株のように市場でリアルタイムの売買ができる金融商品が、ETFです。
米国ETFなら成長性のある米国企業に、分散投資ができるのも大きな魅力です。
今回は、米国ETFのメリットやデメリット、初心者向けの銘柄の見つけ方や厳選したおすすめ銘柄を紹介します。
- ETFとは市場で売買できる投資信託
- 米国ETFなら米国の経済成長に乗れる
- まずはインデックス型ETFがおすすめ
米国ETFとは?
ETFとは「Exchange Traded Fund」の略で、日本語では上場投資信託といいます。
金融庁は上場投資信託を「一般的に、ある指標に連動する運用を行う、証券取引所に上場する投資信託のこと。指値や成行注文が可能です。」としており、市場がオープンしている時間帯に自由に売買できます。
上場していない投資信託の基準価額は一日に一回算定され、その価額で売買することになるので、ETFの方がよりタイムリーな価額での売買が可能です。
ETFの種類はさまざまで、米国資産を中心に投資するETFを米国ETFといい、日本国内にいながら円建てで米国株に投資できます。
ETFには、その他にも次のような種類があります。
- 国内株式・・・日本株中心
- 海外株式・・・海外株式中心
- 国内債券・・・日本債券中心
- 海外債券・・・海外債券中心
- インデックス型・・・日経平均やS&P500などのインデックスに連動する
- アクティブ型・・・インデックスを上回る運用を目指す
- テーマ型・・・ITやエネルギーなど注目のテーマが中心
- ファクター型・・・高配当や割安株、成長株などのファクターが中心
米国ETFが投資初心者におすすめの理由
海外の資産に投資することを考えると、難しそうと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、長期的な投資であれば、世界経済が成長する限り、失敗することのほうが難しいとも言えます。
下のグラフは金融庁が公表している、分散・積立投資をした場合、20年の長期投資であれば、収益がプラスになっているというデータです。

出典:金融庁
特に世界経済を牽引している米国株式は、毎年高値を更新する順調な成長を続けており、投資対象としても世界から注目を集めています。
下のグラフは、主要国の名目GDPの推移です。

出典:楽天証券
GDPとはモノやサービスの付加価値のことで、シンプルに表現すると儲けのことであり、経済成長の度合いとして注目される数値です。
日本にいながら経済成長著しい米国に投資できる米国ETFは、初心者がタイミングに迷わずに投資をスタートできる絶好の金融商品と言えるでしょう。
米国ETFのメリット4つ
米国ETFの主なメリットは、以下の4つです。
- 一つの商品で分散投資が可能
- 成長性のある米国株に投資可能
- 低コスト
- 市場で取引できる
それぞれ解説します。
1. 一つの商品で分散投資が可能
初心者が比較的安全に投資をするのであれば、分散投資は欠かせません。
分散投資には、リスクを分散させることで、リターンを安定させる効果があります。
分散投資にも、時間分散、資産分散、通貨分散などさまざまな考え方がありますが、投資信託では一つの商品を購入するだけで資産分散をすることが可能です。
2. 成長性のある米国株に投資可能
日本にいながら米国株に投資できるのも米国ETFの魅力の一つです。
米国には、世界で活躍する大企業が多数あり、米国株ETFを購入することで、それらの企業に投資できます。
例えば、2022年1月時点の世界の企業における時価総額ランキングでは、TOP10のうち8社がアメリカの企業です。

