2022年現在、国内のFX業者は約60社あると言われており、ピーク時から半減しているものの、その数は多く、業者の選定に悩んでいるトレーダーもいることでしょう。
近年は、ネット広告などで海外FX業者を見かけることも多く、その選択肢は更に広がっているといえます。
しかし、海外FX業者の多くは、日本の金融庁から警告を受けており、安易に利用すると出金拒否などの被害に遭うことも少なくありません。
そこで今回は、国内FXと海外FXとの違いをわかりやすく解説します。
国内FXと海外FXとは?
国内FXは、日本の金融庁から正式に許可を得て、日本国内の居住者を対象にFXサービスを提供している業者です。
一方海外FXとは、日本の金融庁から許可を得ずに日本国内でFXサービスを提供している業者で、日本の金融庁はその業者に対して、警告を出しています。
海外FX業者による詐欺まがいの行為、特に預け入れた資金を出金しない、取引による得た利益を出金しないなどの出金拒否が問題となっており、ネット上にも被害の声が絶えません。
金融庁は、そういった海外FXを利用しないよう、消費者に対して警鐘を鳴らしています。
国内FXと海外FXの6つの違い
国内FXと海外FXには、主に6つの違いがあります。
- 海外FXにはレバレッジの制限がない
- 海外FXには追証がない
- 国内FXの方がスプレッドが狭い
- 国内FXの方が入出金がスムーズ
- 国内FXの方が税金が安い
- 国内FXの方が安全性が高い
一つずつ詳しく解説します。
1.海外FXにはレバレッジの制限がない
日本国内のFXは、金融庁によるレバレッジ規制の対象です。
2011年から最大レバレッジ25倍と定められており、それを超えるレバレッジを提供することができません。
これは、顧客資金の保護を目的に定められた規制で、規制のなかった時期に大きな損失を抱えて苦しむトレーダーが大量に出てしまった経緯があります。
一方、海外FXはそもそも金融庁から許可を受けずにサービスを提供しているため、規制の対象となっていません。
そのためレバレッジ制限がなく、最大で数百倍から数千倍のレバレッジを提供している業者が存在します。
非常に少額の資金で大きな取引を行えますが、多少の値動きで全ての資金を失ってしまう危険性があり、おすすめできる取引環境ではありません。
2.海外FXには追証がない
国内FXには、追証という制度があります。
FXにおける追証とは「追加証拠金」のことで、証拠金維持率が一定水準以下になった場合に、追加の資金を求められる制度です。
証拠金維持率とは、証拠金÷必要証拠金×100で表され、ポジションを保有するための必要証拠金に対する、FX業者に預け入れた証拠金の割合のことをいいます。
国内FXでは、追証を求められる水準は業者によって異なり、100%や70%、50%と様々です。
その水準を下回ると、追加の証拠金を入金する必要があり、入金しない場合は強制的にそのポジションは決済されます。これを、強制ロスカットといいます。
一方、海外FXには追証がありません。
その代わり、証拠金維持率が一定水準を下回ると、いきなり強制ロスカットされます。
また、その水準が多くの場合20%や30%と著しく低く、一つの負けで資金の大半を失ってしまう可能性があります。
3.国内FXの方がスプレッドが狭い
国内FXのスプレッドは、年々狭くなっています。
2021年では、ドル円のスプレッドを0.1銭で提供している業者もあり、流動性が確保時間帯ではスプレッドが固定されているので、ほとんど取引コストがかからない状況です。
一方、海外FXの多くの業者は流動性のスプレッドを提供しており、常にスプレッドが変動しているため、取引コストが不確定です。
また、平均的なスプレッドは国内FX流動性がよりも広い傾向にあり、利用する口座タイプによっては手数料を取られるケースもあります。
一回一回の取引コストは小さいですが、何度も取引を積み重ねれば収益を圧迫するほど大きくなります。
トレーダーにとっては非常に重要な部分ですので、極力コストを抑えられる国内FXがおすすめです。
4.国内FXの方が入出金がスムーズ
国内FXの入出金は、国内の銀行と提携していることが多く、今はネットバンクから手軽に行うことができます。
特に多くの業者が提供しているクイック入金サービスでは、時間帯に限らず即座に入金が行われるため、スムーズにFX取引に移行できます。
そのうえ、手数料無料で入出金できる業者が多く、コストも抑えられます。
一方、海外FXは、入出金に国内銀行を利用すると、手数料がかかるケースが多いです。
