「老後2000万円問題」や、岸田首相が発表した「資産所得倍増プラン」といったことから、多くの人が「資産運用」をしないとまずいと感じるようになりました。
「資産運用したほうがいいといっても、何をすればいいのかわからない」
「資産運用をして損をするのは怖い」
投資をしたことがない人にとっては、このような悩みを持つ人は多いはずです。
この記事では、投資初心者の方にもおすすめの運用商品と、年代別・資産別でおすすめの運用方法をご紹介します。
これから資産運用を始めようとしている方も、この記事を見ればどんな運用をすればよいのかわかります。ここから資産運用を始める一歩目にしてください。
なぜ資産運用が必要なのか
米国を始め、海外では賃金が上がってインフレが進んでいるのに、日本の賃金はほとんど上がっていません。2020年の新型コロナウイルスを経て、世帯収入は減少したともいわれています。
さらに、日本は超低金利で銀行に預けていてもお金はほとんど増えません。かつてバブルの頃は定期預金の金利が7%以上だったのが噓のようです。
賃金も増えない、銀行に預けていてもお金が増えない状況でも、インフレが起きれば資産は目減りしていきます。日本はインフレが起きないと思われるかもしれませんが、そんなことはなく2022年6月の全国消費者物価指数(総合指数)は前年同月+2.4%上昇しています。
総務省統計局:消費者物価指数(CPI)結果
「お金は増えないのに、支出は増える」
この現状に対処するにはどうしたらよいかという1つの答えが「資産運用」することです。
資産運用で失敗しないためのポイント
資産運用をしたことがない人にとって一番怖いのは、資産運用で失敗してお金が減ることです。
資産運用(投資)は、基本的に元本保証されないことは認識しておきましょう。投資は「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」なので、どの商品を選ぶかでリスクが変わります。

出典:日本証券業協会
投資において絶対はありませんが、ここでは投資初心者の方でも資産運用に失敗しないためのポイントを紹介します。
分散投資する
分散投資はリスクを減らすうえで必須です。
「卵は一つのカゴに盛るな」というのは投資の格言の1つですが、1つのカゴ(銘柄)がダメになっても影響が小さくなるように複数のカゴ(他の銘柄)に分けて卵を入れなさいというものです。
分散は銘柄だけでなく、「資産(例えば株式と債券など)を分散させる」、「投資の時間を分散させる(長期投資)」など、様々な分散を行うとさらにリスクを軽減できます。
長期投資する
長期投資は時間の分散です。
長期間にかけて分散投資する「ドルコスト平均法」の考え方でリスクを下げることができます。
ドルコスト平均法は「一定の金額」で「定期的」に買い続ける方法です。株価が高いときには少ない口数、安いときには多い口数を購入することになるので、長期になるほど1口当たりの購入金額が平準化されリスクが小さくなります。

出典:日本証券業協会
また、ここでいう長期投資は、短期的な値動きに惑わされないということでもあります。仮に保有銘柄が下落して含み損を抱えたとしても慌てて売却するのではなく、長期的に見れば上がるのではないかといったことをじっくり検討して投資しましょう。
余裕資金で運用する
余裕資金で運用することは、精神面でも重要です。万が一投資資金を失っても生活できるようにしておくようにしてください。
投資資金はこの3つにわけて考えることが重要です。投資資金としては③を使います。
- 生活費
- 近い将来で使用用途が決まっているお金
- 当面使い道がないお金
この考え方はこちらの記事で説明しています。

