キャピタルゲインとインカムゲインという言葉を聞いたことがありますか?生活の中では聞き馴染みのない言葉で、難しい言葉のように聞こえます。
しかしどちらも簡単な概念であり、資産運用の世界ではとても重要です。利益に直結する概念だからです。
今回は資産運用の初心者に向けて、キャピタルゲインとインカムゲインの意味、それぞれのメリット・デメリットなどを分かりやすく説明していきます。
キャピタルゲイン投資とは
キャピタルゲインとは、日本語で売買益のことです。ある商品を100円で購入し、110円で売却した場合に生じる10円の売買益がキャピタルゲインです。
反対に、高い時に買い、安い時に売却すると売買損が発生しますが、これをキャピタルロスといいます。
購入価格と売却価格の差分であるキャピタルゲインの獲得を目指す投資方法が、キャピタルゲイン投資なのです。
FXでのキャピタルゲイン投資の例を見てみましょう。以下の表は米ドル/円の2020年11月19日~20日の始値と終値を表しています。
- 始値:1日の中で最初についた価格
- 終値:1日の中で最後についた価格
11月19日の始値で米ドル/円を1単位買い、翌日の終値で売却したとします。なお、理解を容易にするために取引コストは発生しないものとします。
103.80円で購入し、103.85円で売却しているため、0.05円のキャピタルゲインを獲得できたことになりますね。
このように、相場の変動を機会と捉えて、キャピタルゲインを狙っていくことが、FXでのキャピタルゲイン投資になります。
FXに限らず、株式投資であれば株価、投資信託であれば基準価格、そして不動産投資であれば不動産価格の動向を予測して取引を行っていきます。
キャピタルゲイン投資のメリット・デメリット
次にキャピタルゲイン投資のメリット・デメリットを見ていきます。
キャピタルゲイン投資のメリット
キャピタルゲイン投資のメリットには次の3つが挙げられます。
- 1回の取引で大きな利益が狙える
- 短期間で大きな利益が狙える
- 相場観を養うことができる
先述したように、キャピタルゲイン投資では商品の値動きをチャンスと捉えて投資をしてきます。取引する金融商品によっては大きな値動きをするものもあるので、1度の取引で大きな利益を狙うことが可能です。
加えて、金融市場は24時間変動しているため、1日の中のどのタイミングで取引してもすぐに利益を獲得することが可能です。極端ですが、取引した1秒後に決済して利益を獲得することも可能なのです。
何よりキャピタルゲイン投資では、勝率を上げるために相場観が必要になります。
株式投資であれば企業の特性を把握したり、不動産投資であれば地価や物価の動向をチェックしたりと、投資している商品や相場について勉強していくことになります。
相場観を養っていくことで、勝率や利益幅を大きくしていくことが可能になります。
キャピタルゲイン投資のデメリット
反対に、キャピタルゲイン投資のデメリットには次の2つが挙げられます。
- 損失が発生する可能性がある
- 時間に追われる可能性がある
キャピタルゲイン投資は価格の変動で勝負する投資方法のため、予想と反対の値動きをした場合はキャピタルロスが発生します。1度の取引で大きな利益が狙える反面、大きな損失が発生することも考えられます。
加えて、刻一刻と変動する金融市場との勝負なので、取引のタイミングを逃す場合も少なくありません。
相場に注意しないといけないため、時間に追われている感覚に陥ることもデメリットと言えるでしょう。
キャピタルゲイン投資におすすめの商品の特徴
キャピタルゲイン投資におすすめの金融商品の特徴をお伝えしていきます。
価格が変動する限りはどんな商品でもキャピタルゲインを狙うことはできますが、次のような特徴を持つ商品は特にキャピタルゲイン投資に向いていると言われています。
価格変動が大きい
キャピタルゲイン投資は価格変動を機会と捉える投資方法です。そのため、価格変動が大きいほど利益を狙えるチャンスが多いことを意味します。
FXを例に見てみましょう。代表的な通貨ペアである米ドル/円と、値動きが大きい南アフリカランド/円を比較してみます。

出典:SBI証券
上記の相対チャートは両通貨ペアの直近5年間の値動きを表しています。米ドル/円の値動きを表すピンク色のチャートよりも、南アフリカランド/円の値動きを表す青色のチャートの方が値動きが激しいことが分かります。
価格変動が機会となるキャピタルゲイン投資においては、南アフリカランド/円のような値動きの激しい金融商品の方が利益を出しやすいです。
しかし、キャピタルロスも発生しやすい、つまりリスクも高いことには留意する必要があります。
情報収集がしやすい
情報収集がしやすい商品であることも重要です。値動きを予測するためには、情報収集が欠かせないからです。
例えば、米ドルやユーロは欧米経済の影響を大きく受けますから、同地域の経済・政治に関する情報を入手できる環境が必要です。米ドルやユーロは世界で最も取引量が多い通貨でもあるため、情報が豊富にあるので情報収集に困ることはないでしょう。
一方、取引量が少ないポーランドズロチやスリランカルピーなどマイナーな通貨であれば、その国の経済情勢を発信している媒体はかなり限られているため、情報収集は困難になります。
