場合、このようなリスクが低めの商品に多くの割合を投資することをおすすめします。特に投資信託は後述するNISA(つみたてNISA)も活用でき、比較的わかりやすく安全な金融資産だといえます。

とはいえ、個別株式などへの投資がNGというわけではありません。株主優待や配当利回りが高い銘柄へ投資している投資家も多いです。ただし個別銘柄の場合は十分に分析をして納得してから購入しないと、それ以上に株価が下落して損をする可能性もあります。

個別株や株式を組み入れている投資信託などは、その銘柄の業績が良くても、市場全体が下落基調であったり、米国市場為替といった他の影響を受けて下落することがあるのが難しいところです。

コストを抑える

投資のリターンを大きくするには、余計なコストを抑えることが重要です。金融商品の取引で発生するコストの多くは手数料です。

ネット証券は銀行や店頭証券会社よりもコストが抑えられるので、資産運用でネット証券を利用するのは基本になります。

誰かに相談しながら投資しないと判断できないという人もいるかもしれませんが、銀行や証券会社の担当者に相談するのは、実は高くつくということは理解しておいたほうがよいでしょう。
さらにいえばそれで最適な投資商品を提案してくれるとは限りません。(投資家にとってよい商品は銀行や証券会社からすると利益が少ないことも多いからです)
それであれば、次に紹介するようなコストが少ない商品を機械的に購入するほうがよいと考えています。
先ほど退職金で運用する金融資産として投資信託がおすすめとお伝えしました。投資信託では主に次の3つがコストとして発生します。
  • 買付手数料
  • 信託報酬手数料
  • 信託財産留保額

詳しい説明は割愛しますが、購入時には「買付手数料」、売却時に「信託財産留保額」、保有し続ける間「信託報酬手数料」が発生すると考えてください。

このうち、「買付手数料」と「信託財産留保額」は無料の商品も多数あります。基本的にこの2つが発生しない商品を選びます。

「信託報酬手数料」はどの商品でも発生しますが、できる限り低い商品を選びます。正解はありませんが、0.2%程度を基準にそれより信託報酬手数料率が低い商品を選びたいところです。各社の投資信託サーチ機能で簡単に検索することが可能です。(下図はSBI証券の投信パワーサーチ)

出典:SBI証券

 

分散投資する

分散の方法にはいくつかの方法があります。

  • 資産の分散
  • 銘柄の分散
  • 投資先の国や地域の分散
  • 時間の分散

 

資産の分散は株式や債券、金などのコモディティといったように複数の資産で運用することです。仮に株式で複数銘柄に分散していても株式市場全体が下落基調の場合、全体がマイナスになる可能性が非常に高くなります。

したがって、株式をメインに運用するとしても、株式とは異なる動きをしやすい資産もあわせて投資することでリスクを抑えることができます。例えば、一般的には株式市場が不調の時は債券価格は上昇しやすくなります。

ポートフォリオ(具体的な商品の組み合わせ)」よりも「アセットアロケーション(資産配分の組み合わせ)」のほうがより重要だと言われる理由です。
銘柄の分散は、複数の銘柄に投資することでリスクを下げることです。1つの銘柄が下落しても他の銘柄が下がらなければ全体としての下落率を抑えることができます。
国・地域の分散は、その名の通り、日本以外の国や地域にも分散させることでリスクを下げます。特定の国で政治や経済の状況により大きな影響を受けるようなリスク(カントリーリスク)にさらされた場合でも地域を分散させて投資することで影響を限定的にできるということです。
ここまでの3つの分散方法「資産の分散」「銘柄の分散」「国・地域の分散」は投資信託を購入することで実現できる分散です。(商品によって1つだけに当てはまる商品もあれば、すべてに当てはまる商品もあります)
簡単に分散投資できるところも投資信託をおすすめできる理由です。
そして、「時間の分散」も意識しましょう。
時間の分散をするには、「ドル・コスト平均法」と呼ばれる投資方法が適しています。
ドル・コスト平均法とは、ある商品を常に一定の金額で、かつ時間を分散して定期的に買い続ける手法です。株価が高いときには少ない買付け、株価が安いときには多めに買付けることになるので、長期的に見ると平準化されるという考え方です。

