大きな節税メリットを受けながら老後の資産づくりができるiDeCoですが、掛け金の設定に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
今回はこれからiDeCoを始める方向けに、現在のiDeCo加入者がいくらの掛け金に設定しているのかを紹介しながら、実践的な掛け金の設定方法についてわかりやすく解説します。
- iDeCoの掛け金平均は全体で約1万円
- iDeCoの掛け金は目標額から逆算してみよう
- iDeCoの掛け金は最低額5,000円/月でも効果あり
みんなのiDeCoの掛け金の平均は?
iDeCoに加入したら、いくら積み立てれば良いのでしょうか。
掛け金額の参考に、現在の加入者がいくらの掛け金を設定しているのか、確認してみましょう。
2021年12月時点のiDeCoの加入者数は227万人を超え、増え続けています。
さまざまな職業の方々がiDeCoに加入していますが、全体の掛け金の平均額は1万953円で、加入者区分別の掛け金平均額は、以下の通りです。
加入者区分 | 掛け金平均 | |
---|---|---|
第1号被保険者(個人事業主等) | 2万8,499円 | |
第二号被保険者 (会社員、公務員等) |
企業年金なし | 1万6,538円 |
企業年金あり | 1万872円 | |
共済組員(公務員) | 1万980円 | |
第三号被保険者(専業主婦(夫)等) | 1万5,277円 | |
全体平均 | 1万953円 |
(2021年12月時点)
個人事業主が最も大きな掛け金となっていますが、個人事業主には厚生年金がなく、各加入者区分の中で最も上限額が大きく設定されています。
逆に公務員や企業年金ありの会社員は、掛け金上限額は最も小さくなっています。
自分の加入者区分がどこにあたるのか確認し、参考にしてください。
iDeCoの掛け金はいくらがおすすめ?
iDeCoの掛け金には上限があります。
加入者区分によって異なるので、必ず上限額を確認しておきましょう。
その上でiDeCoの掛け金を決めるときに考えるべき要点は、以下の二つです。
- 将来貯めたい金額から逆算
- 現在の生活に支障がない範囲
iDeCoは、原則60歳まで引き出しができないので、老後の資金と割り切って積み立てをスタートします。
まずは老後に貯めたい資金から逆算して、掛け金を検討してみましょう。
目標額から掛け金を逆算するには、楽天証券の「積み立てかんたんシミュレーション」が便利です。
目標額、積立期間、利回りを入力するだけで、月々に必要な掛け金が算出されます。
例えば、目標金額を1,000万円、積立期間30年、利回り3%とした場合、月々の掛金は1万7,160円となります。

出典:楽天証券
また、条件を変えて比較することもできる上に、そのリターンに見合う運用商品をすぐに確認することも可能です。

出典:楽天証券
掛け金の目安を確認したら、現在の生活に支障がないか、家計の収支を計算しましょう。
iDeCoは長期間の積み立てになります。
途中で積み立てを停止することもできますが、継続すれば節税メリットや大きな運用益も期待できます。
まずは最後まで積み立てが可能な金額を検討すると良いでしょう。
iDeCoを利用するメリット3つ
iDeCoには、以下のような3つの大きな節税メリットがあります。
- 掛け金全額所得控除
- 運用益非課税
- 受取時も控除
まず、掛け金の全額所得控除です。
例えば、iDeCo公式サイトの「かんたん税制優遇シミュレーション」によると、年収500万円の会社員が2万円/月の掛け金を毎月積み立てると、年間で2万4,000円の節税になります。
iDeCoで積立できる運用商品には、元本確保型の定期預金や保険のほか、積極的に運用益を狙える投資信託もあります。
通常の投資信託の場合、運用益に対して20.315%の税率で課税されますが、iDeCoによる運用であれば、運用益全額が非課税です。
最後に、iDeCoで積み立てたお金の受け取り方ですが、一時金、年金、一時金と年金の併用が可能です。
一時金で受け取る場合は退職所得控除が、年金として受け取る場合は公的年金控除が適用されます。
iDeCoのおすすめ金融機関
iDeCoは、各金融機関を利用して加入できます。
多くの金融機関でiDeCoを扱っていますので、どの金融機関を選べば良いか迷ってしまう方も少なくないでしょう。
ここで、iDeCoでおすすめの金融機関を3つ紹介します。
- SBI証券
- マネックス証券
- 楽天証券
SBI証券