資産運用のおすすめランキング
それでは、実際にどのような金融商品で資産運用するのがよいか紹介していきます。
1位:投資信託・ETF
「資産運用を始めたいのですが、どの商品から買えばいいですか」と質問されたら「まずは投資信託」と回答します。
そもそも投資信託(ETFも上場投資信託なので考え方は同様)は上の図のように、複数の投資家から資金を集めて、運用のプロが様々な商品で運用するというコンセプトです。
投資信託が資産運用を始めるのによいと考える理由はこの4点です。
- 少額から始められる(100円からでも投資できる)
- つみたてNISAが利用できる(利益が大きくなる)
- 米国市場にも間接的に投資できる(米国株は成長が期待できる)
- リスク分散がしやすい(損をしにくい)
ネット証券では投資信託は100円から購入できる会社も多く、始めやすいのはメリットです。小さい金額であれば仮になくなってもダメージは少ないです。
「つみたてNISA」を利用できるのも投資信託の利点です。つみたてNISAは運用益が非課税になるというメリットがあるため、大きな利益が期待できます。
投資信託には米国株式市場に連動しているインデックスファンドもあります。米国市場は今後も成長が期待できるので、国内市場の取引で米国市場へ投資できるのはありがたいですね。
最後に、投資信託はリスク分散がしやすいです。投資信託は1つの商品で複数の銘柄に分散できるだけでなく、商品によっては国を分散させたり、資産を分散させたりできます。
投資は攻めの投資だけでなく、守りの投資も重要です。特に資産運用においては大きなリターンを狙うのではなく、まずは資産を減らさないところから始めたほうが良いでしょう。
2位:個別株・単元未満株
「資産運用で失敗しないためのポイント」のなかで説明した個別株式は「ハイリスク・ハイリターン」の金融商品でした。
たしかに、投資信託が複数の銘柄で構成して、1つの銘柄が下がってもリスク分散できるのに対して、個別株は価格の変動が大きくなります。
逆に言えば、十分勉強して知識を蓄え、十分な検討のもとで個別株へ投資すれば大きなリターンを得る可能性も高くなります。
個別株は大きなキャピタルゲイン(資産の売却益による利益)を狙うだけでなく、高配当の銘柄に投資をしたり、株主優待を目当てに投資をしたりといった幅広い目的で投資もできます。
また、個別株に投資できるほど資金に余裕がない人は、「単元未満株取引」という選択肢もあります。通常100株単位でしか購入できない個別株ですが、単元未満株取引であれば1株から購入可能です。
3位:債券
債券は比較的リスクの低い投資商品です。その理由は「満期まで保有すると決めれば、リスクは債券の発行体が破綻する可能性があるリスク(信用リスク)だけ」だからです。
国債や大手企業の社債など信用リスクが低い(信用度が高い)商品を選べば、リターンも計算できるというわけです。
ただし、債券は景気拡大局面では株式などの投資よりもリターンは小さくなります。債券は一般的に株式市場とは逆の動き(株価が下がれば債券価格が上がる)をするため、リスク分散をメインとした投資として利用するのがよいでしょう。
4位:コモディティ
コモディティとは、金・銀・プラチナや、原油、穀物のような商品群のことを指します。こちらも株式とは異なる動きをすることに注目してリスク分散目的で投資します。
5位:不動産
不動産と一口にいっても「不動産の現物」や「REIT」など様々な商品が存在します。ここでは、少し珍しいですが、不動産投資型クラウドファンディングについて紹介します。
不動産投資型クラウドファンディングは、現物の不動産やREITと比較するとこのような違いがあります。
不動産投資型 クラウドファンディング |
現物不動産 | REIT | |
---|---|---|---|
投資金額 | 1万円程度~ | 数百万円~ | 数万円~ |
物件の所有 | なし | あり | なし |
投資期間 | 比較的短期間 1年~数年 |
比較的長期間 任意の期間 |
比較的短期間 任意の期間 |
投資先の選択 | 可能 | 可能 | 不可 |
不動産投資型クラウドファンディングの特徴として、以下のような点があげられます。
- 少額から投資可能
- 比較的保有期間が短い
- 投資先の選択が可能
クラウドファンディングと聞くと、「なにか怪しいのでは?」と思うかもしれませんが、不動産投資型クラウドファンディングには、投資家のリスクを下げる仕組みがとられることがあります。
それが「優先劣後構造」という仕組みで、配当は一般投資家が優先して受け取り、損失が出る場合には一般投資家よりも先に運用会社が負担を引き受けてくれます。
資産運用で使いたい制度
資産運用を進めていく上で、「NISA」と「iDeCo」は忘れてはいけない制度です。これらの制度をうまく利用することで効率よく資産運用ができます。
特にNISAは投資初心者の方でも気軽に利用できる制度でおすすめです。まだ利用していない人は損なのでぜひ利用してください。
NISA・つみたてNISA

