FX取引の特徴であるレバレッジ。
今回は、資産運用の初心者に向けて、レバレッジの意味や効果、リスクなどについて説明していきます。
レバレッジとは?
レバレッジとは、日本語で「てこの原理」を意味し、金融の世界では「お金を借りて自己資本以上の取引を行う」こと指します。
- 投資をしたいが十分な資金が用意できない
- 投資金額を増やし、大きな利益を狙いたい
このような目的のある方にレバレッジは活用されます。
外国為替証拠金取引、いわゆるFXの世界でそのままレバレッジと、株式投資の世界では信用取引と表現されますが、今回はFXでのレバレッジに焦点を当てています。
レバレッジの効果とリスク
レバレッジの効果とリスクについてお伝えしていきます。
レバレッジの効果
先述したように、レバレッジは手持資金以上の投資を可能にする便利な仕組みです。
通常、レバレッジは「〜倍」と表されます。「レバレッジ2倍」であれば投資金額の2倍、「レバレッジ25倍」であれば25倍の運用が可能になるのです。
FXの投資資金を10万円、1ドル100円のときにドル円を購入し、ドルが110円まで上昇したと仮定します。レバレッジを利用しなかった場合とレバレッジ25倍を利用した場合とでは、次のように結果が異なります。
取引金額 | 利益 | |
---|---|---|
レバレッジなしの場合 | 10万円 | 1万円 |
レバレッジ25倍の場合 | 250万円 | 25万円 |
投資した金額は同じ10万円であるにもかかわらず、レバレッジを利用すると実際に運用する金額が25倍の250万円になるため、利益も同様に25倍になります。
多額の運用資金が準備できない方にとって、レバレッジはとても便利な仕組みなのです。
レバレッジのリスク
便利な反面、レバレッジを活用するとリスクも大きくなってしまいます。
先ほどの例を用いて、1ドル80円まで低下した場合の損失をみてみましょう。
取引金額 | 損失 | |
---|---|---|
レバレッジなしの場合 | 10万円 | 2万円 |
レバレッジ25倍の場合 | 250万円 | 50万円 |
レバレッジを活用していなければ2万円の損失で済んでいたものの、レバレッジを25倍としたために50万円の損失となります。
投資資金が大きくなるわけですから、リスクも同様に大きくなってしまいます。
レバレッジは個人投資家の運用を助ける便利な仕組みである反面、リスクが高くなることは理解しておくべきです。
レバレッジと必要証拠金
レバレッジを活用するには、必要証拠金を預託する必要があります。必要証拠金とは、取引額に応じて必要となる預託金のことです。必要保証金や証拠金とも呼ばれます。
レバレッジを何倍に設定するかによって必要証拠金の額は変わります。1,000万円運用するとして、設定するレバレッジによって必要証拠金は次のように変わります。
レバレッジ1倍(なし) | 1,000万円÷1 → 必要証拠金1,000万円 |
---|---|
レバレッジ2倍 | 1,000万円÷2 → 必要証拠金500万円 |
レバレッジ5倍 | 1,000万円÷5 → 必要証拠金200万円 |
レバレッジ25倍 | 1,000万円÷25 → 必要証拠金40万円 |
このように、レバレッジの倍率を高めるほど、必要証拠金の額は少なくなります。つまり、投資資金が少なく済むのです。
必要証拠金の計算方法は次の通りです。あくまで理論上の計算式ですので、各業者の取引ルールにより実際の値は異なります。
- 必要証拠金=取引金額÷レバレッジの設定倍数
- 取引金額=通貨数量×為替レート
レバレッジとロスカット
レバレッジを高く設定すると理論上は入金額以上に損する場合があるのに、なぜ損失を限定できるのでしょうか。
それはロスカットが発生するからです。
ロスカットとは、顧客の資産を守る観点から、証拠金維持率が100%以下になると全ポジションが自動的に決済されるシステムです。
証拠金維持率とは、純資産と保有ポジションにかかる必要証拠金の余力を示すものです。ここでいう純資産とは、FX口座にある資金を指します。
レバレッジを高くして必要証拠金を大きくしてしまうと、証拠金維持率を割りやすくなるためロスカットが発生しやすくなります。
ロスカットを防ぐには、必要証拠金維持率を超えるように追加入金するか、ポジションを減らして必要証拠金を小さくする必要があります。
ロスカットは予告なく自動的に発動される場合が多いので注意が必要です。ロスカットのルールについてはFX業者によって異なるので確認するようにしましょう。
レバレッジ規制
次に、レバレッジに関する規制をみていきましょう。レバレッジ規制は証拠金規制とも言われますが、ここではレバレッジ規制と表現させて頂きます。
国内業者のレバレッジ規制
