子供の教育費やマイホームの購入など、ライフステージによってまとまったお金が必要になるがタイミングがあります。さらに、近年では老後2000万円問題が社会的な話題になったため、「今のままでお金が足りるかな…」と不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
今の時代、銀行にお金を預けていても利息はほとんど増えません。さらに「投資信託であれば貯金替わりになって資産が増える」という話を聞くと、「うちも投資信託を始めたほうがいいのかな」と感じる人もいるかもしれません。
実際には貯金と投資信託(投資)はお金の性質が違うため、安易に投資信託に資金を移すのはおすすめできません。ただし、自分のお金の実態をきちんと把握して、適切な額を投資信託で運用することは資産を殖やすことにつながります。
この記事では、貯金と投資信託の違いを理解してもらった上で、リスクを抑えて投資信託を始める方法とおすすめの商品を解説していきます。
あなたが「貯金だけでは利息が増えないから、投資信託もしてみたいけど不安…」と考えているのであれば是非この記事を最後まで読んでみてください。
投資信託と預貯金は何が違う?
投資を始めようという決意はよいことですが、まずは自分が持っているお金のうち、どれだけ投資に回せるかを把握することが大切です。そのためにまず、投資信託と預貯金の違いについて理解しましょう。
お金を3つの用途に分けて考える
資産運用を考える上では、お金を3つに分けて考えることが重要です。
- 日常生活で使うお金
- 近い将来で使い道が決まっているお金
- 当面使う予定のないお金
このうち、日常生活費と近い将来で使うお金は「貯める」ことを重視します。当面使う予定のないお金としては老後資金や、ライフステージによってはマイホーム購入なども当てはまります。このお金は「殖やす(ふやす)」ことを目標にしていくため、投資信託をはじめとする「投資」に回していきます。

出典:日本証券業協会
日常生活で使うお金
日常生活で使う金は、住宅費や食費などの生活費はもちろん、緊急時に備えとしてのお金も必要です。このお金は「殖やす」のではなく「貯める」ようにします。
近い将来使い道が決まっているお金
近い将来で使うお金には、少し金額の大きい家財道具や車の購入費といったものや、家族構成によっては子供の教育費などが考えられます。おおよそ数年以内に使うお金と考えてください。
教育費などを除くと、この分類に入るお金は必ず必要というわけではない(ある種の贅沢)ことが多いはずです。無駄な出費が多くなっていないか検討してみる必要があります。
この使い道が決まっているお金も比較的現金化しやすい預貯金や、目的によっては学資保険など貯蓄性の高い商品を利用することも検討してよいでしょう。
当面使う予定のないお金
当面使う予定がないお金は「投資」に回します。投資は原則として「ハイリスク・ハイリターン」なので、投資の目的に合わせて、投資商品を十分検討してから投資を開始してください。
比較的ローリスク・ローリターンな金融商品としては、「投資信託」や「債券」、「金」などがあります。「株式投資」などはハイリスク・ハイリターンな部類に入ります。(実際にはこれらの商品の中でもリスクやリターンは様々です)
投資信託のメリットとデメリット
当面使う予定がないお金を投資に回すことを説明しましたが、貯金に近い形での投資、つまりリスクを減らしたい場合の投資先として投資信託は適した投資商品の1つです。
投資信託は投資家から資金を集めて、運用のプロが商品を選別、運用してくれる金融商品です。証券会社によっては100円から投資可能で、気軽に開始できます。
投資信託には預貯金とは違うメリットやデメリットもあるので投資信託を行うときの参考にしてください。
投資信託のメリット
預貯金から投資信託へ資金を移動するメリットは、資産を殖やすことができることです。投資信託の商品は、1つの商品で複数の銘柄を保有できることになるので分散投資によるリスク軽減も期待できるので、比較的ローリスクです。
投資に回すお金は当面使う予定がないお金ですので、投資信託に投資をするときには長期投資を前提に考えましょう。長期で分散投資をすることでさらにリスクを減らすことができます。