投資対象商品についての情報が入手しやすいか、事前に確認しておく必要があります。
取引コストが小さい
キャピタルゲイン投資では取引を頻繁に行う場合が多いため、取引のたびに発生する取引コストには注意が必要です。
株式投資では売買手数料が取引のたびに発生します。投資信託であれば信託報酬が発生しますし、不動産投資であれば業者へ支払う報酬額はかなり大きな金額になるでしょう。FXで言えば、スプレッドが取引コストになります。
スプレッドとは、FX業者が設定している買値と売値の差額のことです。この差額はトレーダーからすれば取引の都度発生するコストであり、業者からすれば利益になります。
キャピタルゲイン投資では収益を積み重ねていくために、積極的に取引をしていくことになります。
数回程度の取引であれば取引コストを気にする必要性は弱いでしょうが、長期的には何十回何百回と取引していくことを考慮すると、やはり取引コストが低い商品を選択すべきです。
キャピタルゲイン投資に向いている人の特徴
次に、キャピタルゲイン投資に向いている人を見てみましょう。
相場を見ることが好きな人
キャピタルゲイン投資では、日々変動する相場の動向をチェックし、相場に関連する経済や政治の動向について勉強していく必要があります。
相場を見ることが好きでないと、相場と向き合うことを苦痛と感じるようになるでしょう。
相場を見る時間が作れる人
キャピタルゲイン投資では、取引のタイミングを逃さないように相場を頻繁にチェックする必要があります。
外国為替市場を含めると相場は昼夜問わず変動しているため、昼も夜も相場を確認する時間を作ることが重要です。
キャピタルゲインと税金
キャピタルゲインに係る税金についてお伝えしていきます。
株式や投資信託のキャピタルゲインは譲渡所得、FXのキャピタルゲインは雑所得に該当します。いずれも申告分離課税であり、税率は20.315%です。
不動産のキャピタルゲインは譲渡所得に該当しますが、税率は所有期間によって異なります。
不動産売却年の1月1日現在で、その不動産の所有期間が5年を超えていたら長期譲渡所得となり、5年以下の場合は短期譲渡所得となります。
長期譲渡所得に係る税率は20.315%、短期譲渡所得は39.63%です。
インカムゲイン投資とは
インカムゲインとは、日本語で利子・配当収入のことです。
株式投資では配当金、投資信託では分配金、不動産投資では家賃収入、FXではスワップポイントがインカムゲインに該当します。
ちなみにスワップポイントとは、金利が異なる2種類の通貨の売買によって発生する調整額です。高金利通貨を買って低金利通貨を売るとスワップポイントを受け取ることができます。反対に、高金利通貨を売って低金利通貨を買うとスワップポイントを支払うことになります。
米ドル/円で言えば、現在は米ドルの方が円より高金利通貨であるため、米ドル/円を買うとスワップポイントを受け取ることができます。
スワップポイントを含む、インカムゲインの獲得を目指す投資方法をインカムゲイン投資といいます。
インカムゲイン投資のメリット・デメリット
次に、インカムゲイン投資のメリット・デメリットを見ていきます。
インカムゲイン投資のメリット
インカムゲイン投資のメリットは次の2つになります。
- 利益を積み上げていくことができる
- チェックする頻度が少なくて済む
インカムゲイン投資は、商品を保有しているだけで収益を積み上げていくことが可能です。FXで言えば、通貨の価格が一定とすると、スワップポイントを受け取っている限りは利益が積み上げられていくことになります。
上の表は「SBI証券」が扱っている通貨ペアの中で、2020/11/16~2020/11/20の間に受け取れるスワップポイントが高い上位4通貨ペアです。
これによると、南アフリカランド/円であれば、1週間保有しているだけで430円のスワップポイントを受け取ることができます。
銘柄にもよりますが、株式投資であれば配当金を毎年受け取ることができます。投資信託でも商品によっては分配金を毎月受け取ることが可能です。不動産投資では家賃が毎月入ってきます。
短期的には積み上がる利益が少額ですが、長期的には大きな利益を狙うことも可能なのです。
加えて、保有し続けるだけで利益を獲得できるのがインカムゲイン投資の強みなので、究極的には放置していても勝手に利益が積み上がっていることもあります。
投資結果を確認するためにも放置は推奨できませんが、キャピタルゲイン投資と比べて運用結果を見る頻度は少なくて済みます。
インカムゲイン投資のデメリット
インカムゲイン投資のデメリットは次の2つになります。
- 相場観が身につかない
- インカムゲインが変動する可能性がある
インカムゲイン投資は相場に張り付いていなくても利益が出せる反面、相場を逐一チェックする必要がないため相場観を養うことができません。
日々情報を取り入れて時間と勝負するキャピタルゲイン投資と比較すると、トレーダーとしての成長は緩やかになるでしょう。
加えてインカムゲイン投資では、受け取れる金額が保証されていないこともデメリットと言えます。