出典:NISA特設ウェブサイト
NISAはiDeCoよりも投資の優遇という側面が強い制度です。
一般NISAとつみたてNISAがあり、どちらも運用益が非課税になるというメリットがあります。
一般NISAとつみたてNISAの主な違いは年間の非課税投資枠と、その非課税期間です。一般NISAの非課税投資枠は年間120万円ですが、つみたてNISAは年間40万円です。
一方、非課税保有期間は一般NISAが5年に対してつみたてNISAは20年と、つみたてNISAのほうが長期投資に適した制度です。

出典:金融庁
一般NISAは2024年から新しい仕組みに変わります。具体的には年間非課税投資枠が122万円になり、2階建て方式になります。1階部分の20万円分は、つみたてNISAと同様の商品のみ買付可能になり、2階部分の102万円分は今までの一般NISAから変わりません。
投資資金が大きい場合や、比較的短期の売買を想定しているのであれば一般NISA、そうではなく長期投資前提であればつみたてNISAを利用するといった使い方をするのが一般的です。
NISA制度で注意するのは以下の点です。覚えておきましょう。
- 売却しても非課税投資枠が戻るわけではない
- 年間の非課税投資枠で未使用部分があっても繰越せない
- 損失があっても損益通算や繰越控除などの税制制度は使用できない
iDeCo