出典:STARTUP DB
3. 低コスト
投資信託のコストは大きく分けて、購入時、運用中、売却時に発生します。
それぞれのコストは証券会社や商品によって異なるため一概には言えませんが、一般的にはETFの運用中コストは安い傾向にあり、非上場の投資信託よりもETFの方がコストを抑えた運用となるケースが多いのが実情です。
4. 市場で取引できる
ETFは上場投資信託なので、市場がオープンしている時間帯であれば、いつでも売買できます。
一方、通常の非上場の投資信託は一日に一度その日の終値で基準価額が決定するので、一日に一度しか設定・解約の手続きができません。
ETFの方が柔軟に売買できるので、機動的な運用が可能になります。
ただし何度も売買を繰り返すと、手数料がかさむケースもあるので、商品や証券会社の手数料を確認しておきましょう。
米国ETFのデメリット3つ
低水準のコストで、米国の資産に投資ができる米国ETFですが、あらかじめ把握しておきたいデメリットもあります。
米国ETFの主なデメリットは、以下の3つです。
- 自動積立ができない証券会社が多い
- 売買時に株式投資と同じような手数料がかかることも
- 売買タイミングが難しい
それぞれ解説します。
1. 自動積立ができないケースが多い
非上場の投資信託は、自動積立を設定することで毎月定額の購入を継続できますが、ETFでは自動積立の設定ができない証券会社が多いです。
ただし、ネット証券ではETFの自動積立が可能な証券会社が多く、SBI証券やマネックス証券、楽天証券などがETFの自動積立サービスを提供しています。
例えばSBI証券の定期買付サービスでは、「毎月13日と27日に1万円ずつ購入する」といった設定が可能です。
2. 売買時に株式投資と同じような手数料がかかることも
ETFは上場しているので、市場がオープンしていれば株式のように取引ができます。
株式は売買代金に応じて、購入時・売却時ともに手数料がかかりますが、ETFの売買においても株と同じように手数料がかかることがあります。
証券会社によって手数料体系が異なりますので、証券会社を選ぶ際に注目してみましょう。
ネット証券では、売買手数料がかからないETFを用意していることも多く、コストを抑えた運用が可能です。
3. 売買タイミングが難しい
ETFは市場がオープンしていれば自由に売買できるメリットがありますが、その一方で売買タイミングを自分で決めなければいけません。
これは、投資初心者でなくても難しい作業です。
売買のタイミングに不安がある方には、SBI証券の定期買付サービスのような自動積立を利用すると良いでしょう。
米国ETFが購入できるおすすめの証券会社5つ
米国ETFを始めるなら、ネット証券がおすすめです。
その中でも特におすすめな5つのネット証券を紹介しますので、これからの証券会社選びの参考にしてください。
- マネックス証券
- SBI証券
- 楽天証券
- DMM株
- PayPay証券
それぞれ紹介します。
マネックス証券

出典:マネックス証券
マネックス証券は、マネックスグループ株式会社が100%出資するネット証券会社です。
設立は1999年で、現在は国内株、海外株、投資信託、ETF、FXなどさまざまな金融サービスを提供しており、投資情報教育にも力を入れています。
マネックス証券には、米国株定期買付サービスがあり、米国ETFの自動積立が可能です。
また、マネックス証券には米国ETFの買付手数料が実質無料になる「UASプログラム」があります。
USAプログラムは、マネックス証券が指定した9銘柄の買付手数料が上限なしで全額キャッシュバックされる仕組みです。
対象の9銘柄の中には人気のS&P500に連動するETFや高配当株に絞ったファンドなどがあり、運用のパフォーマンスも期待できます。
SBI証券

出典:SBI証券
SBI証券は、ネット銀行としても最大規模の運営をしており、経営に安定感があるネット証券の一つです。
SBI証券も対象の9銘柄について買付手数料無料サービスを提供していますので、コストを抑えた米国ETF投資ができます。
自動積立サービスを提供している他、豊富な銘柄検索機能やチャート分析機能を備えた米国株取引専用アプリで、時間や場所を問わずに取引が可能です。
楽天証券

出典:楽天証券
楽天証券は、楽天銀行や楽天市場、楽天モバイルなどでも知られる楽天グループのネット証券会社です。
盤石な経営基盤で運営されている楽天証券は、さまざまなサービスで顧客を獲得し続けています。
楽天証券の米国ETF(ETN含む)は、355銘柄と非常に豊富で、銘柄選びに迷ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、テーマや地域で簡単に検索できる機能があり、目的の銘柄をすぐに見つけられます。
楽天証券も対象の9銘柄について買付手数料を無料としており、自動積立サービスもあるので、買付のタイミングに迷うことがありません。
また、楽天ポイントを使ったポイント投資が可能な点は、楽天ならではの特徴と言えるでしょう。
DMM株

