積立NISAはやめた方がいいの?そんな疑問を解決します!

積立NISAはやめた方がいいの?そんな疑問を解決します! 株の基礎知識

この数年で「貯蓄から投資へ」の動きが進んでいますが、その大きな要因の1つが「NISA制度」が誕生したことです。

日本証券業協会の調査では、2018年以降に投資を始めた人の約6割がNISAをきっかけにしているそうです。すでに投資をされている方は「NISAなんてみんなやってるんじゃないの?」と思うかもしれません。

実は、金融庁の調査では、30代から70代でも6人に1人しかNISA口座を開設していません。20代に至っては10人に1人以下の割合です。
金融庁:NISA口座の利用状況調査(2021年9月末時点)

この記事では投資初心者の方にもおすすめの「つみたてNISA」について解説します。

このような制度は待っていても国が教えてくれることはないので、自分から使っていかないと損をします。つみたてNISAはやめたほうがよいと言われることもありますが、それが本当なのか、この記事を読んで判断してみてください。

そもそもつみたてNISAとは?NISAとの違いを解説

NISAやつみたてNISAは運用益が非課税になる制度です。年間の非課税枠や非課税期間の違いがあります。

現在の一般NISAは2024年より新NISAへ生まれ変わります。2階建て方式となり今までのNISAとつみたてNISAをあわせたような制度になります。
また、現在はジュニアNISAの制度もありますが、2023年末で廃止されます。

上の表は金融庁が出しているNISAの説明です。

この表を見てわかる通り、一般NISAは年間非課税が「120万円」と大きい金額になっていますが、非課税期間が「5年間」なので、比較的短い期間での売買を目的に利用したほうが良いでしょう。

一方、つみたてNISAは年間非課税枠は「40万円」と一般NISAよりも小さいですが、非課税期間が「20年間」と長期投資向けの制度になっています。

投資は長期で行うほどリスクが下がるので、投資初心者の方はつみたてNISAを利用した投資信託への投資を行うことをおすすめします。

ネット証券の多くは、毎月積み立てでもつみたてNISAを40万円ぎりぎりまで買付可能にする仕組みもあるので、ぜひ利用しましょう。

上の表で現在の一般NISAと、2024年からの新NISAがどう変わるかがわかります。大きな違いは、非課税枠が2階建て方式になったことです。

20万円まではつみたてNISAと同じ仕組み(ただし、非課税期間は5年間)で、102万円分は今までの一般NISAと同じという2つで構成されます。

まだ、具体的には決まっていませんが、岸田政権の「資産所得倍増プラン」により、NISAの拡充という案もでているので、今後も目が離せません。

つみたてNISAはやめたほうがいいと言われる理由

Googleエンジンで「つみたてNISA」と検索すると、「つみたてNISA やめたほうがいい」という検索の候補がでてきます。

これからつみたてNISAを始めようとしている人がみたら「やめたほうがいいの?」と思うかもしれません。ここではつみたてNISAはやめたほうがいいと言われる理由を説明していきます。

結論としては、つみたてNISAの特性を理解していれば、気にする必要はありませんので心配しないでください。

投資信託しか商品がない

つみたてNISAは基本的に投資信託でしか利用できません。

ごく一部でETF(上場投資信託)につみたてNISAを使えることがあります。

さらにつみたてNISA対象の投資信託は金融庁に届け出されたものとなっていて、以下のような長期投資に適した商品のみが対象となります。

  • 販売手数料はゼロ(ノーロード)
  • 信託報酬は一定水準以下
  • 信託契約期間が無期限または20年以上であること

ただし、これが投資信託のデメリットであるかというと、そうは思いません。

つみたてNISAはそもそも長期投資前提の制度です。長期投資に適した商品だけ選別してくれているのはありがたいことです。

次に説明しますが、つみたてNISAは年間非課税枠が40万円なので、毎月積み立てするのであれば月に3万円程度と大きな金額ではありません。

そのため、投資する商品は1つか、せいぜい2つに絞ることになります。それであればつみたてNISA対象の中から自分がよいと思う商品を選ぶことは全く難しいことではないからです。

年間非課税枠は40万円

つみたてNISAの年間非課税枠は40万円までとなっています。

一般NISAの年間非課税枠は1年間で120万円なので、投資資金が豊富な人はこちらのほうがいいんじゃないかと感じる人もいると思います。

これには注意点もあり、非課税枠のトータルはつみたてNISAのほうが大きいです。

一般NISA:120万円(非課税枠) × 5年間(非課税期間) = 600万円
つみたてNISA:40万円(非課税枠) × 20年間(非課税期間) = 800万円
とはいえ、短期で売買を繰り返すなら一般NISAのほうが確かに効率的に資産運用できるかもしれないので、どちらが正解ということはありません。