出典:金融庁
上の表は、金融庁の「つみたてNISA」で紹介されている保有期間と運用成果のグラフです。保有期間が長いほど、リスクが小さくなり、リターンも収束していきます。
投資信託は銘柄によって「つみたてNISA」も利用でき、長期・分散投資に向いている金融商品といえるので、リスクを抑えて貯金の利息に近い感覚で投資することができます。
投資信託のデメリット
投資信託が「貯める」貯金の変わりにならない理由が2つあります。
1つは、元本が保証されているわけではないことです。上の説明でも上げましたが、保有期間が短いほどリスク(収益や損失のばらつき)が大きいため、短期間の投資であるほど損失が発生する可能性があります。(長期投資でもリターンが保証されるわけではありません)
もう1つは、即時現金化ができないことです。投資信託の売買は主に証券会社などを通じて行いますが、売却する場合、注文が成立(約定)してから代金を受け取る(受渡日)まで2~5営業日程度かかることが一般的です。
預貯金のメリットとデメリット
90年代初めのバブル絶頂時は、銀行の定期預金の利率が7%台という金融機関もあり、銀行に預けておくことが資産運用になる時代でした。上で紹介した「つみたてNISA」で20年保有した時の年率が約2~8%だと考えると、ほぼノーリスクで7%の利率がいかに有利だったかわかります。
今は時代が変わって現在では銀行に預けているだけではお金はほぼ増えません。これは預貯金が悪いということではなく、役割が変わったと考えるべきでしょう。銀行に預けておく預貯金にもメリットはあります。
預貯金のメリット
預貯金の最大のメリットは換金性が非常に高いことです。定期預金の場合は期間の縛りがありますが、普通預金であればいつでも換金できます。現在ではコンビニATMなども発達して換金できる場所も増えたので、さらに便利になりました。
また、預貯金は原則元本が保証されています。原則としたのは預金保険制度により保護されている金額に上限(約1,000万円)があるからです。
預貯金のデメリット
預貯金のデメリットの1つは、現在では利息がほとんど増えないことですが、これは預貯金をすぐに使うお金と割り切ればそこまでデメリットにはなりません。
ただし、当面使わないお金を「お金が減る可能性があるから投資はしたくない」としているのであれば、それはデメリットになります。なぜかというと、インフレが起きると預貯金などの金融資産は目減りするからです。
2022年は米国のインフレ率が8%を超え、政策金利も上げたことがニュースになっています。一方で日本はいまだゼロ金利政策を行っているので、インフレは関係ないと考えるかもしれませんが、実際には2%程度のインフレが起きています。
リスクを抑えて投資信託を始める方法
できるだけリスクを抑えて投資したいときに投資信託は有効な金融商品の1つです。投資信託は投資方法によってさらにリスクを抑えたりお得に取引したりできるので、その方法を紹介していきます。
すぐにできる方法もあれば、特定の証券口座で利用できる方法もあるので、商品や証券会社を選ぶ参考にしてください。
インデックスファンドへ投資する
投資信託の商品を選ぶポイントは、インデックスファンドへ投資することです。インデックスファンドとは、特定の株価指数(インデックス)と値動きが連動するように作られた商品です。
インデックスファンドへ投資するメリットはコストが低く、リスクも下げることができる点にあります。投資信託は保有しているだけで信託報酬手数料というコストがかかり続けます。その為、このコストをいかに抑えるかが効率的に資産運用できるかの決め手です。
インデックス投資の詳細はこちらの記事で紹介しています。