出典:DMM株
DMM株は、FXや株式投資などの金融関係だけでなく、幅広いサービスで知られているDMMグループが運営しているネット証券会社です。
DMM株の米国ETF銘柄は185銘柄(2022年2月23日時点)あり、そのすべての銘柄において買付手数料が無料となっています。
取引ツールはパソコン版、スマホ版ともに充実しており、国内株式も海外株式も一つのツールで取引できます。
PayPay証券

出典:PayPay証券
PayPay証券は、「One Tap BUY」というサービス名称で、スマホで取引できる証券サービスを開始し、2021年2月に現在の名称になった証券会社です。
ソフトバンクやみずほ証券などがPayPay証券の大株主になっており、経営を支えています。
PayPay証券の取扱商品は、日米の株式やETFがほとんどで、米国ETFは25本用意されています。
PayPay証券における米国ETFの売買手数料は、時間帯によって異なり、以下の通りです。
時間帯 | 手数料 |
---|---|
日本時間 23:30 ~ 6:00 (夏時間:22:30 ~ 5:00) |
「基準価格」に0.5%を乗じた価格 |
上記以外の時間帯 | 「基準価格」に0.7%を乗じた価格 |
PayPay証券は、手数料を「スプレッド」と表現していて、買付の際は上記の金額を加算した金額を、売却の際は上記の金額を減算した金額を「取引価格」としています。
PayPay証券では、1,000円以上1,000円単位で株を購入することができ、投資初心者にとって少額で投資をスタートできる点で、投資を始めやすい取引環境と言えるでしょう。
また、定額の自動積立をしたい方には、「つみたてロボ貯蓄」がおすすめです。
銘柄と購入金額、購入頻度を設定しておくと、自動で積み立ててくれます。
米国ETFの銘柄を選ぶ際に注目すべき3つのポイント
初心者にとって、銘柄の選択は頭を悩ませることが多いでしょう。
ここでは、銘柄を選ぶ際に注目すべき3つのポイントを紹介します。
投資未経験の方が米国ETFを選ぶ際には、次の3つのポイントに注目してみましょう。
- 投資目的
- 経費率
- 長期的な成長
それぞれ解説します。
1. 投資目的
米国ETFには、さまざまな銘柄が用意されていますが、初心者におすすめな銘柄は、各国の株価指数に連動するインデックス型のETFです。
特に米国のS&P500やダウ工業平均に連動するように組まれたETFがおすすめです。
ESGや成長株、割安株に集中して投資するテーマ型ETFや高配当株中心のファクター型ETFもありますが、ファンドの中身を精査するのは投資経験者でも簡単ではありません。
まずは、今後も成長が見込まれる米国株式インデックスETFを検討してみましょう。
2. 経費率
ETF投資はコストを抑えた投資が可能ですが、全くコストがかからないというわけではありません。
ETFの純資産額に対する、そのETFを運用するためにかかる費用の割合を経費率といいます。
経費率は純資産額に掛けて、日割りをして毎日資産額から差し引かれています。
経費率が低い運用会社の代表格として、バンガードを押さえておきましょう。
バンガードは、1975年に米国で創業した資産運用会社です。
バンガードが販売しているETFの平均経費率は、業界平均の四分の一です。

出典:楽天証券
3. 長期的な成長
米国ETFは市場で取引できるので、厳密な取引タイミングを自分で決めて売買できるというメリットがあります。
ただ、適切な取引タイミングを見極めることは非常に難しく、投資未経験の方が積極的にリアルタイムの売買をすることは推奨できません。
米国ETFでは自動積立を利用し、売買タイミングを図ることなく、定期的に定額を長期的に積み立てていく、長期・分散・積立投資がおすすめです。
長期・分散・積立投資で重要なことは、投資対象が長期的に成長してくことです。
長期的に成長する米国経済全体に投資可能な、S&P500やダウ工業平均に順ずるインデックス型ETFを検討してみましょう。
投資初心者におすすめの米国ETF3選
投資初心者におすすめの米国ETFは以下の通りです。
- バンガード・S&P 500 ETF
- SPDR S&P 米国高配当株式 ETF
- バンガード・米国高配当株式ETF
それぞれ紹介します。
1. バンガード・S&P 500 ETF
バンガードが運用している商品で、S&P500に連動したパフォーマンスを目指すファンドです。
S&P500は米国の主要業種を代表する大型の500銘柄で構成されているので、米国経済の状態を表す指数として世界中の投資家から注目されています。
当ETF に組み入れられている上位5銘柄は以下の通りです。