どちらかといえば、「投資できる資金なんて月に1万円しかできないよ」という方こそ、つみたてNISAを利用するのに適しているといえます。

少額しか投資資金に回せないのであれば、個別株のように投資資金がある程度大きくなる商品ではなく、投資信託などの少額から可能な商品でないと投資が難しいからです。

「年間非課税枠が40万円しかないからつみたてNISAはやめたほういい」というのは、大きな投資資金で短期売買を繰り返したい人にとってはその通りですが、これから投資を始めようとする人には関係がないといえます。

含み損を抱えたまま非課税期間が終了すると損

これは確かにその通りです。

つみたてNISAだけでなく一般NISAも同じことが言えますが、非課税期間が終了した場合どうなるかについては、きちんと理解していない人が多いと思います。

金融庁のNISA特設ウェブサイトでも説明されていますので、勉強しておきましょう。

まず、原則として非課税期間が終了すると、NISA口座から課税口座へ移動します。
そのタイミングで取得価格が切り替わります。

一般NISAの場合、「ロールオーバー」という翌年の非課税枠に移す仕組みもあります。

具体的にどういうことかというと、下の図を見てください。

これは購入価格が120万円で、非課税期間終了後に150万円に値上がりしていた場合と、100万円に値下がりしていた場合の図です。

どちらの場合も課税口座に変わったタイミングを取得価格としてそこから上昇すればその分が課税されるということになります。

上の図のように、120万円で購入して100万円に下がったタイミングで非課税期間が終了すると、100万円が取得価格となります。そのため、そこから120万円に株価が戻ると20万円分に対して課税されます。

NISA制度では損益通算や繰越控除などの税制面での仕組みが利用できないのも注意点としてあげられます。
これが、「含み損を抱えたまま非課税期間が終了すると損」と言われる理由です。
これを防ぐ一番いい方法は、長期で保有していたら購入時よりも成長している可能性が高い商品を選ぶことです。
tradingviewにて作成

出典:tradingviewにて作成

この3本の線は、米国株式インデックスである、NYダウ平均株価(青線)、S&P500(オレンジ線)、日本株式インデックスである、日経225(水色線)の1990年頃からの推移です。

米国株式市場を網羅するようなインデックスファンドに投資しておけば、少なくともこの20年間であれば、どこから投資しても上昇していたことになります。一方、日経225はバブル絶頂時の株価を超えることができていません。

つみたてNISAに向いていない人

ここまではつみたてNISA制度の特性として、やめたほうがいいと言われる理由を解説しました。

次は人の特性としてつみたてNISAに向いていない人の説明をしていきます。基本的にどれか1つでも該当するならつみたてNISA以外を検討したほうがよいかもしれません。

短期的なリターンを求めている人

上でも説明した通り、つみたてNISAは長期的な投資を前提としているため、短期的なリターンを求めている人には向いていません。

つみたてNISA口座は利用できる商品も限られているため、短期的に売買をしたい人はNISA口座を利用することをおすすめします。

年間120万円まで非課税枠を利用できるので効率よく資産運用ができます。

NISA口座は売却したら非課税枠が復活するわけではありません。
NISA口座では、デイトレードのように小さい利益を積み重ねるのではなく、ある程度利益を大きく取らないとNISA制度の意味がなくなってしまいます。

すでに60歳を超えている

利用できないわけではありませんが、十分検討してから利用することをおすすめします。年齢とつみたてNISAの関係については、最後の「つみたてNISAの出口戦略」でも説明します。

これまで説明してきた通り、つみたてNISAはできるだけ長期間の投資を前提としています。

アセットアロケーション(資産配分)の考え方としては、高齢になるほど流動性の高い商品(例えば預貯金など)の割合を増やしていくことが一般的です。
たしかに医療の発達などにより寿命ものび、60歳を超えても働く人も増えてきていますので、まだまだこれからという方はつみたてNISAを選んでも大丈夫かもしれませんね。

含み損を抱えたくない人

つみたてNISAだけでなく、投資全般において元本保証はされません。

国債のように極めてリスクの低い商品はありますが、投資信託は債券ほどリスクが低いわけではありません。

含み損を抱えたくない人というのは、つみたてNISAだけでなく残念ながら投資自体を行わないほうが良いかもしれません。

すべてを預貯金などで保有しておくと損はしませんが、インフレが起きると資産が実質目減りしていることは認識しておきましょう。

つみたてNISAは利用しても大丈夫?