具体的なインデックスとして、日米で有名なインデックスを紹介します。
TOPIX(東証株価指数)
TOPIXは、1968年1月4日の時価総額を100として、現在の時価総額を指数化したものです。対象は東証一部上場の銘柄でしたが、2022年4月の市場再編によってTOPIXの対象銘柄も変更される見通しです。(現在は既存のTOPIX銘柄を継続採用中)
TOPIXはもともと東証一部の銘柄を対象にしていたとおり、国内株式市場の大部分を網羅しています。国内株式で運用している投資信託のベンチマークとしては、日経平均よりも利用されることが多いため、国内株式の投資信託であれば、TOPIXを選ぶのは有効な方法の1つです。
S&P500
米国で有名なインデックスとして、「NYダウ平均」や「ナスダック総合指数」などがありますが、投資信託やETF(上場投資信託)で採用されているインデックスとしては「S&P500」が人気です。
S&P500は、ニューヨーク証券取引所やNASDAQなどに上場している企業のうち、代表的な500銘柄で構成されています。時価総額加重平均型(時価総額が大きいほど影響が大きい)のため、500銘柄で米国市場全体の時価総額の80%をカバーしています。
構成銘柄はセクター(日本でいう業種のような分類)も考慮されており、さらに定期的な銘柄の入れ替えが実施され基準をクリアした企業のみで構成されるので長期的な観点でも安心です。
長期投資をする
長期投資をするとリスクが減ることはこの記事の中でも解説しましたが、実際に長期投資をどのようにすればよいのかを説明します。
長期投資を行う方法の1つが「ドルコスト平均法」です。ドルコスト平均法は「定期的」に「一定の金額」で長期的に買い続ける方法です。
ドルコスト平均の買付方法では、株価(投資信託の場合は基準価額)が高いと金は少量のみ購入し、株価が安いときには大量に購入するため、長期で見ると購入価格が平均化されるという方法です。
株価や基準価額は上がったり下がったりすることが一般的ですので、それに一喜一憂せず、淡々と購入を続けるのが資産を効率的に殖やすコツです。

出典:日本証券業協会
証券会社と連携した金融機関を利用する
これから証券会社の口座を開設を考えている人は、金融機関と連携できる証券会社を選ぶこともポイントの1つになるので覚えておいてください。
証券会社と金融機関を連携させると、証券口座への自動入金や金融機関側の金利の優遇など様々な面で有利になります。(詳細は各社サービスをご確認ください)
SBI証券と住信SBIネット銀行

出典:住信SBIネット銀行
SBI証券と住信SBIネット銀行は「SBIハイブリッド預金」という仕組みで連携できます。ハイブリッド預金では証券側の買付余力への自動反映のほかに、住信SBIネット銀行側の金利が優遇されるメリットがあります。
通常、住信SBIネット銀行の普通預金は金利が0.001%ですが、ハイブリッド預金では0.01%と10倍の金利です。もともとの金利が小さすぎるのでわずかですが、利用したほうがお得な仕組みです。
楽天証券と楽天銀行

出典:楽天証券
楽天証券と楽天銀行は「マネーブリッジ」という仕組みで連携できます。マネーブリッジの連携も証券側への自動入金や楽天銀行側の金利優遇とどちらにもメリットがあります。
マネーブリッジを利用すると、300万円までの普通預金残高の金利が0.1%とかなり高くなります。また、楽天証券と楽天銀行とのマネーブリッジ連携は楽天ポイントのSPU(スーパーポイントアップ)の条件になっているので、どちらも利用している人は設定しておきたいサービスです。
つみたてNISAを利用する
投資信託ではつみたてNISAを利用できる銘柄があるので、つみたてNISA口座を保有している人は是非利用してください。つみたてNISA口座もNISA口座も持っていない人は今から作ることをおすすめします。
つみたてNISAの対象商品は長期投資に適した、一定の条件を満たした商品のみ商品のみ登録されています。
具体的には以下のような商品です。
- 販売手数料はゼロ(ノーロード)の商品
- 信託報酬手数料率が一定以下(例:国内株のインデックスの場合0.5%以下)
- 信託契約期間が無期限または20年以上
つみたてNISAを利用すれば、コストが抑えられることに加えて利益が大きくなる(非課税分お得になる)ため、利用しない手はありません。
クレカ積立を利用する
投資信託の積立はクレジットカードでの決済ができることが多いです。例えば、先ほど紹介したSBI証券であれば、「三井住友カード」でのクレジットカード決済が可能で、楽天証券であれば「楽天カード」で決済できます。
クレジットカード決済をすると、金額に応じてポイントが付与されるので、コツコツポイントを貯めていくのに投資信託のクレカ積立を利用するのも1つの方法です。
おすすめの投資信託
最後に、実際に投資信託でどの商品を買えばよいのか迷っている人におすすめの投資信託を紹介します。(リターンを保証するものではありませんので、投資をする際にはご自身で十分に検討してください)
三菱UFJ国際-eMAXIX Slim 国内株式(TOPIX)
1つ目は日本株(TOPIX)に連動した商品です。
基準価額(2022/7/14時点) | 純資産 | 信託報酬手数料 |
---|---|---|
13,749円 | 51,725百万円 | 0.154%以内 |
「三菱UFJ国際-eMAXIX Slim 国内株式(TOPIX)」は、つみたてNISA対象で、販売手数料がかかりません。信託財産留保額もないため、コストは信託報酬手数料のみです。信託報酬手数料は0.154%以内と、国内株のインデックス連動商品としては最安水準のコストです。
また、純資産額が51,725百万円とかなり大きい部類です。投資信託では純資産額が小さくなると繰上償還(信託期間の途中で運用が終わること)されることもあるので、純資産は原則として大きいほうが望ましいといえます。

