トルコリラ/円をスワップポイント目的で買うのは危ない?今後の見通しと運用のポイント

FXの基礎知識

FXで利益を得るには2種類の方法があります。

1つは価格変動をチャンスと捉えて積極的に売買益を狙うキャピタルゲイン投資、もう1つは金利差収入であるスワップポイントをコツコツ積み上げていくインカムゲイン投資です。

今回はコツコツ利益を積み上げたいインカムゲイン投資志向の方に向けて、現在最高水準のスワップポイントを受け取れる「トルコリラ/円」の運用ポイントを発信していきます。

  • トルコリラ/円って何?
  • トルコリラ/円を運用する上でのポイントは?
  • トルコリラ/円の今後の見通しは?
  • トルコリラ/円の運用に適しているFX業者は?

このような疑問をお持ちの方にこそ、読んでいただきたい内容となっております。

トルコリラ/円とは

トルコリラ/円とは、トルコの通貨である「リラ」の日本円に対する価値です。

FXの世界では略して「トルコリラ/円」、もしくは英語で「TRY/JPY」と表記されます。(以下、トルコリラ単体を表す場合は「トルコリラ」、通貨ペアを表す際は「トルコリラ/円」と表記します。)

出典:みんかぶFX(2020/10/23時点)

トルコリラ/円の見方ですが、チャートを見ると最近は13円ほどになっています。つまり1トルコリラは13円ほどの価値があるということです。

トルコリラの価値が上昇すれば、1トルコリラを得るためにはより多くの円が必要になりますから、チャートは上方向に動きます。

足元ではチャートが下落していますが、1トルコリラと交換するために必要な円が少なくなっていることを示しています。つまり、トルコリラ安なのです。

トルコリラ/円の特徴

トルコリラ/円の特徴は以下の5つです。

  • 高スワップ通貨(高金利通貨)
  • 少額保証金で運用できる通貨
  • 経常赤字国の通貨
  • 地政学リスクのある通貨
  • 流動性が低い通貨

1つずつ詳しく解説していきます。

高スワップ通貨(高金利通貨)

トルコリラ/円の代表的な特徴として、高金利通貨であることが挙げられます。

それも主要国のなかでも最高水準です。

金利は各国政府が設定している政策金利の水準で確認できます。以下、主要国の政策金利をまとめてみました。

国名 政策金利
日本 -0.10%
欧州 0.00%
アメリカ
カナダ
オーストラリア
0.25%
南アフリカ 3.50%
メキシコ
ロシア
4.25%
トルコ 10.25%

※2020/10/25公表時点

ご覧いただくとわかるように、主要国の政策金利はかなり低水準であるのに対し、トルコは10.25%と最高水準です。

預金金利は政策金利を参照しているため、政策金利はその通貨を1年間保有していた場合にもらえる利子ともいえます。

米ドルでは1,000ドル保有しても1年で2.5ドルしかもらえませんが、トルコリラであれば1,000トルコリラで102.5トルコリラも利子で受け取ることができます。

政策金利が重要な理由は、インカムゲイン投資の要であるスワップポイントが政策金利を基準に決定されるからです。

出典:みんかぶFX(2020/12/11時点)

確認してみると、他の通貨ペアと比較してもトルコリラ/円でもらえるスワップポイントはかなり高水準だとわかります。

つまり、インカムゲイン投資を行うのであれば、トルコリラ/円は有力な投資先の1つといえるのです。

少額保証金で運用できる通貨

トルコリラ/円の特徴として、必要保証金が最低水準であることが挙げられます。

FXで運用する通貨ペアを選ぶ際には、必要保証金にも注意しないといけないのですが、以下にあるように、トルコリラ/円の運用に必要な保証金はかなり低水準であることがわかります。

出典:S B I証券(2020/10/24適用分 1単位当たり)

先進国通貨の運用は最低でも50,000円ほどの保証金が必要であるのに対し、トルコリラ/円は5,000円で済みます。

ここで必要保証金に対する利回りを確認してみましょう。インカムゲイン投資では利回りが最も重要な指標です。

先ほどのスワップポイント表では、南アフリカランド/円の方がトルコリラ/円よりスワップポイントが高かったのですが、必要保証金はトルコリラ/円の5倍も必要です。しかし、スワップポイントはトルコリラ/円の2倍ほどしかありません。