出典:SBI証券
SBI証券は、ネット銀行など多くのインターネット金融サービスを提供するSBIホールディングス傘下のネット証券会社です。
SBI証券はiDeCoの加入者が最も多く(2021年7月時点)、低コストで豊富な商品を提供しており、「SBI-iDeCoロボ」が自動で運用商品選びをサポートしてくれますので、運用が初めての方にとっても、iDeCoを始めやすい環境と言えるでしょう。
その他、iDeCoについての知っておきたい話やニュースなどをコラム形式で読める「iDeコラム」など資産運用について学べるコンテンツが充実しています。
マネックス証券

出典:マネックス証券
マネックス証券は、インターネットで金融サービスや投資教育を提供する総合ネット金融会社として、多くの投資家から支持を得ているマネックスグループが運営するネット証券会社です。
マネックス証券は、ネット上の口コミや評判が非常に高く、利用者からも好評を得ています。
手数料はいずれも最低水準で設定されており、低コスト商品を中心に27本の運用商品を提供しています。
マネックス証券の商品選びは、5つの質問に答えるだけで、最適な運用商品を提案してくれる「ロボアドバイザー」がサポートしてくれますので、初めての方も安心です。
また、サポート体制も充実しており、平日は20時まで土曜日も17時まで対応してくれるので、仕事などで平日や日中は時間がないという方も問い合わせしやすい環境です。
楽天証券

出典:楽天証券
楽天証券は、楽天市場や楽天モバイルなどのインターネット事業を中心に展開する楽天グループが運営するネット証券です。
低水準の手数料はもちろんのこと、国内外の株式や債券、不動産投資が可能なREIT、定期預金、保険などバランスのとれた32本の商品を提供しています。
初めての方でも始めやすいように、無料のウェブセミナーやスタートガイドも用意されており、iDeCoを学ぶコンテンツも豊富です。
特に楽天証券の「積み立てかんたんシミュレーション」は、資産形成の目標額や利回り、運用期間を入力するだけで、月々の掛け金を逆算してくれます。
毎月の掛け金の設定に悩んでいる方や、目標額を達成するためにどのような運用商品を選べばよいのか悩んでいる方にとって、非常に便利なツールとなるでしょう。
iDeCoの掛け金の上限と下限は?
iDeCoの掛け金の上限額は、職業や勤め先の企業年金の有無によって異なります。
職業別の掛け金の上限額については、下の表をご覧ください。