「結局つみたてNISAは利用しても大丈夫なの?」と気になる人もいると思います。

ここまで読んでいただければわかったと思いますが、長期投資前提で投資をするならつみたてNISAは利用しても大丈夫です。むしろ利用したほうがお得な制度です。

  • 投資初心者の人
  • 投資に多くのお金を回せない人
  • 短期で売買するつもりがなくじっくり投資したい人

 

特にこのような人には適した制度です。
なぜ、投資初心者の人や投資資金が少ない人に向いているのか説明していきます。

つみたてNISAのメリット

ここからはつみたてNISAのメリットを説明していきます。

「大きな金額を投資に回せない」「投資にあまり時間をかけれない」という人も多いと思いますが、そういう人にとってつみたてNISAは利用しやすい制度です。

実際につみたてNISAは投資初心者の方から、上級者のかたまで幅広く使われています。

運用益が非課税になる

運用益が非課税になるのはNISA口座の最大のメリットです。

通常だと株式売買などで生じた運用益には、20.315%の税金がかかります。

20.315%の内訳:所得税15%、住民税5%、復興特別所得税(所得税の2.1%)0.315%
NISA口座を利用すればこの運用益が非課税になります。
つまり、運用益が大きくなればなるほどNISA制度の効果が大きくなります。

長期投資に向いている

つみたてNISAの投資は基本的に投資信託となりますが、金融庁に届け出された商品のみ対象となるので、比較的良い商品のみであることはこの記事でも説明しました。

つみたてNISA対象の銘柄は、市場を広く網羅するようなインデックスファンドも多く、リスク分散ができることも長期投資に向いている理由です。

tradingviewにて作成

出典:tradingviewにて作成

このチャートはS&P500の過去30年ですが、どこの20年間を切り取っても結果がプラスになります。長期投資に適した商品を選ぶことでつみたてNISAのメリットを最大限に活かせます。

今後の20年も保証されているわけではありませんので注意してください。
つみたてNISAは毎月積み立てることになるので、自動的に「ドルコスト平均法」の購入方法になり、時間のリスク分散もできます。金融庁も推奨する「長期」「分散」「積立」の仕組みを作れるのは大きなメリットです。
「ドルコスト平均法」についてはこちらの記事でも紹介しています。
投資信託は貯金代わりになる?リスクを下げて預貯金を投資信託へ投資する方法
この記事では、貯金と投資信託の違いを理解してもらった上で、リスクを抑えて投資信託を始める方法とおすすめの商品を解説していきます。あなたが「貯金だけでは利息が増えないから、投資信託もしてみたいけど不安…」と考えているのであれば是非この記事を最後まで読んでみてください。
投資信託は保有しているだけで「信託報酬」というコストがかかるので、保有コストが低い商品を選ぶことも重要です。

少額からでも利用可能

多くのネット証券で投資信託は100円から購入可能です。投資信託を購入するつみたてNISAも少額から購入できるところはメリットです。

つみたてNISAで積立買付する場合、月の上限は33,333円なので、まず毎月この金額を確保しておくと、最低限の資産形成ができます。

「月3万円も投資に回せない」という人は、無理をしない範囲で毎月積み立てていくようにしてください。

つみたてNISAでおすすめの商品

実際につみたてNISA対象銘柄でどの商品を購入すればよいのでしょうか。

ポイントはこの2つです。

  • 信託報酬手数料率が低い
  • 将来成長しそう

 

1つ目は調べるのも簡単です。2つ目がむずかしいのですが、やはり米国株式を中心とした外国株に連動するインデックスファンドがおすすめです。

1位:三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

三菱UFJ国際

基準価額(2022/8/2時点) 純資産 信託報酬手数料
19,265円 1,368,546百万円 0.0968%以内
  • 信託報酬手数料率は、つみたてNISAの中でもかなり低い部類
  • 米国市場は今後も成長する可能性が高い

S&P500はNY証券取引所、ナスダック等に上場している企業から代表的な500銘柄を時価総額で加重平均して指数化した数値で、米国市場の時価総額上位約80%を網羅できます。