つまり、同じ資金だとトルコリラ/円の方が南アフリカランド/円よりも約2倍利回りが高くなり、より効率的に利益を積み上げることができます。

保証金が少額で済むため運用を開始するハードルが低いこと、そして利回りが高いことから、インカムゲイン投資であればトルコリラ/円はFX初心者に向いている通貨ペアだといえるでしょう。

経常赤字国の通貨

FXは外国為替市場で勝負する取引ですから、同市場に影響を与える主要国の経常収支はチェックする必要があります。とくに投資対象国の経常収支は重要です。

トルコは慢性的な経常赤字国です。

トルコ経済は外国からの輸入が不可欠であり、トルコ安は輸入品の高騰につながります。輸入品の高騰がトルコ経済の成長の妨げになり、さらにトルコ安が進むという悪循環に直面しています。

出典:Investing.com「トルコ 経常収支」(2020/10/25時点)※単位は10兆ドル

上記のチャートは2年間のトルコの経常収支を表しています。経常赤字であることが多く、赤字幅がトルコリラをどれだけ下落させるのか、という見方をします。

反対に、経常収支が改善されればトルコリラ高につながります。黒字とまではいかなくても、赤字幅が縮小すればトルコリラ高につながるでしょう。

トルコリラ/円を運用するのであれば、為替相場だけでなく、経常収支をはじめとするトルコ経済の動向にも注目する必要があります。

地政学リスクのある通貨

トルコリラ/円を運用するにあたって、注意しないといけないことの1つに地政学リスクがあります。

地政学リスクとは、地理的な位置関係による軍事的・政治的な問題が与える相場への影響を指します。日本でいえば北方領土問題によるロシアとの対立などが該当します。

地政学リスクはおおむねどこの国にもあるものですが、トルコに関しては地政学リスクが相場に与える影響がとりわけ強いため注意が必要です。

シリア問題が発展した際は、イスラム圏であるトルコ相場にも悪影響を及ぼしました。

直近でいえば、旧ソ連のアゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突に加勢するなど、紛争問題が絶えないのもトルコの特徴といえます。

このような背景から、仮にトルコ経済が急拡大してトルコ高要因が意識されても、地政学リスクが付き纏う以上、投資家は積極的にポジションを大きくすることができないといえます。

トルコリラ/円を運用する上では、中東問題にも注意しないといけないのです。

流動性が低い通貨

先進国通貨にないトルコリラ/円の特徴として、流動性が低いことが挙げられます。

流動性とは、市場で売買される取引量のことです。

取引量が多ければ多いほど、買いたいときに買うことができ、売りたいときに売ることができます。取引参加者が多いため取引が活発だからです。

主要通貨と比べるとトルコリラ/円は流動性が低いため、自分が売買したいときに希望する価格で取引できない可能性があります。

ここで注意していただきたいのは、流動性が低くても売買ができないということではなく、取引したい値段で取引できなくなるということです。

つまり、売買手数料にあたるスプレッドが大きくなってしまうのです。

出典:みんかぶFX(2020/10/23時点)

主要通貨ペアのスプレッドに注目していただきたいのですが、トルコリラ/円のスプレッドが比較的高いことがわかります。

スプレッドは取引の相手方となるFX業者が、その通貨を市場から仕入れるコストを反映しています。トルコリラは流動性が低いため、高い調達コストを反映した結果スプレッドが高くなってしまうのです。

トルコリラ/円は流動性が低いため、取引手数料が比較的高いことには留意が必要でしょう。

スワップポイント目的の運用のポイント

トルコリラ/円でスワップポイントを目的とした運用、つまりインカムゲイン投資をする際のポイントは、「時間分散」と「銘柄分散」の2つです。

時間分散を行う

時間分散とは、時間を分けて投資することを言います。

100万円を一気に投資するのではなく、25万円を4回に分けたり、10万円を10回に分けたりして投資をすることです。

時間分散の最大の目的は平均取得単価を下げることです。

平均取得単価とは、商品を取得した際の1単位あたりの単価です。通常は売買手数料などの取得費用込みで計算されますが、今回は考慮しないものとします。

トルコリラ/円が20円のときに1,000トルコリラ、17円のときに2,000トルコリラ取得したとします。

この場合、合計3,000トルコリラを取得するために要した投資金額は54,000円(20,000+34,000)になり、平均取得単価は18円になります(54,000÷3,000)