ドルコスト平均法を利用した積立は、次に紹介するつみたてNISAなどを利用すると簡単にできるので、このような制度を積極的に利用していくと、効率的に資産形成ができます。

NISAやiDeCoなどの制度を活用しましょう

NISAiDeCoなどの制度は利用しないともったいないので、まだ使っていないようでしたらぜひ利用するようにしてください。

NISA

金融庁 NISA特設ウェブサイト

NISAは投資の運用益が非課税にできる投資の優遇制度です。「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があります。

2022年現在はジュニアNISAもありますが、2023年に廃止になります。
一般NISAとつみたてNISAの主な違いは非課税投資枠と非課税期間です。現在の一般NISAは年間の非課税投資枠は120万円、非課税期間が5年間です。つみたてNISAは非課税投資枠が40万円で非課税期間は20年間となっており、一般NISAと比較してつみたてNISAのほうが長期投資に向いた制度になっています。
NISA口座は1人1口座しか作れません。複数証券口座を開設していてもNISA口座はそのうち1つだけとなります。また、NISA口座とつみたてNISA口座もどちらか一方を選択することになります。
2024年から一般NISAは新NISAに変わる予定ですが、冒頭でも紹介した通り、NISA非課税投資枠の上限引き上げや非課税期間の恒久化などNISA拡充の話が出てきています。新NISAは非課税投資枠が2階建て方式になるなど複雑化しているので、もしかすると2024年の新NISAはさらに制度が変わるかもしれません。

iDeCo

iDeCoも国が用意している投資の優遇制度ですが、どちらかというと個人年金の側面が強い制度です。
iDeCoの主なメリットは以下の2点です。
  • 運用益が非課税になる
  • 掛金が全額所得控除になる

退職金はもらえたけど、引き続き働く予定のある人などはiDeCoを利用するとメリットを活かすことができます。

ただしiDeCoには気をつけたい点があります。

  • 原則60歳まで引き出し不可
  • 投資できる商品が少ない

といったデメリットもあるので、利用する際にはよく検討するようにしてください。

具体的な運用商品は

ここからは具体的な金融商品について説明していきます。退職金を運用する際にはローリスク・ローリターンな金融商品のほうがよいということをお伝えしました。

金融商品には様々な種類がありますが、おすすめできる商品とあまりおすすめできない商品もあるのでそれぞれ紹介します。

おすすめできない商品も絶対投資してはいけないわけではありませんが、リスクが高いものもあるので、よくわからず勧められたから投資するということはしないようにしてください。

おすすめ商品

おすすめできる商品は比較的ローリスクローリターンな商品です。特に投資信託は様々な種類があり、分散投資しやすいので今まであまり投資してこなかった人にもおすすめです。

投資信託・ETF

投資信託やETF(上場投資信託)は様々な商品が存在するため、分散投資がしやすい金融商品です。

投資信託とETFの違いは上場の有無で、ETFは上場しているので、株式と同じようにリアルタイムで購入することができます。(投資信託の基準価額は終値を基準に1日1回決まります)

投資信託とETFは、どちらが優れているということはありませんが、つみたてNISAを利用するのであれば投資信託を選びましょう。

また、現在は米国株への投資環境がかなり整ってきたので、米国ETFへの投資も人気があります。米国ETFは商品の種類が豊富で、セクター(日本でいう業種に近い分類)ごとのETFや、高配当ETF、配当よりも成長が期待できるETFなど様々です。

