iDeCoの利用者は、制度が改正された2017年頃から急増し、2021年5月時点では約200万人となっています。
iDeCoの名前を目や耳にする機会が増え、気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、iDeCoを始めたいけどよくわからないという方向けに、iDeCoのメリットやデメリット、iDeCoを始めるおすすめの金融機関などをわかりやすく紹介します。
- iDeCoは老後の資金作りにおすすめ
- iDeCoなら3つの大きな節税メリットをうけられる
- 金融機関はコストと商品で選ぼう
iDeCoとは?
iDeCoとは、個人型確定拠出年金といわれる私的年金制度の一つで、老後の年金を積み増す手段の一つです。
2001年からスタートした制度ですが、当初は会社員が対象の制度でした。
2017年からは公務員や専業主婦も加入できるようになり、令和3年5月時点で約200万人が利用しています。

出典:iDeCo公式サイト
iDeCoには投資信託や保険、定期預金などの商品があり、それらの商品を自分で選択して運用を開始します。
運用によって得られた利益が非課税になったり、積み立てる掛け金が所得控除されたりするなどのメリットがありますが、原則60歳まで資金を引き出せないなどの不便と感じられる点もありますので、その内容をしっかり確認しておきましょう。
iDeCoに加入できる条件は?
iDeCoは職業や勤め先の制度によって、加入条件が異なります。
主な職業の分類は、以下の通りです。
- 個人事業主、学生など(第一号被保険者)
- 民間の会社員(第二号被保険者)
- 公務員(第二号被保険者)
- 専業主婦・主夫(第三号被保険者)
それぞれの加入資格を詳しく解説します。
個人事業主、学生など(第一号被保険者)
個人事業主で、iDeCoに加入できる条件は以下の通りです。
- 満20歳以上60歳未満
- 国民年金保険料を納付している
ただし、障害基礎年金受給者を除き、全額免除・半額免除などを受けている方は加入できません。
また、農業者が加入できる農業者年金に加入している方も、iDeCoには加入できません。
民間の会社員(第二号被保険者)
民間の会社員の場合で、iDeCoに加入できる条件は以下の通りです。
- 60歳未満
- 「マッチング拠出」をしておらずiDeCo加入可の場合
民間企業には個人型とは別に企業型確定拠出年金(企業型DC)を用意している企業があります。
企業型確定拠出年金には、企業が拠出する掛け金に加えて従業員が自分で掛け金を積み増す「マッチング拠出」という制度がありますが、iDeCoに加入できるのは、マッチング拠出をしておらず、規約にiDeCoに加入できる旨が記載されている場合のみです。
なお、2022年10月から規約に定めがなくてもiDeCoに加入できるようになります。
公務員(第二号被保険者)
公務員のiDeCoに加入できる条件は、以下の通りです。
専業主婦・主夫(第三号被保険者)
専業主婦・主夫のiDeCo加入条件は以下の通りです。
iDeCo加入年齢の上限が60歳から65歳へ拡大
今までiDeCoに加入できる年齢の上限は60歳未満でした。
しかし、2022年5月からiDeCo加入可能年齢が拡大し、60歳から65歳未満の国民年金に加入している方もiDeCoに加入できるようになります。
例えば、60歳以降も会社員として働いている65歳未満の方や、国民年金に任意加入している65歳未満の方もiDeCoに加入できます。
iDeCoの掛け金の上限と下限は?
iDeCoは、月々5,000円から積み立て可能で、1,000円刻みで掛け金を設定できます。
掛け金の上限額は加入区分によって異なりますので、先ほどの「iDeCoに加入できる条件は?」で挙げた加入区分ごとに、上限額を確認しましょう。
個人事業主、学生など(第一号被保険者)
掛け金上限額は、6.8万円/月(年間81.6万円)です。
ただし、国民年金基金や国民年金付加保険料を支払っている方は、その額との合算枠となりますので、注意しましょう。
民間の会社員、公務員(第二号被保険者)
会社員や公務員といった第二号被保険者の上限額は、企業年金や企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入状況によって異なります。
- 企業年金がない・・・2.3万円/月(年間27.6万円)
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している・・・2.0万円/月(年間24万円)
- DB(※)と企業型DCに加入している・・・1.2万円/月(年間14.4万円)
- DBのみに加入している・・・1.2万円/月(14.4万円)
- 公務員など・・・1.2万円/月(14.4万円)
(※)DBとは、確定給付企業年金や厚生年金基金のことを指します。
専業主婦・主夫(第三号被保険者)
掛け金上限額は、2.3万円/月(年間27.6万円)です。
iDeCoは年払いも可能
iDeCoは12月から翌年の11月を一年とし、その一年を自由に分けて掛け金を積み立てることができます。
年一回以上の好きなタイミングで積み立てができるので、年2回のボーナス月に多めに積み立てたり、一年分の積み立てを一度で積み立てたりすることが可能です。
月単位ではなく年単位で積立したい方は、年間の積み立て計画を立て、「加入者別掛金登録・変更届」を提出しましょう。
なお、iDeCoは掛け金を積み立てるたびに103円の手数料がかかりますので、積み立て回数を少なく設定すれば、手数料分のコストを削減できるという効果もあります。
iDeCoの受け取り方は?
iDeCoで積み立てたお金は、原則60歳以降に受け取り始められます。
ただし、iDeCoへの加入期間によっては、受給開始できる年齢が遅れることがありますので、ここで確認しておきましょう。
特に、50歳以上で加入すると60歳から受給できないケースがあります。
加入期間ごとの受給開始可能な年齢は以下の通りです。