出典:iDeCo公式サイト
なお、確定給付企業年金とは、企業が従業員のために積み立てる高齢期のための年金制度で、給付額が確定しています。
会社員の方で、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金(企業型DC)の両方に加入している場合も、上限額は1万2,000円となります。
また、自営業の方は、厚生年金基金や国民年金の付加保険料と合算して上限額が6万8,000円です。
表を見てわかるように、自営業が最も上限額が多くなっています。
公務員や会社員は、国民年金に加えて厚生年金にも加入している一方で、個人事業主には老後資金を準備する制度が国民年金しかなく、自分で老後の資産形成をするしかないからです。
会社員には企業年金の有無によって、3パターンの上限額が用意されています。
iDeCoは年払いと月払いどちらが良いの?
iDeCo開始当初は、月払いしかできませんでしたが、2018年から年単位の拠出、いわゆる年払いが可能になりました。
年払いと月払いではどちらのほうが良いのかは、運用商品によって異なります。
年払いのメリットや年払いに向いている商品、向いていない商品について確認していきましょう。
iDeCoを年払いにするメリット
iDeCoは、掛け金を拠出するたびに105円の手数料がかかります。
年払いなら、年間に一度の拠出になりますので、105円/年の手数料で済みますが、月払いだと105円 × 12カ月で1,260円の手数料がかかります。
一年間の差は1,155円となり、30年間積み立てるとその差は3万4,650円です。
少しでもコストを切り詰めたいという方は、年払いを検討してみましょう。
iDeCoの年払いに向いている商品・向かない商品
月払いと比べて、年間で1,155円のコストを削減できる年払いに向いている商品は、定期預金や保険などの元本確保型または、低リスクの商品です。
一方、大きく価格が変動する投資信託などの商品を購入する場合は、年払いにすると掛け金を拠出するタイミングが1回になり、その後、運用商品の価格が下落した場合のリスクが高くなります。
そのため、価格変動の大きな運用商品は、拠出するタイミングを分散できる月払いのほうが向いていると考えられます。
これは、拠出するタイミングを分散させて低額を積み立てる、いわゆるドルコスト平均法の考え方で、拠出するタイミングを分散させることで、価格変動のリスクを減少させることが可能です。
iDeCoの掛け金は途中から変更できる?
iDeCoの掛け金は、積み立ての途中でも、年に一度変更できます。
掛け金を変更する場合は、金融機関に「加入者掛金額変更届」を提出しましょう。
「加入者掛金額変更届」は、iDeCo公式サイトからプリントアウトできます。
書式は加入者区分によって異なりますので、間違えないように気をつけましょう。
iDeCoの掛け金が払えない時はどうすればいい?
iDeCoは最低5,000円/月から1,000円刻みで積立できます。
支払いが厳しくなってきたら、まずは掛け金の変更を検討してみましょう。
それでも掛け金を払えなくなってしまったら、支払いを止めることも可能です。
支払いを止めるには、金融機関に「加入者資格喪失届」を提出します。
「加入者資格喪失届」を提出すると、「加入者」ではなく「運用指図者」という位置づけになり、それまでに積み立てておいた資産の運用だけをすることになります。
なお、運用指図者になり掛け金の支払いを止めても、口座管理手数料はかかりますので、覚えておきましょう。
iDeCoの掛け金でよくある質問Q&A
iDeCoの掛け金について、よくある質問とその回答を紹介します。
iDeCoをスタートする前に確認しておきましょう。
掛け金を支払えないとき、翌月以降にまとめて支払っても良いですか?
未払いの掛け金を翌月以降にまとめて支払うことはできません。
ただし、加入時に申込書の提出タイミングなどの事情により、初回の引き落としが間に合わなかった場合、翌月に2カ月分まとめて引き落とされることはあります。
また、未払いの掛け金分は所得控除を受けられず、未払い期間は運用期間からも除外されます。
運用期間から除外されると、受取時の退職所得控除額に影響しますので、気をつけましょう。
掛け金の支払停止や再開は、いつでも可能ですか?
いつでも可能です。
支払停止や再開に必要な書類は、iDeCo公式サイトや運用している金融機関で取得できます。
なお、手続きには通常1カ月~2カ月程度かかるので、早めの手続きを心がけましょう。
掛け金の支払い方法は?
会社員や公務員で、勤め先が給与天引きに対応してくれる場合は、給与天引きが可能です。
個人事業主や専業主婦(夫)は、銀行口座からの振替になります。
口座振替の場合、振替日は毎月26日で、26日が金融機関の休業日の場合は前営業日の振替です。
なの、口座振替に対応していない金融機関もありますので、金融機関を指定する前に確認しておきましょう。
掛け金が最低金額の5000円だと意味がない?
意味がないということはありません。
例えば、25歳の会社員が5,000円/月を60歳までの35年間、iDeCoで積み立てたとします。なお、運用商品は年平均利回り5.0%の投資信託とします。
楽天証券のシミュレーションによると、節税額、積み立て元金、運用益は以下の通りです。
- 35年間の所得控除額・・・31万5,000円
- 35年間の積み立て元金・・・210万円
- 35年間の運用益・・・358万462円
- 運用益非課税による節税額・・・71万6,092円
何もせず、銀行に置いておいても所得控除もなければ運用益もありません。
たとえ少額であっても、長期間運用することによる複利効果は非常に大きいと言えます。
まとめ
今回は、iDeCoの掛け金に焦点をあてて解説しました。
iDeCoの掛け金には上限額があり、職業によって異なりますので、まずは自分の掛け金の上限額を確認しておきましょう。
その上で、目標額から逆算したり、家計の収支を計算したりしながら、長期間継続できる範囲でスタートしてみましょう。