米国ETFは経費率(信託報酬手数料とほぼ同じ意味合い)が低いものも多く、例えばバンガード S&P 500 ETF(VOO)(S&P500指数に連動するETF)の経費率は0.03%と、同指数に連動する投資信託よりもかなり安くなっています。(S&P500に連動する投資信託の経費率は0.0938%程度)

米国株式や米国ETFなど外国株取引の場合、配当金は米国でも課税され二重課税となります。これを回避するには確定申告で外国税額控除の申請が必要になります。
これらが面倒な人は米国市場に投資したい場合でも国内市場から米国のインデックスに連動する投資信託へ投資するほうがおすすめです。
<おすすめ銘柄>
銘柄 信託報酬手数料/経費率 純資産 備考
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 0.0968% 1,453,330百万円 S&P500に連動する投資信託
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 0.1144% 652,951百万円 全世界に投資できる投資信託(米国が約6割)
eMAXIS Slim 国内株式(日経平均) 0.154% 21,041百万円 日経平均に連動する投資信託
eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) 0.154% 159,612百万円 株式、債券、不動産の国内・海外に分散投資できる投資信託
バンガード S&P 500 ETF(VOO) 0.03% 271,595.39百万米ドル S&P500に連動するETF(分配利回り1.49%)
バンガード 米国高配当株式ETF(VYM) 0.06% 米国の高配当銘柄約400で構成されているETF。(分配利回り2.97%)
バンガード 米国ヘルスケア セクター ETF(VHT) 0.10% 16,698.51百万ドル ヘルスケアセクターETF。下落に比較的強く株価上昇も期待できる(分配利回り1.34%)
※2022/8/25時点

預貯金

預貯金は金融商品とはいえませんが、特に年齢が上がるにつれて割合を増やしていくほうがよい資産です。

全てを投資に回すのではなく、徐々に流動資産の割合を増やしていくこともリスク管理の1つです。

おすすめしない商品

こちらはあまりおすすめできない商品です。基本的にコストが高いかリスクが高い商品となります。

ファンドラップ

ファンドラップ」はあなたに代わって、金融機関が資産運用をしてくれるサービスです。ファンドラップは発注から定期的な運用報告まで投資をすべて実施してくれます。

ただし、ファンドラップでの運用はコストが余計にかかることを理解しておきましょう。そして退職金の運用で避けることはコストがかかる投資はしないことです。

そんなことはないと信じたいですが、投資はわからないからお任せしたいという考えでいると、カモにされても気が付かないということになりかねません。
ファンドラップで運用するくらいであれば、上で紹介したような投資信託に自分で投資したほうがはるかに効率的に資産運用できます。
少し勉強すれば、どのような投資がよいのかといったことはすぐにわかると思います。仮に今まで投資したことがなく不安であれば、1年程度少額で投資の練習しても十分投資期間は残されています。
一番まずいのはよくわからないからといって、大金の運用を誰かに任せたり、勧められるまま鵜呑みにしてしまうことです。

信用取引やFXなどレバレッジがかかる商品

信用取引FX(外国為替)はレバレッジをかけることができます。レバレッジとは手持ちの資金を使ってより多額の投資をする投資手法です。

信用取引では約3倍、FXでは数倍~25倍(FXは場合によってはそれ以上も可能)程度のレバレッジをかけることができます。

レバレッジの取引はリターンが大きくなる可能性もありますが、その分損失が大きくなる可能性も秘めています。1回でも大きな損失を出すとそれを取り返すためにさらにレバレッジをかける必要がでてくるといった悪循環に陥る可能性があります。

少なくとも過去に取引をしたことがなく、いきなり実施するということは絶対に避けるべきです。

銀行の退職プランなど

銀行の退職プランなどをおすすめしない理由は、ファンドラップでもお伝えした通り銀行の投資商品はコストが高くなる可能性が高いからです。

退職 プラン 銀行」といった文言で検索すれば、いくつも銀行の退職プランが出てきます。
このような退職プランの運用型は多くの場合「ファンドラップ」や「投資信託」と定期預金を組み合わせたものになっています。