出典:楽天証券
また、年金の受け取り方法には、全てを一括で受け取る「一時金」と何回かに分けて受け取る「年金」があります。
年金として受け取る場合には5年以上20年以下の期間で、1年刻みで設定できます。
年金で受け取る場合の年間支給回数と支給月については、以下の6種類から選択が可能です。
- 年一回・・・毎年12月
- 年二回・・・毎年6月、12月
- 年三回・・・毎年4月、8月、12月
- 年四回・・・毎年3月、6月、9月、12月
- 年六回・・・偶数月
- 毎月
なお、受給中も運用が行われるので、資産額が変動する点に注意しましょう。
iDeCoのメリット3つ
iDeCoには、3つの節税メリットがあります。
iDeCoで受けられる節税メリットは、以下の3つです。
- 掛け金が所得控除される
- 運用益が非課税
- 受取時も控除がある
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
1. 掛け金が所得控除される
iDeCoで積み立てる掛け金は全額所得控除されます。
例えば、月々2万円を積み立てている場合、年間で24万円が所得から控除されますので、その分納税額が少なくなり、年末調整によって払いすぎた税金が還付される仕組みです。
ただし、これはあくまでも概算であり、実際の金額を保証するものではない点にご留意ください。
2. 運用益が非課税
iDeCoで運用した結果、得た利益は全額非課税です。
通常の投資信託などで得た運用益には、所得税、住民税、復興特別所得税併せて20.315%の税率が課せられます。
つまり、100万円の利益があれば、約20万円を納税しなければなりません。
iDeCoで得た利益は非課税となるので、その分が再投資される仕組みで、複利運用の効果も最大限利用できます。
3. 受取時も控除がある
iDeCoは年金または一時金という形で給付を受けられますが、それぞれの受取時も節税メリットがあります。
ただし、非課税の上限額を超えて受け取る場合、超えた金額が雑所得として課税対象となります。
雑所得の計算については、以下の表を参考にしてください。