企業業績や投資信託の業績が悪化すれば配当金や分配金は低下するでしょう。FXでも金利が低下すればスワップポイントは低下します。不動産市場が落ち込めば家主は家賃を下げざるを得ません。
相場によってインカムゲインは変動する可能性があるので、投資時点での値を絶対視することなく、変動を視野に入れて運用していくことが重要になります。
インカムゲイン投資におすすめの商品の特徴
次に、インカムゲイン投資におすすめの金融商品の特徴をお伝えしていきます。
景気が良い国の商品
景気が良い国の商品は、概ねインカムゲインの水準が高い商品が多いです。
インカムゲイン投資を行う際に考えるべきことは、インカムゲインの源泉が何であるかを考えることです。配当金や分配金、スワップポイントはどこから発生しているのか考えると、自ずと何に投資をすれば良いのか見えてきます。
配当金は企業の利益から、分配金は投資信託から運用収益から、スワップポイントは金利から、家賃収入は借主の支払から発生します。
いずれも景気に大きく左右されるものであり、景気が良いとそれだけ多くのインカムゲインを生むことができます。
景気が良ければ企業の業績が上向き利益が増加します。商品にもよりますが金融市場が上向けば投資信託の運用業績も良くなり分配金を多く配れるようになります。
好景気は金利の上昇を招きスワップポイントを高めますし、個人の所得が増加すれば家賃相場の上昇を受け入れることができます。
このように、景気とインカムゲインは密接に結びついているため、多くのインカムゲインを受け取るためには、景気が良い国の商品を選択することが重要になります。
価格変動が小さい
価格変動が小さい商品もインカムゲイン投資家には好まれます。仮に価格が下落してキャピタルロスが発生しても、インカムゲインで補うことが可能であり、トータル収支をプラスにしやすいからです。
米ドル/円とトルコリラ/円で見てみましょう。

出典:REUTERS
上のチャートは直近1年間の米ドル/円の価格推移を表しています。52週レンジに着目すると、仮に直近1年間の最高価格で買い、最低価格で売却したとしても、およそ9.8%の損失であることが分かります。
1年間で最も損失が大きくなる取引を行うこと自体考えにくいですが、仮にそうであっても、1年間スワップポイントを積み上げることでこの損失はカバーできる可能性があります。

出典:REUTERS
一方、上のチャートは直近1年間のトルコリラ/円の価格推移を表しています。同様に損失が最大となる取引を行った場合、およそ37%の損失になります。
現行水準では、トルコリラ/円の方が米ドル/円よりスワップポイントが多いため、37%の損失でもスワップポイントでカバーできないとは断言できません。
しかし値だけ見た場合には、9.8%と37%では当然9.8%の方がカバーしやすいはずです。
このように、価格変動幅が小さいほどインカムゲインによる収益でキャピタルロスをカバーしやすくなるので、商品を選択する際には価格変動にも注目すべきでしょう。
インカムゲイン投資に向いている人の特徴
次に、インカムゲイン投資に向いている人を見てみましょう。
長期的に利益を積み上げたい人
インカムゲイン投資は1度の取引で大きな利益を狙える投資方法ではありません。そのため、短期的ではなく長期的な視野に立って利益を積み上げていきたい方に向いています。
運用計画を作成する場合、重要となる概念が利回りです。
利回りとは、投資金額に対する利子も含めた年単位の収益の割合です。価格変動を考慮しないとすると、株式に100万円投資して10万円の配当金を受け取った場合、利回りは10%になります。
株式であれば配当利回り、投資信託であれば分配金利回り、FXであればスワップポイント利回りを求めることで、事前に運用の収益性を予測することができます。
無計画にコツコツ運用するのではなく、見込み利益を見据えた上で計画的な運用をしていきましょう。
相場を見る時間がない人
キャピタルゲイン投資と比べて相場を頻繁にチェックする必要がないため、相場を見る時間がない方にもおすすめです。
完全放置は推奨できませんが、少なくとも月に1度、積み上がったスワップポイントや配当金をチェックするぐらいで十分な場合もあります。
インカムゲインと税金
配当金や分配金は配当所得に該当し、税率は20.315%です。FXのスワップポイントは雑所得として扱われ、税率は20.315%です。
副業での家賃収入は不動産所得ですが、事業として行っている場合は事業所得に該当します。税率はどちらも累進課税なので、所得金額が大きくなれば税率も高くなります。
金融商品であれば概ね20%の税金がかかり、不動産投資は金額による。このように解釈しておけば問題ないでしょう。
まとめ
資産運用の方法には、狙う利益によってキャピタルゲイン投資とインカムゲイン投資に分けられるとお伝えしました。
どちらにもメリット・デメリットがあり、どちらの方法を自分のトレードに取り入れるかどうかは各人の目標や性格によるでしょう。
重要なのは、一度投資方法を決定したらある程度の期間は続けることです。少なくとも3カ月間は一度決めた投資方法を続けてみて、自分には向いていないと感じたら変更すれば良いのです。
自分に合った投資方法を確立し、無理なく資産運用をしていきましょう。