預入期間が3か月や1年といったものが多く、自動更新される場合があるのも注意する点です。運用リターンが出ていますが、どれだけコストがかかっているのかも確認したほうがよいでしょう。

テーマ株や仮想通貨などの流行りもの

テーマ株仮想通貨なども投資上級者以外でなければさわらないほうが賢明でしょう。このようなものは爆発的に人気が出ることがありますが、熱が冷めると一気に下落したり、少しのことで大きく値が動いたりします。

下の図は、SBI証券のテーマ投資の抜粋です。聞いたことがあるようなテーマも多いのではないでしょうか。テーマ投資は常に市場にアンテナを張って流行りの前から仕込めればとても有利に働きますが、テレビや新聞などに出てくるころには旬は過ぎていると考えましょう。

出典:SBI証券

仮想通貨も同じようなもので、仮想通貨で有名なビットコインは2021年11月ごろには1BTC=750万円程度まで上昇していましたが、その後下落が続き、2022年7月ごろには1BTC=270万円程度まで下落しました。実に60%以上の下落です。

イーロンマスク氏一個人の発言でもビットコインが大きく値動きするなど、非常に不安定な動きを見せることが多々あります。ビットコインは仮想通貨の中でも最も有名な通貨なので、その他の仮想通貨ではさらにリスクが高くなるといえます。

人を選ぶ商品

個別株やロボアドバイザーは人を選ぶ商品といえます。個別株に関しては投資する金融資産として悪くないですが、今まで全く投資をしてこなかった人がいきなり大金を投資するにはリスクが高い商品です。

ロボアドバイザーは質問に答えるだけで比較的低コストでアセットアロケーションを設定して、運用を行ってくれますが、自分で購入するよりもコストがかかることは確かです。

個別株

個別株は今まで投資をしたことがある人であれば、投資する金融商品として魅力的です。投資する銘柄の選び方によって、株価の上昇(キャピタルゲイン)を狙うのか、配当(インカムゲイン)を狙うのかなど、投資戦略が変わってきます。

また、日本国内の個別株では株主優待を行っている企業もあるので、株主優待目当てで投資する人もいます。

2022年の東証再編で株主優待を廃止する企業が増えてきています。株主優待を目的とするなら今後継続するかは確認してみたほうがよいでしょう。廃止を予告している企業もあります。
いきなり単元(100株)を購入するのは少し怖いということであれば、単元未満株から始めてみるのもよいでしょう。単元未満株は1株から株式を購入できるので、少額から個別株に投資することができます。今まで投資してきたことがない人が最初に投資するのにも適しています。
単元なのか単元未満なのか、株価上昇を期待するのか配当目的なのかといったことに関わらず、個別株に投資をするのであれば事前に分析をすることは必須です。
最終的には企業の決算報告書や決算短信、中期経営計画などを読み込むのことをおすすめしますが、簡易的に業績をチェックしたいのであればマネックス証券の「銘柄スカウター」がおすすめです。マネックス証券の口座を保有していれば利用でき、過去の業績が非常に見やすいツールです。理論株価といった項目もあるので、分析が苦手な人でも参考になります。

出典:マネックス証券 銘柄スカウター

ロボアドバイザー

ロボアドバイザーは質問に答えるとあなたに合ったアセットアロケーション(資産配分)を決めてくれ、リバランスを含めたその後の運用までしてくれるサービスです。サービスの内容はファンドラップとほとんど同じです。

SBI証券のSBIラップ楽天証券の楽ラップ松井証券の投信工房など各証券会社で独自のサービスを展開していることもあります。他にもウェルスナビSUSTEN(サステン)のようなロボアドバイザー専門サービスもあります。