出典:楽天証券
経費率は0.03%と低水準なので長期保有でも、コストを抑えた運用が可能です。
2. SPDR S&P 米国高配当株式 ETF
この銘柄は、米国の大手資産運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)が運用している米国ETFです。
SSGAは世界で初めて米国ETFを送り出したETF業界のパイオニアであり、銘柄名にあるSPDR(スパイダー)は、SSGAが提供しているETFブランドとして多くの投資家から支持されています。
SPDR S&P 米国高配当株式 ETFは過去20年以上に渡って増配を継続している企業を組み入れており、配当利回りが高い点が大きな特徴です。
20年以上配当を継続する企業は、規模も大きく安定した経営をしていると考えられるので、長期間の安定した運用パフォーマンスが期待できると考えられます。
スパイダーSPDR® S&P® 米国高配当株式 ETFの経費率は0.35%です。
3. バンガード・米国高配当株式ETF
バンガード・米国高配当株式ETFも、米国高配当株が中心のファンドです。
予想配当利回りが市場の平均利回りを上回る銘柄で構成されていて、なおかつ400以上の銘柄に分散投資しています。
このETFに組み入れられている上位5銘柄は以下の通りです。

出典:楽天証券
組入上位銘柄は米国の企業でありながら、世界で活躍している企業が多く、長期投資の対象銘柄としても適していると考えられます。
なお、バンガード・米国高配当株式ETFの経費率は、0.06%です。
米国ETFのQ&A
米国ETFに関するよくある質問をまとめました。
円建てとドル建てどちらで買うのがお得?
米国ETFは、日本円でも米国ドルでも購入が可能です。
円で購入する場合、証券会社で購入の手続きをするだけで、証券会社が円をドルに替えて購入してくれますが、為替手数料がかかります。
例えば、楽天証券の場合、売買時の為替手数料は25銭/ドルです。
一方、ドル建ての場合、売買時の為替手数料はかかりませんが、自分で円をドルに替えるときに為替手数料がかかります。
為替手数料については利用する金融機関によって異なりますが、手間なども考えるとどちらも大きな差はないと考えて良いでしょう。
ただし両替しなくともドルを持っている方は、為替手数料分のコストを省けます。
ETFと投資信託はどちらがおすすめ?
投資信託で投資を始めて、慣れてきたらETFを検討することをおすすめします。
昨今、つみたてNISAを利用して投資を始める方が多いですが、つみたてNISAにはETFの数が多くありません。
また国内の投資信託であっても、米国株中心のファンドは数多くありますので、無理にETFで始める必要はないと考えられます。
ただ、どうしても買いたいETFがある場合は、ETFから始めても良いでしょう。
今はETFにも自動積立サービスがありますし、運用中のコスト(投資信託は信託報酬、ETFは経費率)を比較すると、ETFに軍配が上がることも多いです。
米国ETFの税金はどのくらい?
米国ETFによって得る利益には大きく分けて売却益と配当金があります。
売却益に関しては、国内株式と同様、利益に対して所得税、住民税、復興特別所得税を合わせて20.315%の税率で課税され、配当金に関しては、まず米国において10%の税率で源泉徴収され、差し引かれた額に対して国内で20.315%が課税されます。
外国税額控除の適用申請のためには、「外国税額控除に関する明細書」を作成し、確定申告時に提出することになりますが、「外国税額控除に関する明細書」を作成するために必要な書類は各証券会社に問い合わせれば発行してもらえます。
まとめ
今回は、米国ETFについて、基本的なところからおすすめの銘柄まで紹介しました。
情報が増え、一般の方も海外の投資先に目を向けられる時代です。
より良い投資先に投資することは、将来の暮らしを豊かにすることにつながります。
世界経済の中心であり、長期成長が見込まれる米国は良い投資先といえます。
便利なネット証券を利用し、コツコツと資産を増やしていきましょう。