セクター(米国で用いられる業種のようなもの)もバランスよく構成されており、定期的に見直しがされるため、常に基準を超えている優良企業のみで構成されているという強みがあります。

S&P500が過去右肩上がりに成長していることは、上のチャートでも説明した通りです。

おすすめする点は「コストが安い」「米国市場全体が成長すれば上がる」この2点です。

2位:三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

三菱UFJ国際

基準価額(2022/8/2時点) 純資産 信託報酬手数料
16,479円 599,047百万円 0.1144%以内
  • 信託報酬手数料率がつみたてNISAの中でもかなり低い部類
  • 米国だけに集中投資するのが不安ならこちらの商品でもよい

日本では「オルカン」と呼ばれて親しまれているインデックスに連動する投資信託です。

投資対象は日本を含む先進国の株式と、中国やインドなど新興国の株式も含まれます。

目論見書より抜粋

出典:目論見書より抜粋

幅広い地域へ投資してリスク分散をしたい、新興国も含めて成長に期待したいと考えるのであれば、オール・カントリーへの投資が有効です。

全世界へ投資をしていますが、60%は米国株式市場が占めているので、良くも悪くも米国株の影響は大きい投資信託です。

コストも1位で紹介したS&P500連動の投資信託ほどではありませんが、十分に低い水準です。

3位:三菱UFJ国際-eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)

三菱UFJ国際

基準価額(2022/8/2時点) 純資産 信託報酬手数料
13,829円 153,581百万円 0.154%以内
  • この商品だけでアセットアロケーション(資産配分)の調整ができる
  • 自動でリバランスしてくれる

最後に紹介する商品はつみたてNISAで運用するのは賛否あると思いますが、このような商品もあるということを知ってほしいので紹介します。

この商品は株式だけでなく、債券や不動産などの様々な金融資産を1つの投資信託で運用します。そのため、株式が不調になったときのリスク分散という働きが期待できます。

目論見書より抜粋

出典:目論見書より抜粋

資産総額も異なる金融資産をすべて同じ割合で配分するのが本当によいのかという話を聞くこともあります。しかし、このような商品でなければ債券やREIT(不動産)には手が出しにくいのは事実ですので、リスク分散としてはよいと考えます。

攻めの投資というよりも守りの投資なので、つみたてNISAの利点を生かしきれない可能性もあります。つみたてNISAで利用するというよりも資産運用のどこかで検討する商品と考えたほうがよいかもしれません。

つみたてNISAの出口戦略

つみたてNISAの非課税期間20年を過ぎたらどうすればよいのかということに関して正解はありませんが、大まかな出口戦略は考えておきましょう。

まず、前提として「含み損を抱えたまま非課税期間が終了すると損」の中で説明した、非課税期間が終了するタイミングで取得価格が更新されることを覚えておいてください。

つみたてNISAの商品を選ぶポイントの1つは「将来成長しそう」な銘柄を買うことです。そのため、「バイ・アンド・ホールド」が基本運用方針です。

バイ・アンド・ホールドは、簡単にいえば長期間保有しておくということです。
そのうえで、非課税期間の終了が60歳を超えるのであれば、売却を選択肢に入れるのがよいと考えます。(現在40歳の人がつみたてNISAを購入するイメージ)
これは徐々に流動性の高い金融資産の割合を増やしていくのが目的です。そのため、厳密に年齢を決めるというよりも資産の状況をみて決めるのがよいですね。
逆に、20歳の人が今からつみたてNISAをした場合、非課税期間の終了は40歳時点から順に始まります。この場合はさらに課税口座で保有しておくのもよいでしょう。
唯一早めに売却するべきなのは、景気後退がはっきりしているなどの理由で非課税期間終了まで下がり続けると予想する場合です。NISA制度では損益通算や繰越控除が使えないため、下がる可能性が高い場合はデメリットが大きくなります。
原則20年間保有し続けるような商品で運用するのがポイントです。

投資経験が少ない人こそ、つみたてNISAをつかってほしい

つみたてNISAはだれにでも使える制度ですが、特に投資初心者の方が使うメリットが大きい制度です。ただ、自動的に口座が開設されるわけではないので、行動を起こさないとこのメリットを生かすことはできません。

この記事の冒頭でも説明した通り、NISAやつみたてNISAの口座は30代~70代の世代でも口座開設している割合は6人に1人というレベルです。

この記事を読んでくれたあなたがつみたてNISAに興味を持って、口座開設する一歩目になることを祈っています。

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