Tradingviewにて作成
上のチャートは約30年間のTOPIXの推移ですが、日本の株式市場はバブル期をいまだに超えることができていません。ただ、今後は日本の株式市場は成長していくはずだと考えていればおすすめの商品です。
三菱UFJ国際-eMAXIX Slim 米国株式(S&P500)
2つ目はS&P500に連動した商品です。
基準価額(2022/7/14時点) | 純資産 | 信託報酬手数料 |
---|---|---|
18,404円 | 1,296,285百万円 | 0.0968%以内 |
この記事で米国のインデックスを説明した時に、S&P500は投資信託やETF(上場投資信託)で人気だとお伝えしましたが、1つ目の「三菱UFJ国際-eMAXIX Slim 国内株式(TOPIX)」の純資産と比べると、まさに桁が違っていることがわかります。
米国インデックスに連動する商品は、信託報酬手数料が小さいことが多いので、国内インデックス連動商品よりもコストが抑えられる点はメリットです。
さらに、米国市場全体の成長性の恩恵を受けられる点も見逃せません。

Tradingviewにて作成
こちらのチャートは約30年間のS&P500指数の推移です。現在は米国政策金利の上昇などにより、下落が続いていますが、30年間で10倍以上と長期で見るほど右肩上がりで成長しています。
S&P500連動の商品へ長期投資をすることで、運用資産が効率よく殖える可能性があります。さらにつみたてNISAであれば、運用益が大きいほど非課税のメリットを生かすことができます。
三菱UFJ国際-eMAXIX Slim 全世界株式(オール・カントリー)
最後は全世界へ分散投資している投資信託です。
基準価額(2022/7/14時点) | 純資産 | 信託報酬手数料 |
---|---|---|
16,152円 | 577,765百万円 | 0.1144%以内 |
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスというインデックスに連動する投資商品です。(このインデックス名称は覚える必要はありません)
設定日(ファンドの運用を開始した日)が2018年10月と新しい投資信託ですが、純資産額は順調に増加しており、人気の商品です。

出典:目論見書より抜粋
日本も含めた先進国と新興国含め、全世界の株式へ投資します。全世界への投資なので、単一の国への投資よりも地域のリスク分散が可能です。とはいえ、約6割が米国への投資ということは覚えておいたほうがよいでしょう。

出典:モーニングスター
6割が米国株への投資なので、S&P500と似たような動きをしています。冒頭説明した通り、新しい商品の為、現在のように世界的に市場が軟調になった時にどのような動きをするのか見極める必要があります。
当面使用しないお金を投資信託で運用してみましょう
貯金と投資(投資信託)の違いについて理解していただけたでしょうか。
まずは投資に回せるお金がどれだけあるのか確認してみてください。先に投資に回すお金を決めてから生活に必要なお金をやりくりすることも大切です。
実際に投資信託をするときにお得になるポイントや、具体的な商品も解説しましたので、再度チェックしてください。
私も初めはつみたてNISAの投資信託から投資を始めたので、この記事を読んで貯金で眠っているお金が少しでも投資信託へ資金移動する機会になることを祈っています。