また、入出金のために銀行以外のオンラインウォレットを経由しなければいけないことも多く、その都度手数料がかかることも少なくありません。
入出金が反映されるスピードも国内FXほど早くはなく、早くても1時間から2時間ほどのタイムラグがあるケースが多いため、取引チャンスを逃してしまうこともあるでしょう。
5.国内FXの方が税金が安い
FXで得た利益には、税金がかかります。
国内FXで得た利益は、申告分離課税の対象となります。
国内FXの利益に対しては、利益の大きさにかかわらず、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%、計20.315%の課税です。
一方海外FXで得た利益は、累進課税となり、利益の大きさに応じて税率が異なります。
基礎控除もありますが、海外FXの所得税率は最大で45%と、申告分離課税の倍以上です。
また、一律で10%の住民税も加わるため、最大で55%を上回る税率となることから、税金面を考慮しても、国内FXの方が有利な環境といえます。
6.国内FXの方が安全性が高い
国内でFXサービスを提供するためには、金融庁の許可が必要です。
金融庁は、業者の安全性を確認し許可を出しますので、国内FXであれば安全性が担保された状態で、業者を選ぶことができます。
一方、海外FXは金融庁のチェックを受けずにサービスを提供しています。
つまり、安全性の担保がなく、実際に問題が起こったとしても、金融庁や消費者庁なども解決に向けて動きにくいというのが現状です。
どの海外FX業者もホームページ上には聞こえの良い謳い文句しか掲載しておらず、安全性の判断は非常に難しいのが現状です。
問題が起こった際には、海外FX業者の拠点がある地域の裁判所で争う必要があるとされているケースも多く、ほとんどの方は解決できません。
安心して取引に集中するためにも、国内FXの利用をおすすめします。
海外のFX会社の利用をおすすめしない3つの理由
国内FXとの違いでもお伝えした通り、最大の難点は安全性です。
その他おすすめしない理由は以下の通りです。
- 安全性が低い
- サポートが不親切
- 初心者には取引ツールが使いづらい
それぞれ解説します。
1.安全性が低い
海外FX業者であろうとも、日本の居住者に向けたサービスを提供する場合は、日本の金融庁から許可を得る必要があります。
実際に、金融庁のサイトには、次のような文言が明記されています。
そのため、無許可にもかかわらず日本国内でFX業者はサービスを提供している業者に対して、何度も警告を発しているのが現状です。
利用しようとしているFX業者が許可を受けているかどうかは、以下のページで確認できます。
また、過去に警告を受けた業者は以下のページで確認できます。
ただ、金融庁は警告を発するものの、海外所在業者のため実際には取り締まることができないという事情もあります。
実際に所在が海外なのかも定かではない業者もあり、その実態を掴むことさえ難しいため、出金拒否や詐欺のような事件に巻き込まれたとしても、解決できる可能性は著しく低いと心得ておきましょう。
2.サポートが不親切
2021年現在、多くの海外FX業者のホームページは日本語に対応しており、日本人でも馴染みやすい状況といえます。
ただし、サポート体制は国内FXと大きな差があります。
海外FX業者のサポートでみられる主な問題点は、以下のとおりです。
- サポート時間が短い
- 日本人スタッフが少ないまたはいない
- 対応に時間がかかる
日本人スタッフがいない場合は、問い合わせも英語でする必要があり、多くの日本人にとっては、利用しづらいと感じるでしょう。
特に日本人スタッフがいても、少ない業者は対応に時間がかかります。
日本のホスピタリティに慣れていると、海外のサポートは不親切だと感じるでしょう。
3.初心者には取引ツールが使いづらい
海外FX業者はで利用できる取引ツールは、基本的にMetaTraderです。
いわゆるMT4/MT5といわれるツールで、海外のトレーダーも愛用しており、高度な分析が可能です。
ただ、様々な機能があるがゆえに、初心者には使いづらいという意見もあります。
独自のツールを提供している海外FX業者もありますが、使い勝手が良いとは言えません。
国内FX業者の独自ツールは、初心者にも使いやすいものが多く、簡便な操作を求めるなら、国内FX一択でしょう。
安心して取引できる国内大手FX会社5つ
安心して利用できる、おすすめの国内FX業者は以下の通りです。
- 外為どっとコム
- 外貨ex byGMO
- DMM FX
GMOクリック証券 - LINE FX
それぞれ紹介します。
外為どっとコム