日本ではFX取引でのレバレッジに関する規制があります。
2010年に初めてレバレッジ規制が設定され、FX業者が提供できるレバレッジは最大50倍になりました。
翌年2011年に最大25倍にまで規制が強化され、2020年12月現在でも変わらず25倍が最大レバレッジとなります。
日本では個人投資家の資産を保護する目的で、レバレッジへの規制が強まっていることが分かります。
海外業者のレバレッジ規制
海外FX業者にはレバレッジ規制が適用されません。金融庁の監視下外だからです。
海外FX業者のレバレッジは50倍〜1,000倍まで設定することができ、最大25倍とする日本のFX業者と比較するとかなり高いレバレッジを設定できます。
運用金額を一気に増大させるといえば聞こえはいいですが、流石に許容できるリスク量を超えています。
ギャンブル感覚で投資をするのであれば海外業者も一つの選択肢になるのでしょうが、あくまで資産運用の観点で考えると、適切ではないリスクの高さです。
FX取引を始める際は、口座開設する業者が国内業者と海外業者のどちらであるのか、しっかり確認するようにしましょう。
レバレッジ取引に向いている人
次に、レバレッジ取引に向いている人についてお伝えしていきます。
資金に余裕がある人
レバレッジ取引は、ある程度資金に余裕がある人に向いています。
先述したように、レバレッジ取引はリスクが大きい取引です。そのため、高いリスクを許容できる資金がある人が活用すべきだと言われています。
万が一、証拠金維持率が100%を下回ってロスカットが発動されそうでも、資金に余裕があれば追加資金を入金することでロスカットを回避できます。
ロスカットを避けるためにも、資金に余裕がある人がレバレッジを活用すべきです。
相場をこまめにチェックできる人
レバレッジを高く設定すると、小さな価格変動でも評価損益が大きく変動します。そのため、レバレッジ取引は為替相場をこまめにチェックできる人に向いています。
レバレッジなし、もしくは5倍までのローレバレッジであれば、評価損益は為替相場の変動に大きく影響されないため、評価損益を頻繁に確認する必要はあまりないでしょう。
しかし、25倍などハイレバレッジの場合は少しの価格変動で自分の評価損益が大きく変動するため、ロスカットが発生しやすくなります。
ロスカットに気付いて対応するためにも、相場をこまめにチェックできる人がレバレッジ取引を行うべきです。
短期的に資金を増やしたい人
レバレッジ取引は短期的に資金を増やしたい人にも向いています。
同じ変動幅でも運用資金が多ければ、それだけ大きな利益を獲得できます。
そのため、すぐに結果を出したい方は、リスクを許容できるのであれば、レバレッジを高く設定して運用していくことが近道になるでしょう。
レバレッジ取引に向いていない人
反対に、レバレッジ取引に向いていない人もみていきましょう。もしいずれかの項目に該当するのであれば、レバレッジは活用しない方がいいかもしれません。
資金に余裕がない人
資金に余裕がない人は、レバレッジ取引を行うべきではありません。
レバレッジ取引は取引金額を増大させ、個人投資家でも大きな利益が狙える便利な仕組みです。そのため先述した内容と矛盾してしまうかもしれません。
しかしリスクについても正しく考慮した場合、損失が発生する可能性の高さ、場合によっては投資資金が0円になることもあります。効果よりもリスクを先に考えるべきです。
資金力に乏しい方は大きなリスクを取るべきではないので、レバレッジ取引を活用するべきではないと私は考えます。
もっとも、レバレッジを利用しないとそもそも取引できない場合であれば、高くても5倍に設定すべきでしょう。
相場をこまめにチェックできない人
為替相場や評価損益をこまめにチェックできない人は、レバレッジ取引に向いていません。
先述したように、レバレッジ取引を用いるとロスカットが発生しやすくなります。
評価損益を定期的にチェックできないと、いつの間にかロスカットが発動しており、想定外の損失が発生する可能性があります。
少なくても1日2回はチェックできないようであれば、レバレッジ取引を利用すべきではないでしょう。
まとめ
レバレッジの効果やリスク、レバレッジ取引に向いている人・向いてない人についてお伝えしました。
レバレッジを用いると手持ちの資金以上の取引が可能になるため、効率よく大きな利益を狙うことができます。ただし、リスクも大きくなるので注意が必要です。
レバレッジ取引はリスクが大きくなるため、資金に余裕がある人や相場をこまめにチェックできる人に向いています。
反対に、資金に余裕がない人や相場をこまめチェックできない人は控えた方が良いでしょう。
レバレッジ取引を行う際は、運用の目的や自身の取引状況を踏まえた上で行うことが重要です。