投資金額 平均取得単価
1回目:1,000TRY×20円=20,000円 20円
2回目:2,000TRY×17円=34,000円 17円
合計:3,000TRY=54,000円 18円(1回目より2円引き下げに)

最初は20円で取得しているため、トルコリラ/円が20円以上にならないと利益にならなかったですが、平均取得単価を引き下げたことで、18円を上回れば利益が出るようになりました。

より利益が出やすい状態になったのです。

時間分散を行うことで、高値で取得してしまうリスクを軽減できます。

銘柄分散を行う

銘柄分散も代表的なリスク軽減策の1つです。

銘柄分散とは、投資先を複数もつことであり、各投資先の個別リスクを軽減することを目的としています。

個別リスクとは、各商品がもつ固有のリスクのことです。

トルコリラでいえば、トルコの経済動向や原油相場(トルコは原油を輸入に依存しているため)など、トルコリラ特有の変動要因が挙げられます。

トルコリラ/円の代表的な銘柄分散の投資先として、原油関連銘柄があります。

一例として、原油を扱っている商社である三井物産で分散効果をみてみましょう。

出典:Bloomberg(2020/10/24時点)

赤色のチャートが三井物産の株式で、オレンジ色のチャートがトルコリラ/円です。両者の動きは逆相関なので、一方が下落してももう一方の上昇でカバーできます。

この事例はトルコリラと原油相場の関係を利用したもので、原油高はトルコリラにとってマイナスですが、三井物産にとっては利益増につながりプラスなのです。

このように、投資先を分散することで資産全体の下落幅を小さくすることができるので、複数銘柄への投資を検討することも有意義だと思います。

トルコリラ/円の今後の見通し

次に、トルコリラ/円の今後の見通しについてお伝えしていきます。見通しを立てる上で重要になるのは、「経済指標」「政策金利」の2つです。

経済指標には不安が残る

トルコリラ/円の見通しを立てる上で、トルコ経済の動向を把握しておくことは極めて重要です。

経済動向は各種経済指標で確認できます。

トルコの代表的な経済指標には「失業率」「小売売上高」があります。

両指標の動向は、トルコの中央銀行が政策金利を設定する際の判断材料になり、トルコリラ/円に直接的に影響していきます。

そこで、両指標のデータを確認してみましょう。

出典:Investing.com「トルコ 四半期失業率」(2020/10/25時点)

トルコの失業率は、13.4%とかなり高い水準にあります。失業率のたかさは経済の弱さと解釈され、トルコリラ安につながります。

出典:Investing.com「トルコ 小売売上高(前年比)」(2020/10/25時点)

加えて、小売売上高は、最悪期から脱却してはいるものの依然として変動が激しい状況が続いています。

小売売上高はトルコの消費活動の活発度を表しており、トルコ経済はコロナ不況から回復し切ったとは言い切れない状況だと示唆しています。

経済指標からトルコ経済の見通しを判断することは難しい局面ではありますが、注目するべきことには変わりありません。

月に1度の発表の際は、市場予想と結果を確認しておきましょう。

政策金利が引き上げられる可能性がある

経済指標には不安が残る状態ですが、トルコリラ/円では今後スワップポイントが増大するかもしれません。トルコの政策金利が引き上げられる可能性があるからです。

景気を調整する役割をもつ中央銀行は、過度な物価上昇を抑制するために、政策金利を引き上げることで景気を落ち着かせます。

物価上昇が過度かどうかの判断ですが、物価動向を表す指標をもとに判断していきます。トルコの物価動向を表す指標は「消費者物価指数」「消費者信頼感指数」が代表的です。

出典:Investing.com「トルコ 消費者物価指数(前年比)」(2020/10/25時点)

消費者物価指数は毎月12%前後で推移しており、他国と比べるとかなり高い水準です。

出典:Investing.com「トルコ 消費者信頼感指数」(2020/10/25時点)