出典:iDeCo公式サイト
iDeCoはNISAよりも年金の側面が強い制度です。iDeCoは加入はもちろん、掛金をいくらにするか、どの商品を選択するかも含めすべて自分で決めることになります。
投資として利用するにはいくつか使いにくい部分ありますが、恩恵が強力です。
iDeCoの主な特徴はこの2点です。
- 運用益が非課税になる
- 掛金が全額所得控除できる
運用益が非課税になるのはNISAと同様ですが、掛金が所得控除できるというメリットがあります。運用の成績に関わらず、税制面での優遇をうけれるのは非常にありがたいです。
一方で、iDeCoは「原則60歳まで引き出しできない」「投資商品が限定されている」といったデメリットもあります。
投資目的としてはまずNISAを利用して、それでも投資資金が余るようであればiDeCoを利用するのがよいでしょう。
資産別の運用方法
ここでは資産別の運用方法を紹介します。運用資金が大きくなるまではローリスク・ローリターンな金融商品で運用するようにします。
運用資金100万円以下
運用資金が100万円以下の場合は、「投資信託」や「単元未満株」など少額でも投資可能な金融商品から投資を始めます。
この段階で利用するのであれば「つみたてNISA」がおすすめです。
ローリスク・ローリターンの投資を心がけ、まずは投資を続けることを意識します。収入の中から投資に回す資金を作る、投資の雰囲気を体験する、自分の投資のスタイルを確立するといったことが重要です。
運用資金500万円
運用資金が増えてきたら「個別株」などに挑戦してみるのもよいですね。「米国株」や「米国ETF」といった今まで投資していない金融商品を利用するのもよいでしょう。
ただし、例えば「個別株」に投資するとして、1つの銘柄に500万円分を集中させる投資方法はいけません。最低でも2~3銘柄には分散投資するようにします。
また、年間の非課税投資枠を使いきれるのであれば、「一般NISA口座」を利用しても良いかもしれません。予想通りに市場が動けば効率よく資産を殖やすことができます。
まだ投資資金は小さいので、投資のリターンで資金を大きくするのではなく、収入の中から投資の資金を作るのが重要な段階です。
運用資金1,000万円
運用資金が1,000万円あれば、一通りの投資を行うことが可能です。
仮に今まで投資したことがなく、いきなり1,000万円の運用資金ができたのであれば運用資金が100万円以下の内容から始めることをおすすめします。いきなり1,000万円を運用する必要はありません。
投資をしていく中で1,000万円まで増えてきたのであれば、攻めと守りの投資を分けて考えてみてはいかがでしょうか。
コアサテライト戦略というコア(中核)部分とサテライト(衛星)部分で投資方法を分ける戦略があります。コア部分でインデックスファンドなど長期かつ安定的な投資を行い、サテライト部分では個別株のようなリターンを狙いに行く投資を行うといった形です。
いずれにしてもアセットアロケーション(資産配分)を十分に検討して、株式市場が下落していても、保有資産の影響を少なくする金融資産の配分をしておくべきです。
年代別の運用方法
次に年代別の運用方法の例を紹介します。基本的な考え方は資産別と大きく変わりませんが、1点違うのは、年配になるにつれて流動資産の割合を増やしていくのが一般的ということです。
とはいえ、近年では寿命も延び、働く年齢も伸びてきているので、何歳からという正解はありません。ご自身のライフプランに合わせて計画するのがよいでしょう。
10代~20代
10代~20代で重要なのは投資を早く始めることです。投資は長期間行うほど多くのリターンが望めます。
投資対象としておすすめなのは「投資信託」や「単元未満株」のような少額から投資可能な商品です。考え方は資産運用額が小さいケースと同じです。
特にこだわりがなければ「つみたてNISA口座」を開設しておきましょう。米国株式市場に連動するインデックスファンド(S&P500など)の投資信託などがおすすめです。
リターンにこだわらずに、様々な取引を試して自分に合った投資を見つけてみてください。
20代~50代
一般的にこの年代は最も投資に力をいれることができるタイミングです。収入も増えてくるはずなので、投資資金を急速に増やすことができます。万が一、投資で大きな失敗をしても取り返すチャンスと時間が残されています。
結婚や子育てなどライフスタイルが大きく変わることが多いタイミングでもあるので、投資に回す資金には注意しましょう。
自分が得意な投資方法があればそれを利用すればよいですし、特になければ「つみたてNISA」を利用した投資信託はこの年代でもおすすめできます。
個別株は一般的にはハイリスク・ハイリターンですが、勉強をきちんとすれば十分リターンが期待できます。米国株は市場全体の成長も期待できる分野ですので投資先としても有力です。
50代以降
50代以降としてますが、明確な年齢は特にありません。徐々に預貯金などの流動性資産の割合を高くするようにしましょう。
(人生という意味で)投資できる期間が短くなってきたときに株式市場が暴落して、今後取り返せない可能性が出るリスクを防ぐためです。
格付けが高い債券のようなリスクが低い商品や、市場全体に連動するインデックスファンドの投資信託などはこの年代でも投資商品として利用できます。
この年代で重要なことは増やすことよりも減らさないことです。
よくある質問
最後に資産運用でよくある質問について回答します。
どうやって資産運用のシミュレーションをすればいいの?
資産運用のシミュレーションは無料で利用できるものがいくつもあるので、使いやすいものを使いましょう。サンプルとして金融庁の資産運用シミュレーションを紹介します。
金融庁:資産運用シミュレーション

出典:金融庁
これは、「毎月の積立金額」「想定の利回り」「積立期間」を設定すると「将来いくらになるか」を試算した結果です。
重要なことは細かい結果を気にするのではなく、およそどの程度の結果になるのかを理解することです。複利の効果もあり、長期間投資するほど利益も大きくなることがわかるはずです。
どの証券会社がオススメ?
様々な投資商品を試したいのであれば、「SBI証券」がおすすめです。ほぼすべての金融商品を取引できます。
単元未満株の取引は不要であれば「楽天証券」もおすすめです。単元未満株の取引ができないことを除けば取引商品に大きな差はありません。
難しく考えずに、まず始めてみよう!
あなたがまだ投資を開始していないのであれば、まずは1000円程度でもいいので投資を始めてみましょう。難しく考える必要はありません。その程度であればなくなっても大丈夫なはずです。
始めは色々な投資を試してみて自分のスタイルに合った投資を見つけましょう。
投資は長期で行うほどリターンに影響するので、できるだけ早く開始して、途中で退場しないことが重要です。そのためには、投資の勉強をすることも大切です。
この記事を読んで投資を始めるきっかけになることを祈っています。