手数料はおよそ0.5%程度~1.1%程度とそれほどコストが高いわけではありませんが、自分で運用するよりはコストがかかります。

ロボアドバイザーはリバランスを自動で行ってくれるなどのメリットもあるため、低コストなサービスでロボアドバイザーに任せてよいと考える人であれば選択肢として入れてよいかもしれません。

年齢別運用方法

最後に年齢別の運用方法について解説していきます。基本的には年齢が上がほど低リスクな金融商品の割合を増やしていくようにします。

45歳程度(早期退職・希望退職など)

希望退職や早期退職などでまとまった金額が手に入りつつも、今後も働く予定という場合には、比較的リスクの高い商品で運用するのも悪くありません。

NISA口座を利用していないのであれば必ず利用しましょう。今後も働き続けるのであればiDeCoも併用するほうが税制面でのメリットが増えます。(所得控除が使いやすいです)

投資する金融商品としては、投資信託などを中心としつつ、個別株の割合を増やしても問題ありません。米国株は長期で見れば成長が期待できるので、米国株式を組み入れた投資信託へ投資するのもよいですし、直接米国株や米国ETFへ投資も有力な投資先です。

まだ人生半分と考えれば、ここで様々な投資をして経験を積むのは悪くありません。少額で様々な投資を経験しておくと今後の選択肢が増えることになります。

今まで投資をしてこなかった人でも遅いタイミングではありません。ここから投資を始めるのであればまずはネット証券口座開設から始めましょう。

55歳程度(一般企業よりも早めに退職)

まだまだ働くという人は、上の投資と同じような投資戦略で問題ありません。もう働かずに年金が出るまでは貯金を切り崩して生活するという人はリスクを抑えた投資にしましょう。

NISA口座を利用していないのであれば利用したほうが良いのは変わりません。今後働かない(所得が多くない)のであれば、iDeCoは利用しなくてもよいと思います。

iDeCoは所得税控除のメリットは大きいのですが、投資商品の選択肢が少ないため、運用益が非課税になるメリットはNISAほどではありません。
基本的には投資信託を中心とした投資をおすすめしますが、一度に投資する必要もありません。この記事内でも時間を分散して投資をすることでリスクが下がることを説明しました。ドルコスト平均法を意識した積立投資をしていくのが良いでしょう。

60~65歳程度(一般的な定年)

ある程度年齢が上がってから退職金を手にした場合はリスクが低い商品を選びましょう。また、投資の割合を大きくするよりも預貯金の割合を増やしていくほうがよいでしょう。

現在の余裕資金と今後必要なお金を計算してどの程度のリターンを目標にするかを決めてから投資しましょう。十分な資金があれば無理に投資する必要もありません。

コストが低い投資信託はこの年代でもおすすめできる商品です。債券も償還期限まで保有するのであればリスクをかなり低い(その代わりに低リターン)金融商品なのでおすすめです。

NISAは必ず利用しましょう。つみたてNISAでも問題ありませんが、一般NISA口座を利用してもよいでしょう。

攻めの投資の割合は小さくしたほうがよいですが、攻めの投資を一般NISA口座で取引すれば非課税の分だけ利益を減らさず運用できます。

退職金は低リスクで運用しましょう

退職金は運用したほうがよいですが、リスクの低い商品を中心に運用するのが重要です。特にNISA制度は必ず利用しましょう。投資が優遇される制度は使わないともったいないです。

今まで投資してこなかった人が退職金で初めて投資をする場合、ついリスクが高い投資商品を選んだり、すすめられた投資商品にそのまま投資しがちです。このような投資ではせっかくの退職金を減らす可能性が増えてしまいます。

そのため、退職金を運用するのであれば、投資の知識を身につけることも大切です。複雑な知識を覚える必要はありません。投資信託に投資するつもりであればどのように銘柄を選ぶのか、どのような銘柄が人気なのかといったことはすぐにわかります。

この記事で紹介したようなリスクの小さい投資方法で退職金を運用していくきっかけになれば嬉しいです。

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