また、消費者や企業の景況感を表す消費者信頼感指数も、依然としてかなり高い水準を維持しています。

両指標からいえることは、トルコの物価上昇は過度な状況であり、今後中央銀行は物価上昇を抑制するために政策金利を引き上げる可能性があることです。

現に、2020年の9月にトルコの中央銀行は市場の予想に反して、政策金利を8.25%から10.25%に引き上げました。

政策金利の引き上げはスワップポイントの増大を意味するので、インカムゲイン投資家にはポジティブなイベントでしょう。

トルコリラ/円を運用する上では、物価関連指標にも着目する必要があります。

トルコリラ/円運用におすすめのFX業者4選

今ではFX業者は数多くありますが、取り扱っている通貨ペアの数や手数料の水準、そして発信するレポートの種類などFX業者によって強みとする分野はさまざまです。

最後に、トルコリラ/円を運用するにあたっておすすめのFX業者を4社ご紹介します。

外為どっとコム

トルコリラ/円を運用するにあたってまず真っ先におすすめしたい業者は「外為どっとコム」です。

理由は単純で、数ある業者の中で顧客に提示するスワップポイントが最も高いからです。

FX業者名 スワップポイント
外為どっとコム 28円
LIGHT FX 27円
みんなのFX 27円
外貨ex byGMO 27円
GMOクリック証券 26円
マネーパートナーズ 5円

※2022/1/14時点

「外為どっとコム」は、発信しているレポートやニュースが充実していることも強みです。

アメリカやヨーロッパなど金融市場が発達しており市場参加者が多い地域であれば、情報収集は容易に行えます。

しかし、トルコなど発展途上国の市場では、参加者も主要国と比べて少ないため、情報収集が難しい状況にあります。

つまり、情報収集に適している業者も必要になるのです。

「外為どっとコム」では、ニュースやセミナー配信を積極的に行っており、個人投資家のインプットの助けになります。

専ら情報収集のために、「外為どっとコム」で口座開設するのもありだと思います。

LIGHT FX

出典:LIGHT FX

「LIGHT FX」は、扱っているレポートの数や取引ツールの利便性は業界の中で平均的な立ち位置ですが、スワップポイントによる還元に力を入れているため、スワップポイントは業者の中で最高水準です。

FXによるインカムゲイン投資を行うのであれば、スワップポイントは当然多くもらえるに越したことはありません。

インカムゲイン投資もキャピタルゲイン投資も行いたい方は、インカムゲイン投資の運用は「LIGHT FX」で行い、キャピタルゲイン投資の運用は別のFX業者で行うのも1つの戦略だと思います。

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みんなのFX

「みんなのFX」は、手数料にあたるスプレッドが業界最低水準であること、そしてスワップポイントも高水準であることが強みの業者です。

トルコリラ/円は流動性の低さからスプレッドが大きい通貨ペアです。

インカムゲイン投資は基本的に長期保有が前提になるので、頻繁に売買は行われないと思います。しかし、時間分散を図って平均取得単価を引き下げていくとなると、ある程度の取引回数は必要になるでしょう。とすれば、業界最低水準のスプレッドは魅力的です。

加えて、先述の表にあるとおりスワップポイントも業界最高水準なので、収入は高く費用は安いという良心的な業者なのです。

インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資の両軸の投資スタイルを目指す方は、「みんなのFX」は有力な候補になると思います。

外貨ex byGMO

GMOインターネットグループが運営する「外貨ex byGMO」は、高いスワップポイントや、業界でも最低水準のスプレッドが強みの業者です。

取引のコストはトップクラスに安い業者といえるでしょう。

メインで使用する口座としても優秀な業者です。

おわりに

トルコリラ/円は高いスワップポイントが期待できる商品であり、インカムゲイン投資には最適といえます。

トルコの経済成長はコロナウィルスの影響で足踏みしているとはいえ、長期的に見れば大きな成長の余地が残されている発展途上国です。

経済がより回復に向かえば、さらなる政策金利の引き上げによるスワップポイントの増加も可能性としては大いにあり得ると考えています。

しかし、地政学リスクや流動性リスクが大きいことも確かです。リスク軽減策として時間分散や銘柄分散を行うにしても、市場に張り付いて分析に長時間要するわけにもいきません。

最も肝要なのは、ご自身の目標にあった運用スタイルに適しているかどうかです。

インカムゲイン投資は、究極的には放置しているだけでも利益を獲得できるので、柔軟に運用スタイルを確立していくことができます。

ご自分にあった運用スタイルでトルコリラ/円を運用し、コツコツ利益を積み上げていきましょう。

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