出典:りそな銀行
また、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象で、退職所得の計算式は以下の通りです。
iDeCoの退職所得控除は、iDeCoに加入していた期間に応じて異なりますので、以下の表を参考にしてください。
加入年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×加入年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(加入年数-20年) |
なお、iDeCo加入年数の端数は切り上げられますので、例えば20年3カ月加入している方は、21年として計算されます。
iDeCoのデメリット3つ
老後の年金を、節税メリットを受けながら準備ができるiDeCoですが、デメリットもありますので、事前にしっかり確認しておきましょう。
iDeCoの主なデメリットは、以下の3つです。
- 原則60歳(65歳)まで引き出せない
- 受給できる年数が限定されている
- 掛け金の変更が一年に一回しかできない
それぞれのデメリットを詳しく解説します。
1. 原則60歳まで引き出せない
iDeCoは、原則60歳まで積み立てた資金を引き出せません。
確実に老後のために資産形成できるという点ではメリットとも考えられますが、60歳までに資金が必要になっても、iDeCoで積み立てている資金は使えませんので、気をつけましょう。
iDeCoは老後資金のための積み立てと割り切って、無理をせずに計画を建てることが大切です。
ただし、死亡・高度障害などやむを得ない事情に加えて、一定の条件を満たす場合に限り例外的に途中で資金を引き出せます。
また、途中で積み立てを停止したり掛け金を減らしたりすることは可能です。
2. 受給できる年数が限定されている
iDeCoの受給年数は最長で20年間です。
つまり、60歳から受給を開始すると、80歳でiDeCoの受給は終わってしまいます。
2022年4月から受給開始の上限年齢が75歳まで引き上げられますので、最長で95歳まで受給できるようになりますが、100年時代と言われる中で、受給年数が限定されているというのは、少し心配に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
3. 掛け金の変更が一年に一回しかできない
iDeCoは掛け金の変更が可能です。
ただし、変更は一年に一度しかできません。
また、変更の際には、所定の様式「加入者掛金額変更届」に必要事項を記入のうえ、運営管理機関に提出する必要があります。
掛け金変更のための書類「加入者掛金額変更届」については、iDeCo公式サイトでご確認ください。
iDeCoに向いている人・向いていない人の特徴
ここまで解説してきたような特徴のあるiDeCoを始めるにあたって、向いている人と向いていない人の特徴を紹介します。
自分がどちらに当てはまるのか、確認してみましょう。
iDeCoに向いている人
iDeCoに向いている人の主な特徴は以下の通りです。
- 安定的な収入がある人
- 現預金がある人
- 退職金がないまたは少ない人
それぞれ解説します。
安定的な収入がある人
iDeCoは60歳まで原則引き出しができない、老後資金を積み立てるための制度です。
長期間にわたる積み立てを継続するために、安定的な収入があったほうが計画が立てやすいと言えます。
ただ、月々の掛金は最低5,000円から積み立てを開始できますので、高収入でなくとも拠出することはできるでしょう。
また、途中で資金を引き出せなくとも拠出の停止は可能です。
まずはiDeCoをスタートして積み立ての習慣を作ってみても良いでしょう。
現預金がある人
将来のために準備することは非常に大切ですが、現在の生活が苦しくなってしまわないように計画を立てる必要があります。
突発的な病気は怪我などによる出費にも対応できるように、生活費の3カ月から6カ月分の現預金があると安心です。
その上で、将来に向けた長期的な積み立てをiDeCoで始めましょう。
退職金がないまたは少ない人
iDeCoは、公的年金や退職金以外に老後の資金を自分で作っておくための制度です。
退職金が少ない中小企業の会社員や、退職金がない個人事業主は自分で老後の資金を積み立てておく必要があります。
老後の資金としてiDeCoを利用して長期の積み立てをすると、非常に大きな節税メリットを受けられます。
iDeCoに向いていない人
iDeCoに向いていない人の主な特徴は以下の通りです。
- 収入が不安定な人
- 現預金がない人
収入が不安定な人
歩合給が大きく収入が不安定な人や、転職を検討していて収入が読めない人は、iDeCoには慎重になるべきです。
iDeCoは原則60歳まで引き出しできない上に、最低でも月々5,000円の掛け金が必要です。
収入が不安定だけど少しでも積み立てを始めたい方は、iDeCoよりも少額から始められ、途中引き出しも可能なつみたてNISAも検討してみましょう。
現預金がない人
iDeCoで積み立てた資金は、原則60歳まで引き出せません。
その間にまとまった現金が必要になることも十分に考えられますので、すぐに使える現金も用意しておく必要があります。
現金が全く貯まっていない状態でiDeCoを始めるのは、今の生活に支障をきたす恐れがありますので、まずは3カ月から6カ月分の生活費を現金で貯めてから、iDeCoのスタートを検討すると良いでしょう。
iDeCoができる金融機関を選ぶポイント2つ
iDeCoは各金融機関で始められます。
ほとんどの金融機関で取り扱っていますが、どの金融機関を選べばよいのかわからないという方も少なくないでしょう。
iDeCoができる金融機関を選ぶ主なポイントは以下の通りです。
- 手数料が安い
- 商品数が豊富
それぞれ解説します。
1. 手数料が安い
iDeCoは、加入時、運用中、受取時に手数料がかかります。
それぞれの手数料において、最安値は以下の通りですので、確認しておきましょう。
- 加入時・・・2,829円
- 運用中・・・毎月171円
- 受取時・・・振り込みの都度440円
特に毎月支払う運用中の手数料や、振り込みの都度かかる受取時の手数料は、低額ですが長期間払い続ければ大きな金額になります。
また、投資信託による運用では、商品ごとに信託報酬もかかることも覚えておきましょう。
2. 商品数が豊富
iDeCoに取り扱っている商品には、定期預金や保険、投資信託があります。
取り扱っている商品数は金融機関によって大きく異なりますので、自分が購入したい商品があるかどうかをチェックしておきましょう。
iDeCoで取り扱いが可能な商品数は、35本が上限となっており、iDeCoと似た積立制度のつみたてNISAに比べるとかなり少ないです。
しかし、iDeCoには元本確保型の商品があるなど、より安定した商品もあります。
iDeCoで購入可能な主な商品の種類は以下の通りです。
- 元本確保型・・・定期預金、保険
- 投資信託・・・国内株式、国内債券、海外株式、海外債券、バランス型など
また、各商品のリスクやリターンは、以下の通りとなっています。