出典:外為どっとコム
外為どっとコムは、みんかぶ調べ2022年FX会社比較部門別ランキング「総合」部門で1位を獲得したFX業者で、総合力に定評があります。
常にキャンペーンを開催していて、口座開設キャンペーン、スプレッド縮小キャンペーン、スワップポイントキャンペーン、キャッシュバックキャンペーンなど種類も非常に多彩です。
また、最低取引単位が1,000通貨で、リスクを抑えて本番取引を経験できる環境があります。
政策金利の推移や、タイムリーな経済情報の収集が可能な「外為情報ナビ」、FXを学び、プロのノウハウを生かすFXレポートが読める「マネ育チャンネル」など情報コンテンツも豊富です。
外貨ex byGMO

出典:外貨ex byGMO
外貨ex byGMOを運営するのはGMOインターネットグループなので、経営基盤は盤石といって良いでしょう。
外貨ex byGMOのFXは、1,000通貨単位の少額取引が可能で、ドル円のスプレッドは0.2銭(原則固定)と他社と引けをとりません。
サポート体制も強化されており、平日・祝日 午前7:00~午後10:00(土日休み)が受付時間となります。
DMM FX

出典:DMM FX
DMM FXは、FX口座保有数国内トップクラスのDMMグループが運営するFXサービスで、2020年8月31日時点で、グループ内のFX口座数は80万口座を突破しています。
初心者にもわかりやすい解説ページや取引ツールが人気で、FXをスタートしやすい環境と言るでしょう。
口座開設キャッシュバックや取引応援ポイントキャンペーンなど、開催しているキャンペーンも豊富です。
常に狭いスプレッドを提供しようとする姿勢があり、ドル円のスプレッドは0.2銭、提示率は96%を超えています。
DMM FXの口座開設は、スマホで本人確認が完結する「スマホでスピード本人確認」を利用すれば、最短即日で完結します。
24時間リアルタイム入金反映のクイック入金に対応している提携金融機関も300行を終えているので、取引開始まで最短1時間です。
GMOクリック証券

出典:GMOクリック証券
GMOクリック証券は、FX取引高世界第一位(ファイナンス・マグネイト社調べ2020年1月~2021年12月)を誇る人気のFX会社です。
GMOクリック証券は、「より安く、より使いやすく」の理念で、トレーダーの利益を追及した取引環境を提供していて、業界トップクラスの低スプレッドと高機能な取引ツールは初級者から上級者まで多くのトレーダーに支持されています。
特に、スマホアプリの「GMOクリックFXneo」は、iPhoneとAndroidに対応している取引ツールで、横画面にも対応しているため、スマホでも大きな画面表示で高度な分析が可能です。
また顧客資金の信託保全や即時入金サービス、スマホでできるスピード本人確認など細かなところまで行き届いたサービスも人気の理由でしょう。
LINE FX

出典:LINE FX
LINE FXは、コミュニケーションアプリのLINEを運営しているLINE㈱グループが提供しているFX業者のサービスです。
スマホ専用FXサービスとして運営を開始しましたが、2021年1月にPC版取引ツールの提供を開始し、多くの顧客を獲得しています。
ドル円スプレッド0.2銭と、最狭水準のスプレッドを提供し、1,000通貨の少額取引も可能です。
経済指標や為替相場の急変動などFXに関する情報をLINEで知らせてくれるため、重要な情報の取り逃しがなく、FX取引に反映できます。
海外FXのQ&A
海外FXについて、よくある質問をまとめました。
海外FXと国内FXはどちらがおすすめですか?
国内FXです。
特に、FXを始めたばかりの方、これから始める方は、FX業者の見極めが難しいため、金融庁の許可を得てサービスを提供しているFX業者を利用しましょう。
また、高すぎるレバレッジや大きなスプレッドは、適切な取引量の調整や的確なタイミングでの取引ができるようになってからでないと、大きな損失に繋がります。
低スプレッド、低レバレッジ、少額取引可能な国内FX業者の利用をおすすめします。
海外FXの利用は違法ですか?
日本人が海外FXを利用しても違法性はないとする解釈が多いようです。
ただ、無登録の海外FX業者による日本国内での営業について、金融庁は度々警告を行っています。
機関投資家向けであれば、無登録でも国内で営業ができるなどの例外はあるようですが、一般個人向けにサービスを提供することは基本的に禁止されています。
違反した業者には、金融商品取引法第197条の2が適用され、懲役もしくは罰金、またはその両方という罰則もあることから、その違法性がうかがえます。
その業者自体が取り締まりを受けるかどうかというよりも、国内のルールから外れて営業する業者を利用するのは危険が伴うということを認識しておきましょう。
業者が摘発された場合には、業者の口座が凍結されるなどの処置も考えられ、信託保全のスキームのない海外FX業者であれば、顧客の資金が戻ってくる保証はありません。
海外FXのゼロカットシステムとはなんですか?
海外FXのには追証がなく、ゼロカットというシステムがあります。
ゼロカットシステムとは、相場の急変動時などに、損切りの逆指値で約定できずに大きな損失を被ってしまい、証拠金残高がマイナスとなってしまっても、マイナス部分は業者が補填し、ゼロに戻すシステムです。
国内FXでは、業者による損失の補填や利益の供与は禁止されているため、ゼロカットシステムはありません。
国内FXには追証という制度があり、一定の証拠金維持率を下回った場合、追加の証拠金を入金するか、ポジションを決済するかを選択できます。
損失のコントロールは難しく、大きな損失を被ってしまう可能性もあるため、このような制度による顧客資産の保護は非常に重要です。
まとめ
今回は、海外FXについて、国内FXと比較しつつその特徴を解説しました。
ネット広告などでもよく目にしますし、キャンペーンや日本ではできないシステムで良く魅せていますが、その実態はグレーゾーンであり、利用にはリスクが伴います。
一方、国内FXは金融庁のチェックが入っているため、安全性が担保されており、万が一トラブルが起きたときの相談窓口も多数あります。
安易に海外FXに手を出さないよう、十分に注意しましょう。