出典:知るぽると
iDeCoのおすすめ金融機関5つ
iDeCoのおすすめ金融機関5社を紹介します。
おすすめ金融機関5社は、以下の通りです。
- SBI証券
- マネックス証券
- 楽天証券
- 松井証券
- 野村證券
それぞれの特徴を詳しく確認しておきましょう。
SBI証券

出典:SBI証券
SBI証券は、ネット銀行など多くのインターネット金融サービスを提供するSBIホールディングス傘下のネット証券会社です。
SBI証券はiDeCoの加入者が最も多く(2021年7月時点)、低コストで豊富な商品を提供しています。
商品数が多いと選べないという方には、「SBI-iDeCoロボ」が自動で運用商品選びをサポートしてくれます。
マネックス証券

出典:マネックス証券
マネックス証券は、インターネットで金融サービスや投資教育を提供する総合ネット金融会社として、多くの投資家から支持を得ているマネックスグループが運営するネット証券会社です。
マネックス証券は、ネット上の口コミや評判が非常に高く、利用者からも好評を得ています。
手数料はいずれも最低水準で設定されており、低コスト商品を中心に27本の運用商品を提供しています。
マネックス証券の商品選びは、5つの質問に答えるだけで、最適な運用商品を提案してくれる「ロボアドバイザー」がサポートしてくれますので、初めての方も安心です。
また、サポート体制も充実しており、平日は20時まで土曜日も17時まで対応してくれるので、仕事などで平日や日中は時間がないという方も問い合わせしやすい環境です。
楽天証券

出典:楽天証券
楽天証券は、楽天市場や楽天モバイルなどのインターネット事業を中心に展開する楽天グループが運営するネット証券です。
低水準の手数料はもちろんのこと、国内外の株式や債券、不動産投資が可能なREIT、定期預金、保険などバランスのとれた32本の商品を提供しています。
初めての方でも始めやすいように、無料のウェブセミナーやスタートガイドも用意されており、iDeCoを学ぶコンテンツも豊富です。
松井証券

出典:松井証券
松井証券は、証券業を営んでから100年以上が経過する証券業界の老舗です。
非常に長い期間顧客に支持されてきた実績がある上に、日本で初めて本格的なインターネット取引を提供し始めたパイオニア的な存在でもあります。
松井証券も最低水準の手数料設定なので、低コストで運用を続けられます。
また取扱商品については、信託報酬が安い商品を中心に、40種類の豊富なラインナップとなっており、低リスクで堅実に積み立てたい方からリスクを取りながら積極的な運用をしたい方まで満足できる内容です。
野村證券

出典:野村證券
野村證券は、1925年に創業した大手証券会社で、対面営業に加えインターネット専用口座も提供している証券会社です。
また時価総額、顧客口座数、預かり資産残高などあらゆる部門で証券業界のトップに立ち、業界のリーダー的な存在としても知られ、豊富な投資情報で顧客の資産運用をサポートしています。
特にサポートサービスの評価は高く、HDI-Japanが提供するサポートサービスの格付け調査において「問い合わせ窓口」「Webサポート」の2部門で5つ星認証を獲得しています。
野村證券のiDeCoは、最低水準の手数料でコストを抑えた運用が可能な上、32本という豊富かつ厳選された商品ラインナップです。
まとめ
今回は、iDeCoについて詳しく紹介しました。
iDeCoは節税メリットを受けながら老後の資金を積み立てられる、お得な制度です。
ただ貯金しても資金が増えない時代に、積立時、受取時ともに節税メリットを受けられ、資産を増やせるので、長い期間で資産形成を考えている方は、早速iDeCoの口座を開設してみましょう。